4-14 天秤の罅
朱雀たちと別れた後俺は一人で青龍がいる場所まで向かっていた。青龍がいるところはかなり遠くて着くのに時間がかかるので近くの露天などを回ることにした。
そういえば、ティア用に何かお土産買ってかねえとな。それにあのバカ姉貴にも何か買ってやらねえと。仮にも海王竜レヴィアタンなんだからな。それに、姉貴は海好きだったしな。
青龍がいる場所まで色々買い物をしていると人魚族が集まっている場所があったのでなんとなく気になってそこを覗いてみた。するとそこにはたくさんの貝殻を集めた人魚族の子供たちが遊んでいた。貝殻を地面に叩きつけるのが早いのか競争をするというなんとも斬新な遊びに思えた。
人魚族の子供は比較的人間族と比べて筋力が桁違いに大きい。子供であっても大人と力が同じかまたは近いかぐらいになる。大人になるとそこそこ大きな石でも強く殴れば簡単に割れる。
「なあちょっといいか?ここに青い龍を見なかったか?」
「兄ちゃんもしかして外から来た人?!」
「え、ああ。そうだけど、」
「えー?!話し聞かせてよ!」
「分かった。分かっただから押すな!ちょっと待てってぇ!」
それから人魚族の子供や魚人族の子供たちに外の世界のことを簡単に教えてあげた。ただ、色々不都合もあるので大体のことはぼやかして言ったが、それなりにかなりの刺激になったらしく。まるで狂喜乱舞かのように水の中を泳ぎまくっていた。
そして、簡単に話しを済ませると青い龍。まあつまり、青龍がどこに行ったか聞くと青龍はプカプカと自分の非常能力に頼らずに水の浮力だけで浮きながら寝ていた。
「雷魔法・白雷」
「んぁ?おお?!ヤベー!」
目の前に白雷を落とすと青龍はその長い蛇のように撓っている身体をギュッと締めるように動くと俺の方を見るとすぐにびくっとなると俺の方を見てくる。すると近くにいた海神が寄ってくると俺達を標的にしてくるのが分かった。
「真風魔法・風切」
「水天・海槍」
俺の真風魔法と青龍の技が合わさるとそのまま海神たちは倒されて行く。そしてそれを見ながら俺はやっぱり本物には叶わないのだと感じた。それを顔に出さないようになんとか我慢しながら青龍の法を見た。その顔はどこか寂しげで、どこか何かに気づいているような表情を見せる。そして、それを見るとどこか俺は後ろに下がる。すると誰かに当たるとそこには。
『なぁー。お前今、若干後悔したよな?』
「?!」
背後を見ると俺は全く動けなくなった。そこにいたのは、かつての自分だった。青龍、お前まさか俺に水天・水鏡を使いやがったな。何が目的なんだこのタイミングで俺の記憶を漁るなんて、急いで早く竜人族の里に向かわなくちゃ行けないのに。それなのに、どうしてこんなことを。
「あんたは、ここにいるべきじゃない。それはあんたが分かってるはずだ」
「...オォ....レレレ...ワワワ」
「いいんだよあんたは一生そこにいろ。また同じことの繰り返しだぞ」
そういうと俺の目の前の景色が完全に移り変わると俺はまるで息が出来なくなったようになる。息苦しい、それになんだか身体が毒に犯されているような感じすら覚える。何かが身体に入ってくると完全に俺はそのまま元いた場所から移動したことを感じた。そして、俺の目の前には。
「まだ帰ってくんな。すべきことをしろ。親友」
そう言われると俺は誰か分からない人物に背中を押されると姿を見ようとすると頭を抑えられてまるでこっちを見るなというような感じで俺は青龍が作った水鏡の中に入ると中から出て来る。すると特に慌てた様子もなくただそこで浮いていた。
「青龍!俺をどこに行かせようとした!」
「やっぱまだあんたには早いみたいだ。疲れたから寝るねー」
「おい!まだ話しは『グー』」
「マジで寝やがった」
その後青龍を浮遊魔法で浮かしながら進んで行くと人魚族と魚人族の子供たちに見られながら空は進んで行った。道中子供たちに『誰この人』と言われると空は『ただのグータラだ』。とだけ言うと空は朱雀たちの元へと向かった。青龍はちなみに海底にある石のところにも頭をぶつけながらでも、そのまま空は海を泳いで里へ帰る。
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「それで、あんた。あの吸血鬼に会いに行ってどうするんだい」
「癪だけどあいつの力がないともしかすると魔神が再来した時に対処できねえかもしれねえ」
「...魔道王がいればな、あいつがいればまた状況が違うんだろうが」
あいつがいれば確かにどんな奴が来ようが大体は勝てる。けど、今回相手取るのはおそらく、月にいる奴らだ。今もどこかで召喚の術式を乗っ取って、どこかで転移してもうこの世界に紛れ込ん出てもおかしくない。だけど、あの兄貴が気づかないで、あの時の転移者はどうやって来た?
それが分からない以上はスキルっていう概念を持っていて、かつあの、魔道王の左手だった。あの吸血鬼を頼るしかないんだよ。それと、あとは幻獣も何人か眠りから覚めさせねえと戦力は過剰な程でちょうどいい。異界からの異物なんて、それぐらいしなきゃ戦えねえ可能性だってある。
「聞いてるのかい?」
「...まぁ。そうだな」
本当だったらあの戦争の後は俺がやり抜く気だったのにな。まさかこんな形になりそうなんてあいつが知ったらどうなることか。それに、あいつだったらこんな時俺の頭をスパンッと音を立てながら口笛吹いて逃げてるんだろうな。
少しだけ身体を起こしながら婆さんの口煩いことを聞いていると突然頭を何かで打たれる。そう、それもかなり久しぶりの感覚で一瞬で誰なのかフラッシュバックする。
「読んだか。小僧」
「ああ。久しぶりだなネナ」
背後から現れたのはかつての魔道王の左腕であり、俺の親友のネナだ。最古の吸血鬼の一人で能力は神獣すら凌駕したりする。赤髪で、瞳は特徴的で緑色なのがこいつのどうやらチャームポイントらしいが。それに男なのに、なぜか西洋の坊ちゃん服みたいな白黒の服を着てやがるしな。
「相変わらずお前はボッーっとしていると口を開けて人の話しを聞いているな」
「...まあいいだろう?」
「あんた、まさかネナか?!」
「あれ?!婆さんじゃん老けた?」
「まーた拳骨喰らいたいかね?」
逃げろーと言いながら婆さんに神槍を向けられながら走りネナを見ながらこれで心置きなく帰ることが出来ると思った。親友がいればあとはどうとでもなる。こいつと俺のコンビは兄貴とも負けてねえ。
「それで戻るのか?」
「ああ。青龍たちも転移で取り敢えず竜人族の里まで連れて行きたいが、魔神に見つかる可能性を考えると、ここに残しておきたい」
「ああ。確かにね!でも、マモルなら隠蔽できないの?」
「兄貴は、そういう器用なことは出来ねえんだよ」
へーっと言うと俺の背中で寝初めてるとそのまま俺は婆さんもついでに背に乗せてしばらく泳ぐとそのまま里まで戻ることにした。転移でも良かったが、ネナが『俺もここ初めて来たからここにしばらくいる!』とか言って先に戻ることになった。
「それで、エヒナ何のようだ?」
婆さんに連絡して既にここにいる理由が無くなったので、俺は帰ろうとするとエヒナが影からコッソリと俺が帰ろうとして転移魔法を使おうとする瞬間に現れた。まあ、来るとは正直思ってたけど。きっとティアでも来るだろうし。まあそう考えるとティアとエヒナrて似てるんだよな。
「...私も連れて行って!」
「ダメだ。お前は海にいないとまず呼吸も満足に出来ねえだろうが」
「...なら私、水魔術なら使えるよ!」
「...次戦うことになる奴らと戦う時正直言ってエヒナの力が欲しい。だが、場所が必ず悪い。だからエヒナ。お前を連れて行くことは出来ない。それにここならあっちの世界よりは安全なはずだ」
俺は、こんな言い方しか出来ねえから。それに実際エヒナが来ても、綺麗な水と、潤沢な魔力があるところじゃないと戦えないだろう?それに水魔法だって、ないし、雷魔法もあるが、あれは限定的過ぎる。上位の王魔ともなると必ず地形の有無で変わって来る。だが、姉貴がいれば、いや、ネナがいるんだここはあいつに任せた方が。
「おい!ソラ!その者連れて行けばいいだろう。向こうにはあの腹黒女がいるんだろう?」
「え?!レヴィアタン様も復活したの?!」
「ネナ!それは!」
「遅かられ早かれその女仮にも幻獣だろう?雷魔法で次元の壁すら超えて逆に追って来るぞ。それにこちらは任せておけ、俺もこっちを十分に楽しんだらすぐ帰る。場所は竜人族の里で良かったな?」
「...ああ!もう!分かった。けど、すぐ出るからな!」
やったーというエヒナの声を聞きながら俺はネナの方を見るとネナは俺の頭の上で立っていた。それをいつも通りだと思って歩こうとすると突然高密度な魔力反応を察知する。黒い穴から出てきたのは黒い髪に少し着崩れたメイド服を着たネツァフだった。
「駄竜。力を貸せ。出ないと楽園の園が崩壊するぞ。上位の王魔と大昔の魔王連中が何者かに蘇えさせられた。貴様らの手が必要だ。今はマルクトたちが必死で守っているがそう長く持たない」
「それは本当か?」
突然来たことは分かったし、もちろん傷だらけなののも見てとれるがこいつらは仮にも兄貴を使って何かをしようとしてた見たいなのが俺には分かる。あの日兄貴は俺の中にいて、核が俺の中にあってそこから出て来たのだって。それに、俺はお前らがしたいことが分からない。何の意味も無いわけがないんだろうが全く想像が付かない。一つ思い浮かんだのは魔道王の奪還だろうか。
「ッ!すまなかった。今までの非礼を詫びる。その変わりにどうか楽園の園を助けて欲しい!」
「信じていいんだな?」
俺はネツァフの方を見るとネツァフは瞳を揺らすことなく、真っ直ぐな瞳で俺の方を見る。そして顔を縦に頷くと一旦俺は帰ることを諦めて魔法剣に込めてあった魔力を通す。するとあっちの世界にいるティアや、ルリア、ヨル、兄貴、弟たちに連絡を入れる。全員に、『帰るのがちょい遅くなる。それと念のためにホロとカバリオだけ転移でこっち呼ぶから来てくれ』。と言うとティアはすぐに『分かった』と言うと俺は少しだけ微笑みながらすぐに転移門を開く。そしてそれを開けるとあっちの世界とこっちの世界を繋ぐためのゲートを作る。
「ホロ、カバリオ行けるか?」
「うん。大丈夫」
「えー兄ちゃん僕もっと寝て「動け」」
「はい」
こうして連絡を終えると少しだけあっちが心配になるが、俺は念のためゲートを壊し、楽園の園に連れて行くメンバーを決める。俺、ホロ、カバリオ、エヒナ。青龍たちはこっちの護衛用で残して起きたいが。
「朱雀来るか?」
「行きます!行かせてください!!」
よし。これで多分なんとかなるだろう。しかし、本当だったら朱雀も、エヒナも連れて行きたくわ無いが、今回はホロもいるし、カバリオもいる。確実な布陣だ。それに、俺も今回で試したいことがたくさんあるんだ。
「ネツァフ。座標だけ教えてくれ。後は兄貴の世界魔法と繋げて世界を移動する」
「それでは失礼」
ネツァフと手を握るとその世界のイメージがふわっと出て来る。空には大量の竜たちが飛んでいて、様々な竜だけがそこで暮らしていた。竜人はおらず、基本的に竜種だけ。そこには、飛竜から、成竜、水竜、古竜、竜王、竜帝、竜神までもが空を飛び、海を渡り、伸び伸びと生活をしている風景が見える。そして俺は座標となる地点を見つける。
「ああ。炎王竜か。あいつのとこなら飛べる」
準備が出来たので兄貴に連絡を取り、世界魔法を二人で処理すると、そのまま魔法陣式にして行くメンバーだけを乗せると後は四霊の三人とネナにここは任せた。そして行こうとすると。
「言っておきますが、あっちはもうかつて無い程地獄です。覚悟はありますか?」
「お前と同じで地獄を見た奴らバッカリだよ。このメンツは」
「...そう、でしたね。それでは急いで来てください」
そう言うとネツァフが一番初めに行くと、ホロやカバリオたちも続いて入って行く。そして、朱雀が入ろうとするとチラッとこっちを見て数秒固まる。なんだ?と思いつつすぐに入って行ったので特に気にしないことにした。それからエヒナが入ろうとすると直前で止まる。
「...地獄かー。前みたいなことにならないといいね」
「...ああ。そうだな。出来ればあんな光景は目にも入れたくない」
そう言うと二人は魔法陣の上に乗るとそのまま転移して行った。そこで残ったのは四霊のうちの三人と最古の吸血鬼が一人でだけという状況。気まずい雰囲気が流れると思うと。
「あの、ネナさんお久しぶりです」
「ん?ああ君たちね。僕の親友であるソラから色々頼まれているから早速取り掛かろうか」
そう言うとネナは心底楽しそうに微笑み。まるでこれから喰うような獣の目をしていた。




