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021-第二次パルタ降下戦(前編)

『おわああああああああっ、燃えてるぞ!?』

「落ち着いてください、想定内の事態です」


クロノスは現在、真っ赤な光と共に大気圏突入を行っていた。

燃えているのはクロノス表面に展開されたシールドだ。


「逆噴射開始まで残り42秒、突入ポイントとの誤差修正を行ってください」

『帰りはどうすんだ!?』

「帰還も可能です、大気圏突入用のユニットを投下し、装備することで単独での帰還が出来ます」

『成程な、じゃあ行くぞ!』


逆噴射地点まで降下したクロノスは、エンジンをフル稼働して最大噴射で減速を行う。

そして、地表面に到達する前に完全に速度を殺すことに成功した。


『どっちに行けばいい!?』

「前回の遭遇ポイントにまずは辿り着きましょう、その後、熱源を狙っていると仮定し各都市の周辺を周回します」

『了解だ!!』


クロノスは逆噴射を切り、地上に向かって暫くの間落下した。

そして、四点着地にてしっかりと衝撃を受け流し、着地した。


『なぁ、飛行するのとオレの爆速ダッシュとどっちがいい!?』

「出来れば、飛行していただけると」

『OK!!』


クロノスは前世だと結構足が速かったので、気になるところではあるけれど......ここは大気がある場所で、中に私が乗っているので....走ると震動が凄いことになる。


『それにしても、荒地ばっかで何もねえなあ......』

「この惑星は、テラフォーミングの最中だそうです。植民都市を中心にテラフォーミングを行い、緑と水の溢れる星にするそうです」

『へえ......』


この世界にもオーパーツというものは存在していて、その中でも超技術の塊である『スターリバイブ』という遺物をほんの一部だが再現した機構で、少しずつ星の環境を改造できるのだそうだ。


「ですから、生き残って数十年経てば、緑の星になったパルタを見れるかもしれませんね」

『数十年後か.......何してんだろうな、俺ら.....』

「分かりません、ですので、まずは....」

『目の前の敵を、だな!』


クロノスは、第72植民都市へ向けて加速を開始した。




◇◆◇




「熱源探査を開始」


熱源を探査し、私たちは72都市周辺の調査を行う。

だが、熱源に特に異常は見られなかった。


『次に行くかー?』

「待ってください、金属探査に切り替えます。周囲を適当に散策してください」

『了解だ!!』


クロノスは第72都市周辺を巡回する。

活動時間は残り五時間、発見できなければ一度帰還しなければならない。

日程と資源の無駄遣いだが......仕方ないだろう。




「反応なし.....ですか」

『みたいだな....』


しかし、予想に反して、都市周辺に怪しい反応はない。

では、何処に居るのだろうか........

残り活動時間は三時間ほど、どうすればいいか私が考えていると、通信が入った。


『――――救援.....を求む! ――――立している! 周辺――――に――――なし!!』

「! 通信の発信位置を特定します」

『いや、コードに書いてあるだろ。第6都市だ!』

「待ってください、欺瞞情報の可能性が.....」


クロノスは反転し、加速を始めてしまう。

同時に、目的地が第6都市で合っていることも分かった。


「発信地点は第6植民都市!」

『やっぱりな!』


クロノスはスラスターを全開にし、その速度を上げていく。

機体には大きな負荷がかかるが、レーザーにも耐えるその装甲がこの程度のことで傷付くことはない。


『ははっ、こういう事に憧れたんだよな! 彼女と一緒に湾岸をドライブ!!』

「湾岸ではありませんし、私は彼女ではありません」

『憧れのロボ娘が俺に乗ってる! こんなに嬉しい事はないぜ!!』

「.....そうですか」


暢気な奴である。

しかし、一緒に居て飽きない人でもあるのだ。

だからこそ、俺達は親友なのだ。


「目標に到達」

『見りゃわかるぜ、もう元気になってやがる!』


そして、私たちは第6都市周辺へと辿り着いた。

都市を破壊して回るネルディエ級の姿が、遠目からでもハッキリと分かる。


『まずは都市から引っぺがす!』

「はい!」


とはいったものの、”引っぺがす”為の作戦をどうするのか、私には分からない。

一応、聞いてみるか......


「どういう方法で行くのですか?」

『俺にもわからねえ! とりあえず、引っ掴んで都市外に放り投げるしかない!』

「大丈夫でしょうか......」


どう考えても難しい。

とはいえ、ほかに手段もない。

とりあえず、クロノスに任せてみることにした。

私は私で、交渉役を務める。


「第6都市司令部、応答してください、応答してください」

『そちらは......何者だ!? 所属を明かせ!』

「......どうしましょう」

『そういえば、俺らの所属ってなんだろうな.....』

「....とりあえず、実験艦隊所属、特殊人型決戦兵器Chronusと、その搭乗用自律型人工知能Clavisです、本都市で交戦中のネルディエ級を討伐するため、接近を許可していただきたいのですが」

『接近に関しては問題ない! ――――ただ、避難が完了して――――いる、西地区――――交戦してくれ!』

「はい!」


良かった、色々突っ込まれる事は避けられた。

クロノスはダウンロードした地図をもとに西地区の位置を特定する。


『あそこだな、一気に押し込むぞ!』

「分かりました! 生体データをもとに、被害を最小に抑えるルートを算出します!」


素早く生体スキャンを行い、押し込んでも問題のないルートを構築する。

ビルを薙ぎ倒すことになるけど、人死にが出ないならそれでいいだろう。


「ルート構築、共有します」

『よっしゃ、じゃあ――――捕まえるぞ!!』


クロノスは一気に飛び出し、まだ人がいるビルを避けて、穴だらけになった人の居ないビルを粉砕、そのまま一気に、首を出したネルディエ級を捉える。


『行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』

「.............ッ!」


最大出力でスラスターを噴射し、クロノスはネルディエ級を引っ掴んだまま西地区に向けて突き進む。

ビルを何棟か薙ぎ倒し、クロノスは西地区へと転がり込んだ。


『さあ、バトろうぜ』


クロノスは、引きずりまわされて尚傷一つないネルディエ級を見て、下品なジェスチャーで挑発した。


「行きますよ」

『ああ!』


そして、リベンジマッチが始まる。


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