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本日二回目の更新です。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
でももう何も聞こえない。そして私は……
「私はあなたのお嫁さんになります……だからもう……みんなにひどいことはしないで……」
そういって私は、力なく膝をついた。
「わはははは!そうですかそうですか、決心いただけましたか!ワシは皆の安全を守りましょう。約束は必ずまもりますよ。皆、隷属させてしまえば安心です。おい!」
意味の分からないことを言っているな。そう思った私は、振り返ったその侯爵という男が呼びつけた何人かの指示を聞いた。
「この者たちに隷属の印を……さすればこいつ等はもうワシの駒よ!大切に使ってやるとしよう。とんでもなく強い。そしてどの男も見目がいい。ワシの嫁たちも喜んで腰をふるであろう!」
私は、胸の奥から黒い何かが溢れ出るのを感じた。
「なにを……言っているの?」
「ん?」
「隷属?誰を?」
「大丈夫、ちゃんとお仲間は仲良く隷属させて飼ってやる。ワシは心がひろからな!望むなら乳繰り合うのも許そう。ワシがおぬしに飽きた頃にだがな!」
そして私の何かが壊れた……
とめどなく私の中の黒い靄が広がるのを感じ、同時に私の中の魔力がどんどんあふれては外へ垂れ流される感覚……何も見えない。黒く染まった世界。そして私は意識を手放した。
◆◇◆◇◆
「マリ姉!マリ姉どうしたの!」
僕は必至でマリに声を掛けた。何かを叫んだと思ったらそのまま横に倒れてしまったマリ姉。そしてマリ姉から魔力の塊が周りに放出されるのを感じて……
「あ¨あ¨あ¨あ¨あ¨!!!」
僕の中から黒い何かが溢れ出ている。魔力?戻ってきた感覚。気づけば僕の両手から黒い炎が噴き出ていた。周りをみるとクロも、コガネも、モモも、真っ赤な目を光らせて感じたことのない魔力が体から溢れていいるようだった。
そして僕はその手の炎をそばにいた兵士にぶつける。そして全身が黒く燃えると、消し炭のようになった何かが出来上がった。僕は力を取り戻したことが嬉しくて、でもマリ姉をいじめた男が許せなくて、その男を睨みつけた。
クロは暴風のような竜巻を洞窟に入ってこようとする兵たちにぶつけていた。コガネは周りの兵たちを凍らせる。黒い結晶のような氷になった。レオは兵士たちを地中へ引きずり込んでいた。
モモはいばらのついた鞭で兵士をきりさき、そしてマリ姉とあの男の間にそれをねじ込ませ、マリ姉を守っていた。
「あとは……おまえだな……」
僕は静かにその男に近づいた。
怯える男……尻餅を突きその手にももった棒を振り回す。「くるな!くるな!」と繰り返していた。なんで?おまえはさっきまでマリ姉を面白そうに虐めてたじゃないか?なんでお前だけは許されようとしている?
気づけば僕の横には、クロとコガネ、レオも立っていた。皆その男を八つ裂きにしたくて近づいてきているようだ。
じゃあみんなで……殺してみよう!
◆◇◆◇◆
うっすらと意識が戻ってきた時、私は太い茨に守られていた。後ろを向くとモモさんが黒いオーラを噴き出しながら、怖い顔をしてあの男を見ていた。
前を見ると他のみんなが同じように黒いオーラを発しながらこちらへ近づいてきた。そして理解した。あの黒いオーラ……私の力……
私の体にも同じように黒いオーラが見える。そしてそれはつながっている。きっとこれが私の本当の力?隠された力?それとも……使ってはいけない力?
そう思って必死に落ちつこうと心を押さえつけた。
大丈夫!もういいの!安心して!これ以上はしなくていいの!そう思ってもまったく治まらないこの気持ち……そして自身で抑えることをあきらめた。
「みんな……だめ……」
今にも男を八つ裂きにでもしようとする雰囲気のみんなに、なんとか口を動かし発した言葉……
「マリ姉!」
ジロの声を皮切りに、みんな黒いオーラを飛散させてこちらへ駆けてくる。後ろにいたモモさんも、体を起こした私を後ろから抱きしめる。みんな私に抱き着いてちょっと苦しい。でも良かった。みんな無事だった。
「くっおのれ!ワシをコケにしおってからに……目に物みせてやる!」
そういうとハイデリッヒは手の持つ錫杖を再び強く握りしめ、魔力をこめているようだった。しかしそれは何も起こさない。最初見たその錫杖の禍々しさが消えていたから。頭についていた真っ赤な石は真っ黒になっていたから。
それに何より……その錫杖が効果を発したところで、一人でみんなと戦うつもり?と思って少し笑ってしまう。
そしてジロが近づき、「やめろ!来るな!殺さないでくれ!」と叫んでいるハイデリッヒをつまみ上げ「どうするこれ?」と聞いてきたので「捨ててきて」と伝えると颯爽と外へ出ていった。
「ほーい」というコミカルな掛け声の後に「ぐえっ」とカエルのような声が聞こえたがきっと大丈夫だと思う。騒がしい悲鳴がたくさん聞こえたので、外にはまだ兵士がいるようだ。なんとか逃げ帰れるだろう。
そして安心しきった私は脱力感に負け、再び意識を手放した。
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