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最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「もう少しでつくのだな」
「はっ!」
立派な篭の中で並走する兵の報告を聞いた、皇太子・グリーンヒル・レイドックは忌々しそうに隣に座る婚約者、アールグレイ・ロズエリアを見る。
その妹であるマリアントへ出した手紙。そのまま突き返されたとのことで、報告を受けた際には激高してそのまま破り捨てようとしたのだが、なんとなく中身を確認したのだ。すると自分が書いていないはずの文面が最後に書き加えられていたことに気づく。
すぐにロズエリアに確認すると「殿下が書き忘れたのかと思い、僭越ながら書き添えさせていただきました!」と凄い笑顔を見せられた。その場で切り捨ててやろうとさえ思った皇太子だったが、その場はなんとか堪えての今日の遠征であった。
その後たっぷりと仕置きをしたおかげで、今は大人しく隣にすわってうなだれている。ちゃんと反省してほしい。レイドックはそう思っていた。
今日は街の視察と父であるグリーンヒル・アガメム国王に報告し、20名ほどの護衛の兵を用意した。そして冒険者ギルドに内々に手配した歴戦の冒険者を50名ほど。万全を期して死の森を進む。当然、目的地はあの洞窟であった。
「手紙だから失敗したのだ!やはりこういったことは直接話さんとな!」
そういって自らの考えと肯定するようにうなずくレイドック。奇しくもマリアントの父、ダイモンドと同じ考えに至ってしまうレイドック。そして部隊は洞窟の近くへとたどり着く。
「よし。あれに見えるが目的の地だな!では伝令を頼む!皇太子、レイドックが直接会いに来てやったと伝えるがいい!」
その声に伝令の兵が洞窟内へと入っていく。
そして10分ほどの時間が経過し、レイドックはイライラしていた。
「なぜすぐに出てこない!まさかまたお断りとでも言うつもりか!いや……そうだな、皇太子たる私に会うのだ。緊張してしまってということか……」
一人見当違いのことを考えているレイドック。隣のロズエリアはうつむいたままである。
さらに数分後、伝令がこちらへ走ってきた。
「レ、レイドック殿下……その、洞窟内がもぬけの殻で……誰もおりません!」
どうやら留守にしていたようだ。街に定期的に言っていると聞く。すぐに戻ってくるだろう。
「そうか。間が悪かったな。しばらく待てば戻るだろう。このまま食事の用意をせよ!」
「そ、それが……洞窟内には何も残っておらず、生活感があまりない状態のようで……」
その言葉でレイドックは首を捻る。アッサムから相当な戦闘があったと聞いた。よもやこの場を後にしたというこのか?いやここ以外にどこへ行くというのだ?まさかもっと深い森の中まで……
「くそっ!10名ほどでこの近辺を探せ!私は洞窟内へ行く!見逃しているとこ限らんからな!」
レイドックはそう言いながら伝令の兵を睨みつけながら篭を降り、護衛を引き連れて洞窟へと進んでいった。
そして洞窟の真ん前へ来た時、ギギギと小さな音が聞こえる。
次の瞬間、バンという大きな音と共に……レイドックの近辺が全て崩れ、そして落ちていった。多数の兵士と冒険者、そしてレイドックとロズエリアが地面に打ち付けられた。
幸い深さは1mほど。それほど深くはなかった。……が、その底はドロドロでひどい匂いを放っていた。血なまぐさい鉄の匂い。糞尿まみれで吐き気を催す。というより何人かはえずきながら吐いていた。
レイドックも凄い汚臭により吐くのをこらえていた。何だこれは!と叫びたかったのだが、声をあげてはこの匂いを吸い込むことになる。レイドックは懐の帰還の札を取り出し破いた。
一緒にくっついていたロズエリアと何名かの兵と共に自室に戻る。部屋が汚れまみれになり幾分匂いも残っていた。
レイドックはロズエリアと兵たちを外に追い出し、侍女に掃除と湯の用意をするよう激しく声をあげていた。
その後、兵たちの帰還先である詰所では異臭騒ぎがあり、それはレイドックの父、王であるグリーンヒル・アガメムの耳にも入った為、激しい説教をくらうことになるのだが、レイドックは今、温かい湯に顔を沈ませ、鼻の奥に残っている汚臭をそぎ落とす作業に没頭していた。
「絶対に!絶対にゆるさないからな!」
浴室に響く皇太子に悲痛な叫びに、侍女たちは火の粉が飛んでこないことをひたすら祈っていた。
その後、レイドックはアールグレイ家とアッサム家を王族を謀った罪で処刑だ!と騒ぎ立て、父であるグリーンヒル・アガメムにその旨を申し立てたが、さすがにそうはならず、両家を子爵に降格という処分で落ち着いた。
当然それでも重たい処遇ではあったのだが……
一度に二つの侯爵家が子爵家に降格……。そのことにより国力は著しく低下する。そしてその影響を一番に受けるのはこの国の民であった。新しく侯爵に陞爵された2家がその責務をきちんと果たすようになるまで数十年、この国の低迷期は続くことになる。
そのことを理解している国王グリーンヒル・アガメムは、我が息子ながらなんとかしなくてはと思ってはいるのだが……こうして頭が痛い日々を過ごすことになるのだった。
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