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「マリアント様でよろしいですか?」
私は街からの帰り道、名前を呼ばれたことで心臓が跳ね上がった。
その瞬間、ジロは警戒するようにその声の主と私の間に立ち、威嚇するようにその男を見ていた。
「と、突然声をおかけした、ことをお許し下さい……できればその威圧を、おやめ、頂ければと……」
怯えるその男は、今にも膝をつきそうにかがみながら弱々しい声をあげた。
「ジロ。話だけ聞こうよ」
私の言葉にジロは笑顔に戻り、その男はホッとしたように再度こちらに頭を下げた。
「私は、皇太子殿下よりマリアント様への伝達の命をうけました、聖騎士隊所属のアレス・ソーマと申します!不躾ながらこちらの手紙をお受け取りいただけないでしょうか?」
そういって、その男の差し出した手紙をジロ経由で受け取った。
「できれば返事を頂ければと思いますので、次回はいつ頃この場へお見えになるか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
返事がほしいのか……いつにする?いやでも次回は待ち伏せとかされても困るし……悩んだ私は「少しまっていただいても良いでしょうか?」と聞いてみた。
「はい!待つのはかましませんが……」
「じゃあ今読むので返事がすぐにできそうならすぐに伝えますので、その皇太子様?に報告してもらっていいですか?」
「はい!もちろんです!ありがとうございます!」
私のことを丁重に扱えとでも言われているのか、それともさっきのジロの威嚇がきいているのか、その男の対応は一応は誠実な感じを受けた。
そして私は手紙を開けると目を通していく……そしてがっかりと肩を落としジロにその手紙を返すように伝えた。
「お断りします。とだけお伝えください……」
愕然とした表情で狼狽えた兵は、ジロから受け取った手紙を腰の袋にしまうと「ありがとうございました。お伝えします」と言いながら一礼すると、ふらふらとした足取りで街の方へ元って言った。
私は少しイライラを隠すようにため息をつくと、ジロに抱き上げられて洞窟へ戻ることになった。人間なれるもんだね。今ではちょっとしかドキドキしないや。と思っている私は、真っ赤な顔をしながら、ジロの腕の中で手紙の内容を思い返していた。
皇太子からの手紙。
その内容はみんなを大切に匿うということ、衣食住の保証に望むだけの給金を与え、たまにその武力を貸してほしい事、そしてそれ以外は自由にして良いしその身分も全員保証することが書かれていた。
そして自分の子を産んでほしいと……目が点になった。それは皇太子の望みというよりも私に対する恩賞のように書かれていた。『私の子を産み王を育てる権利をやろう』そう書いてあった。
それだけでも腹立たしいのにみんなにはよりどりの女も提供しようとか……女性は物じゃない!思わず拳に力は入る。そして最後の方に『妻ロズエリアとともに楽しく暮らそう。だがロズエリアには絶対服従だ』と書いてあった。
ここには少し困惑した。なんだか字体も文体もそれ以前の文章とかなり違うし、もしかしたら他の人が書いたのかな?と思ってしまう。
いずれにしても『できれば会える機会を作ってほしい。その時にまた望みがあれば聞きたい』ということで締められていたが、到底会う気にはなれない内容だったのでお断りを告げていたのだ。
でも皇太子からの手紙を拒否したら今度は軍が攻めてきたりしないだろうか?不安を感じながらも私を包む温もりに体を預けて目を閉じた。
◆◇◆◇◆
「ねーちゃん!マリねーちゃん!」
「おねーちゃん……おきて、おねーちゃん……」
微睡みの中で誰かが私を呼ぶ声がする。体をゆすぶられるのを感じでゆっくりと目を空ける。眩し光が洞窟内に差し込めて白い視界がゆっくりと開けていく。
「えっ?ん?あ……ダイとユズ?でいいのかな?」
なんとなく夢の延長のように感じていた私は幼い狐さんたちの名で呼んだ。
「うん!そうだよマリねーちゃん!」
「えへへ。おねーちゃんと同じになれたよ!」
目の前に金色の髪をふわふわと靡かせた男女の幼児が、こちらに小さな手を向けて私の顔をペシペシと触ってくる。なにこれ可愛い。でもだめ!いけないわ!このまま素っ裸のままでは私の中の何かが目覚めてしまう。
朝っぱらからそんなことを考えながら、二人に「寝床に服があったでしょ?着れないのなら持ってきて。着て見ましょ」というと元気よくタタタとそばの寝床まで走っていった。そしてその小さな手に服を持って戻ってくる二人。
それを微笑ましく思いながら二人に服を着せていく。少しぶかぶかだけどすぐ大きくなるのかな?いやクロにぴったりサイズを作ってもらおう。そう思いながらちゃんと服を着こんだ二人の頭を、やさしく撫でる素晴らしき朝。
それから起きてきたクロに早速新しい服をお願いする。今日はいい日だ。きっと今日の修行も楽しくできそうだ。そう思いながらも目を覚ましたジロたちと共に朝食の準備を始めた。
コガネさんとモモさんも、人化した我が子たちを存分に可愛がっていた。お互いが膝の上に座ってニコニコしていた。慣れない人の体に四苦八苦しながらも焼いたお肉を口にほおばる二人はいつまでも見ていれる気がした。
そんな爽やかな朝。ジロがピクリと耳を動かした。
「マリ姉。誰か来た……罠にはまったみたい」
「えっ……」
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