24
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
時間は数日戻り、マリアントたちが洞窟を出発してすぐの洞窟前。
二人で洞窟前まで戻ってきたクロとレオ。この洞窟に戻りながら考えていた作業をすでに始めていた。
レオが土魔法で洞窟前に巨大な穴をあけた。そしてクロが糸のネットを使ってドロドロとした土を大量に運んできては、その穴の中に投げ捨てていた。その投げ捨てた土は、洞窟から少し離れた位置にあった獣の血抜き場の下の土である。
血を大量に含んでいるためかなり臭い。
そして十分にその土を敷き詰めると、穴の周りに沢山ある小さな固いでっぱりに、張りのある粘着性のない糸をしゅるしゅると張っていく。もちろんそのでっぱりはレオが用意したものである。
そして穴の上に張られた目の細かい綺麗な蜘蛛の巣の上に、レオが土をかぶせていく。さらには木の葉なども二人で手分けしてかぶせていった。これでカモフラージュは終了である。
試しに二人で上にのって軽く跳ねたりしているが、特に崩れ落ちたりはしないようだ。その予想通りのできに、二人は満面の笑みを浮かべる。頭の中には、この洞窟までやってきた望まぬ訪問者がこの罠に引っかかり大騒ぎしている様を思いうかべていた。
「よし!これでいいよね!」
「そうだな!戻ってくることがあれば確認したいよな!」
「そうだね!楽しみだよ!」
「じゃあマリのところに戻るか!」
二人は足取りも軽く、仲間の元へと戻っていくのであった。
◆◇◆◇◆
「なんとかしなくては……このままでは我が家は破滅の一途……それもこれもみんなマリアントのせいよ!」
爪を噛みながら顔をゆがませているのは、マリアントの母だった女、アールグレイ・ローズマリ。
実家であるホーラー子爵家の王都内の屋敷へと一時、帰還をしていた。
侯爵家だったアールグレイ家は子爵家へとなり領地も半分程度に減らされる予定だ。今までと同じような生活はできないだろう。
何より、茶会などで今まで蔑んできた他の貴族たちに諂う場面も出てくるだろう……それが何よりも腹立たしかった。なぜ私が、王族以外の者に頭を下げ、媚をうらなくてはいけないのか……その恨みは全てマリアントへと向けられる。
皇太子の婚約者の座を外されたロズエリアはもうだめだろう。同じ子爵位はおろか男爵位ぐらいしか貰い手はないかもしれないだろう。せっかく発現した導き手というスキルも、大勢に指示できる地位がなければ無用の長物となる。
この家を、いや最低限、自分自身を守ならくてはいけない。ローズマリは考え続ける。自身の持つ『知略』という策謀に富んだスキルをフル稼働させる。
実の父は私と同じ同じ『知略』を、母は『危機察知』という未来予知にも近い閃きを発するスキルであった。そんなホーラー家は代々そういった系統のスキルが多く発現する家系で、諜報に優れ、その為に動ける影を多数従え、子爵という地位をなんとか維持していた。
侯爵家であるアールグレイ家の当主ダイモンドと結婚することになったのも、そのダイモンドの父、トパライズが過去にやっていた横領を隠す手立てを用意した見返りであった。当然その横領の証拠を発見したのもまた、ホーラー家の影であった。
そもそも、マリアントへの冷たい仕打ちはローズマリ自身の出自にある。ローズマリは自身も双子として生まれている。
その妹は12になるまで、マリアントと同じように隠されて育った過去があった。とはいえ妹の扱いは悪くはなかった。そして12の時、妹のスキルが母と同じ『危機察知』というスキルが発現すると、1年後に年違いの妹が、『危機察知』のスキルが発現したと公表するハズだった。
しかし、その時は来なかった。
妹は寝ていた私の首を絞め、あわや死んでしまうところであった。それを止めたのは母であった。そして妹はそのまま離れに幽閉され、その2日後に自ら死を選んだ。妹はあの時、なぜ私を殺そうとしたかはわからない。
だが分かることがある。双子はやはり駄目なのだ。実際私は今、それを痛感していた。
「なんとしてもマリアントを探すのです!」
馬鹿正直に直接臨むからからダメなんだ。ローズマリはそう思っていた。
居場所を特定して一人になったところを連れ去る。そして薬で眠られ……いや先に首輪をつけておこうか。そして他の仲間を呼び出して、マリアントに「一緒に暮らそう」と首輪とつさせていけば良い。
後はマリアントは皇太子に、そして仲間も何人かは献上したら王家とのつながりも復活するだろう。なんなら王族の一員にもなれるはず!
だが別のことも考えていた。あのロズエリアを押さえつけていた男……たくましい腕、整っていて、それでいて野性的な雰囲気も醸し出しているあの顔……あれだけは私が飼えばいい。そんなことも思っていた。
今から私は何もなかったようにアールグレイ家へと戻る。住み慣れた我が家に戻り、あとは影からの果報を待てばいい。
マリアントへの復讐と、自己の欲望を叶える日を願い、屋敷の中にローズマリの高笑いが響いていた。
◆◇◆◇◆
「ん?どうしたのクロ」
「いや、なんか寒気が……風邪かな?」
お読みいただきありがとうございます。これにて『アテナイ王国編』は終了です。明日も17時更新となります。
期待してる! もっと読みたい! 読んでやってもいいよ!
そんな方は下の☆☆☆☆☆を押してい頂けると嬉しいです!
もちろんブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。
読者様のお力が必要なんです!




