103
ご覧いただきありがとうございます。
最後に評価など頂けれは嬉しいです。
あの邪神との戦いから3年近くがたった。
16才となった私。
あれから随分色々なことがあった。
「奥様、昼食のご用意ができました」
「ありがとう。カエデ」
私は、赤い目をしたモフモフ少女に手を引かれ、昼食の用意されている広場へと歩いてゆく。
広場にはジロが食事の用意の整ったテーブルの横で待機している。私を見つけると笑顔を見せてくれた。もちろんモモさんやダイ、ユズ、そしてユキも……ユキは今もこちらに飛びつきたい雰囲気を出してるけど。
クロやレオ、ギンにエン、そしてアリサも席に座って待っている。他にはアヤメにナノハ、ビオラとルビナ、なんとも賑やかな食卓になっている。この三年で随分メンツも増えた。
あの邪神との戦いのすぐあと、朝早くの騒がしさに目を覚ました私は、その騒ぎを確認するため隣の小屋に行く。そこにはジロを取り囲んでいる少女が五人……全員全裸で……何やら「ボスー!」とか「なんとかしてくださいよー!」とか……全裸で……
何事かとパニックになりかけたけど背中に見えるフワフワした尻尾をみて、少しだけ冷静になることができたので、すぐにクロを呼んでストックしてある服からサイズの合う服を出してもらった。
予想通りその少女たちは洞窟を離れるまで一緒にいたジロの取り巻き、5匹の狼ちゃんたちだった。
実力の違いから洞窟で彼女たちから離れていったのだが、ジロの役に立ちたい気持ちは変わらず必死に森の魔物を討伐しまくって、気づけば人化することができるようになったとか……
そうだよね。最初っから私、めっちゃモフってたもんね。
そして人化してからどうして良いか分からず、ジロの匂いを頼りに目立たない場所を伝ってたどり着いたところだったようだ。当然全裸で山を抜けてきたことになる。私は何という大罪を犯してしまったのか……
謝罪として面倒をみようと名乗り出たのだが、彼女たち自身がジロのため、そしてジロが見初める私のためにと従者として尽くすと真剣な眼差しで言われてしまった。思わずそのまま抱きしめ撫でまくってしまった。
反省はしている。後悔はしていない。
結局リーダー格の娘を瞳の色からカエデと名付けた、そしてその流れで適当に、いや結構真剣に悩んだ結果、全員花の名で、アヤメ、ナノハ、ビオラ、ルビナと名付けて今に至る。
私とジロをローテーションで世話してくれている。担当でない日は暇を持て余し、婿候補を探しにいくのだとか。いつか番を見つけてここを出る日も来るかもしれない。
それはそれでちょっと寂しい。
そしてもう一人。アリサはハーピーであった。
西の山に狩りに行った際に、罠に掛かっているところを助けたのだが、私に襲い掛かってきたので腕を捻りあげて押さえつけた。突然罵声を浴びせてきて飛び掛かってきたからね。
あれでしゃべることができるって分からなければ、横にいたジロが即狩り殺してたかも……
今では無事私の眷属となって日々いたずらを繰り返している少女となった。ユキと馬が合うようで良く二人で遊んでいる。大きないたずらをするとモモさんに(拳と言う物理の方の)雷が落とされるのでほどほどにしているようだ。
私たちは竜人国と獣王国の間ぐらいの森に拠点を構えなおし、今ではのんびりと暮らしている。
定期的に獣王国や竜人国へ顔を出し、けが人の治療などを行いながらゆっくりとした時間を過ごす平和な日常を過ごしていた。もちろん樹の里やアッシュールさんたちの拠点にも顔を出している。
少し前にはアテナイ王国の北方、辺境の街スルーズにもギンに乗って遊びに行っていた。
アテナイ王国はあれからなんとか民主国家が安定してきたようで、それを主導して支えてきたエドガーさんは自分の領地へ戻っていた。もちろん彼の影たちは各地で日々情報収集しているので、何かあればまた彼が解決するのだろう。
当然のように私たちの現状も知っていた。怖すぎる。
ゆったりとした日々の中、治療に回る生活も楽しい。
だけどもうそろそろ、その活動はおやすみしなくてはいけないのだ。本当は大丈夫なんだけどね……ジロが……うるさいんだよね……
「マリ姉、今日は大丈夫?ちゃんと食べれそう?ちょっとさっぱりとした味付けにしてみたんだけど……大丈夫かな?」
「もう!ジロは心配しないで大丈夫だよ。食欲もちゃんとあるし、うん。とっても美味しいよ。だから心配しないで。ね?」
「う、うん。でも、何かあったら言ってよね?」
私は、そんなジロに苦笑いしながらお腹をゆっくりとさする。
「アヤメ、ちゃんとマリ姉を見てあげてね?明日はナノハが担当だよね?もう一回、みんなで注意点のおさらいしようか?」
「ジロはもっと落ち着くのじゃ!ちゃんとワラワも気を付けておる!心配し過ぎは逆にマリネエも困ってしまうのじゃぞ?」
「で、でもー」
そんなやり取りが続く毎日。
私はお腹の中の新しい命を感じ、心が温かくなるのを日々感じていた。
お腹の中にはなんと二つの魔力を感じることができている。
……でも大丈夫。双子ちゃんだって二人とも絶対にこの世界一の幸せ者にしてあげる!私には、そしてこの子たちには、たくさんの愛情を注いてくれるみんながついている。
ただ一つ気がかりがある。
あの男から返ってきた鑑定眼の効果なのか分からないが、鑑定眼から神眼へと昇華された私の目にお腹の中にいるうちからその魂が鑑定できるようになっているのだが……その鑑定結果については不安しかない。
まだ男の子か女の子か二人とも分からない中、二人の種族はハーフエルフ。そこまではいいだろう。だが称号にすでに『神の孫』と入っているのはどうなのだろう……不案を覚えない方がどうかしているだろう。
アトちゃんに会うことがあれば2~3時間程問い詰めたい……
大丈夫だとは思うけど、この子たちの幸せを思うとまだまだ私も強くならなきゃ!とそう思わざる得ない。
でもきっと大丈夫。
この子たちのためなら、私はきっと神でも倒そう!そう、アトちゃんだってやってやる!そう願いながら日々生きることを決めた私でした。
両親に忌み嫌われて殺されかけた私。
謎だったスキルの『もふり』で狼に助けられ……そして娶られちゃった私の人生よ!
今度こそ幸せであれ!
・・・ おしまい ・・・
お読みいただきありがとうございます。明日も17時更新となります。
これにてマリアントちゃんの本編は終了となります。後残り5話をもってこの物語も全て終了となります。もうしばらくお付き合いくださいませ。
評価、ブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。




