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最後に評価など頂けれは嬉しいです。
「おお!なんかすごい!全身を魔力が巡っているのが分かる!」
あれから1週間。すっかり回復した体で魔力を操る。全身に魔力を巡らせると少し体が軽くなった気がした。それが身体強化魔法で間違いないらしい。試しに走ると信じられないほど早く走ることができた。
もちろんジロたちは軽々と付いてくるのでまだまだなのだろう。とはいえ自分が強化されているのが分かって嬉しい。
「それじゃあ眷属魔法の方も練習してみようか」
「そうだね」
私はジロを守りたい!そんな優しい気持ちをこめて魔力をジロに向かって覆うように放つ。白く光るオーラがジロを包み込み、私とジロがつながっている感覚になる。そしてジロが白い炎をいくつも頭上に浮かべ解き放つ。
放たれた先の木々が白く輝き蒸発するように消滅した。すごすぎる。
「やっぱり凄いねこれ。一緒に切り傷とかも直ってるし!」
「そ、そうだよね」
何度か見ているが中々慣れない威力である。
ジロが眷属魔法と言っているのは私のあの黒いオーラの改良版のこと。最初はあの時のことを思い出して暗くなった気持ちを高めるとそれっぽく再現はできた。けどみんな少し意識が曖昧になるようで、私もかなりの疲労感で倒れそうになったのでやめた。
そして黒い感情抜きで唯々みんなを守りたいって気持ちを、胸の中で強く思うことで同じように発動できたのが、この白く光るオーラだった。その光が包み込むとお互いがつながったような感覚となり癒される気さえした。
でもその威力はすざまじく、それぞれの持つ魔法が何倍にも膨れ上がってくるという。私も意識を失うことはなかった。でもこの状態はジロ一人でも10分程度の維持しかできず、みんな同時にだと一分も持たない。
何度も使えば魔力量が増えると言われ、未来の私に期待した。
「でもこれって切り札だよね」
「そうだね。でもマリ姉が危ないって思ったらすぐに使った方がいいよ!」
やさしいジロの笑顔に照れる私。最近ジロが子供っぽさが取れてかなり意識してしまう。私はジロの飼い主……そう思って気持ちを立て直そうとしたが、首輪を付けて私に膝まづくジロを想像してしまって余計に照れてしまう。
「どうしたの?マリ姉?」
「ひゃ!いやなんでもないの!……そろそろ戻ろうか!」
ふいにジロに覗き込まれて驚く私。だめだ。早く何とかしなければ。と思うが何をどうしたら何とかなるか分からない私は、魔力を巡らし肉体強化で洞窟まで走り出していた。横にはジロが笑顔で付いてきた。可愛い。
◆◇◆◇◆
「陛下、アールグレイ・ダイモンド様とアッサム・ハイデリッヒ様がお見えになっています。大事な話があり謁見したいと……」
「そうか。通せ」
国王の執務室でこのアテナイ王国の君主であるグリーンヒル・アガメムは「あの二人が揃うとは珍しいこともあるものだ……まあ、あの事だろうな」と独り言ちる。
暫くして、その執務室のドアはノックされ、王の「入れ」の言葉にドアが開く。
「本日はお目通りありがとうございます。陛下」
「恐縮至極でございます」
アールグレイ侯爵とアッサム侯爵が跪きあたまを深々と下げる。
「堅苦しいのはよい!面を上げよ。して、此度は二人そろってどうしたというのだ」
「はっ!実は……」
顔を上げ、話を始めたアールグレイ侯爵。一緒に顔を上げたアッサム伯爵の顔にはひどい青あざができていた。ひどい顔だと思わず笑いそうになったアガメムは咳払いでごまかした。
「北方の死の森で、魔物が暴れていると?で、アールグレイ、そなたの娘が獣人に囚われいると……そういうことでいいのだな?」
「はい!私が雇った冒険者たちでは埒が明かず、アッサム殿にも助力を頼んだところ、アッサム殿はこのとおり……」
その通り、とういのがその顔なのか……大体の状況はわかったがどうしたものかと頭を悩ませる。
「私も!私兵を総動員し、魔消石の錫杖を用意しての奪還作戦でしたが……力及ばず無念です……」
「なに!魔消石の錫杖じゃと!そんなものまで……」
王は悩んだ……ふりをした。それほどまで強い魔物?獣人?そんなものが関わっているのであれば、軍を投入しても被害は免れん……昔から死の森については関与しない。触れるな危険というのが王家の決まり事である。
「あいわかった!しかし死の森については代々不関与となっている。王家としてそれは曲げられぬ。すまんがこの話はこれ以上申すな。そしてゆっくりと体を休めるがいい」
思っても見なかった王の言葉にうなだれる二人。きっと軍を動かし助力があるはずと思っていた二人には想像できなかった返答であった。
「お、お気遣い……ありがとうございます」
「お言葉の通りに……感謝いたします」
二人は悔しさを感じながらもその場を後にするよになかった。
その後、アッサム邸に戻る二人は、陛下への罵詈雑言を発しながら酒におぼれていくのであった。
この件に関して、国王の決断は間違いではなかった。元S級冒険者、騎士爵であるエドガー・トレモロスは、その騎士爵をここぞとばかりに使い、先日この国王と謁見していたのだ。
あの男たちに手を出すことの恐ろしさ、アッサム伯爵の作戦も失敗するであろうこと、マリアント様はあの暮らしに幸せを感じて奪還を望んでいない事、そして何より手を出さなければこちらに火の粉は降りかからないことを説明した。
そして最後に、国が動くというのであれば自分は処刑されてでもマリアントの側に立つことを宣言したのだ。そしてこの望みが叶うなら国のために尽力することも厭わないと……
元とは言え、S級冒険者として騎士爵を賜った豪傑だ。国王もその言葉を深く受け止めたようであった。
そんなことがあったとはつゆ知れず、二人の侯爵の不毛な宴は続く……
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