067-秘密の場所へ
数日後。
私は車に乗っていた。
「..........今は、どの辺りですか?」
「ベラスC-D2地区だ...それより、喋るな。お前は積み荷だ」
.....といっても、運転席に同乗しているわけではない。
車体後部のスペースに、分解されて収められている。
どうもこれから向かう場所は極秘の場所らしく、私がそこにいるという情報が漏れてはいけないそうなのだ。
「......組み立ては現地で行うのですか?」
「そうだ」
「...この車は、あなたのものですか?」
「...そうだ」
運転している護衛の声が少し不快感を帯びた。
それを察知した私は、とりあえず黙ることにした。
「........おい、音楽は流せるか?」
「...可能ですが、車載の端末で行った方が勝手がよろしいかと思いますが....」
ミュージックプレイヤー扱いされたので、そう言い返すと、
「.....壊れてるんだ」
「修理に出されては?」
「型番が古い。今じゃ対応もしていないだろう」
仕方ないので、リクエストを聞くことにする。
「......聴きたい曲はありますか?」
「...クラシック、ペイデンラックスのC22、「エストーレブ」を」
「わかりました」
随分と古い曲だ。
クラシックと呼ばれるに相応しいかもしれない。
私はそれをダウンロードし、流す準備をする。
「曲を流している最中は喋れませんのでご了承ください」
「.....ああ」
この護衛は、かなり親しみやすい部類かもしれない。
先日のパレードの護衛は、私を仕事相手としか見ていなかったが、彼は...私に興味を持っている。
勿論、性的にとか、恋とか、そういったものではないし、むしろそれだったら私が困る。
喋る機械として、子供心に興味を持っているのだろう。
「.....この曲はな、俺の祖父が好きだったんだ....お前には伝えるなと言われているし、伝えたところで無駄だろうが....俺の祖父は、殺されたんだ。俺に良くしてくれたが、”反乱戦争”で冷えた死体になって帰ってきた」
護衛の声に怒気がこもる。
「お前に罪はないが、俺はお前を憎いと思っている。だがそれでも、俺は護衛であって、同時に”あの御方”の下っ端でもある。あの御方に背かなければ、俺はお前の協力者でいるつもりだ」
あの御方、とは誰なのだろうか?
考えてもわからないので、音楽を止めて尋ねることはしない事にした。
車はとあるビルに入り、そこから地下に入る。
途端に位置情報が遮断され、どこかもわからない場所を車は通っていく。
「もうすぐ目的地だ、音楽を止めろ」
「...はい」
全てのセンサージャミングが働いていて、聴覚しか機能しない。
箱詰めにされている状態のまま、私は車から降ろされた。
目の前が明るくなり、箱が開いたのだと認識する。
周囲は、地下に設けられたエントランスのような場所であった。
「....到着ですか?」
「ああ、これから両手のパーツを接続する、脚のパーツは自分で接着しろ」
「わかりました」
両手が護衛の手によって接続される。
「....左右、逆です」
「...すまない」
しかし、左右逆であった。
護衛は慌てて左右を直し、今度は正常に接続が完了する。
私は傍にあったパーツを受け取り、両足に接続する。
脚は長いので、関節ごとに分けて箱に入っていた。
「....終わりました」
「これを着ろ」
「はい」
普段着ではなく、長袖の服を受け取り、装着する。
耐久性としてではなく、関節部分を隠すための物だと思われた。
「では、行くぞ」
「はい」
歩き始めた護衛に続き、私もその後を追った。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




