4-13話 神剣イグニス
エヒナが怒った衝撃でこの水しかない空間にで雷がこの場を支配していた。しかもこの雷の性質が『あらゆるものを弾く』という特性で俺の強化系統の魔法も通じない程だった。
「エヒナ!少しペース落とせ!魔力が切れるぞ!」
「黙ってソラこいつは絶対倒す」
今のままだとかなり足手纏いだ。しかも今は雷魔法を撃つと逆にエヒナの雷に干渉して威力が半減どこから理を曲げているのに正してしまう。だが、海での戦闘となると使えるのは。
空間魔法、深淵魔法、海魔法、時間魔法、振動魔法、植物魔法。ぐらいか?だけどあの婆さんは俺に『勝つならエヒナがいる』と言っていた。それがどういう意味なのか分からないが戦いの中で見つけて行くしかないだろう。
竜になり、左右には幻想幻武で作った大剣二つと、背中にある腕には防御を捨てた槍を装備してある。幻想魔法が付与されているこの武器ならきっとエヒナの役に立つはずだ。
姿を変えすぐにエヒナの元に行くとそのままエヒナとの位置を空間魔法で入れ替えるとそのまま法神の部下に向かって行く。
「貴様の魔法など我らの権能を行使すれば容易いこと!」
「...だからどうした?」
「法の権能<一>」
法神の部下が俺にその白い杖で権能を行使すると俺の中にある魔法が使えなくなる感覚を覚える。だけど、それはあくまで前の俺だったらだ。
「乖離・法」
「は?なぜお前がその権能を!!」
「知らねえ。ただ俺が見つけただけだ」
そのまま幻想幻武で叩っ斬ると白い灰になって大半が海に沈む。そして意表を付いた状態でエヒナと交代する。
「真雷魔法・鳳来雷伝化」
エヒナが使う武器に白く、淡い光が凝縮されるのを感じるとそのままそれが最高点に差し掛かる瞬間に俺は空間魔法で法神の部下を囲い、さらに威力が上がる結界を中に生成することで貫通力を上げる。
「いっけー!!」
法神の部下が慌てて杖を使って権能を行使するのを横目に俺はそれを空間魔法と深淵魔法を使って深い闇に拘束する。そして深淵魔法で相手を喰らい尽くすとエヒナの攻撃が直撃する。
「やったのか」
「ちょ!それソラ!フラグ!」
俺がそう言うと深淵魔法から抜け出す法神の部下が一体だけいた。そいつは深淵にいる最強の王魔の一体のとこに送ったはずなのにどうやってこっちまで戻って来た?権能で戻って来られる程この魔法は容易くない。
「驚いているな。世界樹竜シェムハザ」
「ッ!お前まさか魔神の手先か?」
「あんな者と一緒にされては敵わん。私は別者だ」
ここでもう一体の魔神と出会うなんて全く予想してないぞ。しかももう一体はあり得ない、というかあり得てはいけないはずなのに。どうしてこいつはここにいる。しかも俺が全く見たことがない魔神なんて。
「そちらは幻獣かな。まあどちらでもいい」
それだけ言うと法神の部下の死体を持ち上げるとそのまま腕を上げるとそのまま俺に向かって投げてくる。それをすぐに回避しようとすると次の瞬間には目の前には魔神がいた。そして指をこっちに向かって当ててくるとその瞬間に衝撃波が背後に走る。
「悪いけど今回は戦いに来た訳ではない。これは勧誘だ」
「勧誘?わざわざ魔神様なんかが俺に?」
「お前だからだ」
どういうことだ俺だから勧誘しに来た?他の神獣たちじゃなくてどうして俺なんだ。何か目的があるはずだが流石魔神。精神操作魔法や乖離で魔神の能力を一部制限してもなお涼しい顔をしてやがる。本来なら『聖女』と『魔王』が存在していればこっちの世界に魔神が来ることはまずあり得ないし、それに今はティアや、ティアレイだっている。しかもあのアイラスだってきっと三人目の『聖女』で封印は確固たるものはずだろ?
しかも俺の魔法剣や送り込んだエレメンタルたちだって一切の反応が消えていない。だが、神剣の反応だけが一部感じ取れなかった。もしかしてこいつの正体は。
「ああその通り、俺は無を司る神。イグニスだ」
「悪いがあんたと俺が一緒に行くことは絶対に無い!」
「そうか、だが状況が違えば貴様はまたあの日と同じことを繰り返すだろう」
それだけ言うと手から神剣を出すとそのまま俺に向かってイグニスを向けて来る。一瞬身構えるとそのまま剣を振るう。そして目を開けるとそこにあったのは法神の部下の杖だった。それを見ているとエヒナが近づいて来るのが分かる。
「あなたが無の神イグニス」
「左様。だが困ったことに我はここから出ることが叶わん。しばらくお主たちと行動する」
「は?!冗談は顔だけにしてくれよ」
「貴様殺されたいか?この駄竜が」
お互いに『あぁ?』と睨み会いになるとそのまますぐに離れると剣を取り出す。そしてそのままソラが人型に戻るとその瞬間にイグニスが攻めに来る。それを見越したソラは竜の翼で海を操作すると移動速度を極端に下げる。それをイグニス自身の権能で無に還すとイグニスを握り直しソラと剣を合わせる。
「お前!今権能使っただろ!」
「そっちは海の水圧で我を殺そうとしただろう!」
「だってお前神じゃねえか!!」
そんなことを言いながら二人の剣戟は更にヒートアップする。お互いに剣士であるためか分からないがその後はお互いにまるでルールを理解したかのように剣でのみ勝負をしていた。その場では海にも関わらずソラとイグニスの剣から火の粉が飛び散り、偶に姿が見えなくなる時がある。そしてそれをただ私は見ることしか出来なかった。
「空の太刀・絶空」
「無の太刀・無双」
お互いの剣の実力はほぼ互角、魔法や権能を使えばおそらく死闘になるのは分かるがソラが持っている刀は切断力に勝っているが、威力は低い。しかし、イグニスは使用者によって思い描く武器となり、刃先や刀身の厚さを変えることが出来る。そしてそれはすぐに剣のやり合いとしてすぐに現れることになる。
「空の太刀・空魔円空」
「無の剣・無刹」
明らかにソラの方が不利になって行くのが分かった。ソラはなんでも出来る変わりに特定の物を極めた者や、類稀なる才能には基本的に勝ったことがなかった。それも神獣の中でかつて『最弱』と言われた程だった。
ソラは自分の手数を増やすためかもう一本刀を取り出す。すぐにソラお得意の色々な剣術を組み合わせた動きで立ち回るけどすぐに限界を迎える。
「...止めだ。このまま行ってもあの女のところで殺されるのが落ちだろうな」
「...そう、だな」
どうやら決着が着いた見たいで私はすぐにソラに駆け寄ろうとするけど今はとてもじゃないけど近寄ってはいけない。そんな気がした。刀を地面にぶら下げた状態から全く動かなくなっていた。
「こいつが本当にあれなのか?だが、以前よりも」
「イグニス、ソラは」
「こいつはダメだ。今あれを言ってもどうにもならん」
***
負けた。完封なきまでに負けた。以前よりも強くなったと思って、そして手数すら増やしたのに、どうしても勝てなかった。覚醒したはずなのにやっぱり弱い。俺は強くなりたいのに、この身体を上手く使いこなすことが出来ない。
「...チクショウ!!」
確かにこのままあいつのとこに行けば交渉する前に死ぬだろうな。だけど、今はあいつのクソったれの力を借りてでも倒さないといけない奴がいる。
「まあいい。とにかく戻るぞ駄竜」
「...分かった」
「...」
それから空たちは里に戻り、族長や里の重鎮のたちに話しを付けるとそのままこの世界から出るための海神の場所を教えてもらう。しかし、そいつが現れるのはまだらしくそれまではここにいるしかなかった。
その間俺は一人でこのただ広い海で思考を整理していた。俺には魔術や魔法を組み合わせた力がある。だけどあれを使うなら実践向きじゃない。時間魔法で思考速度を上げ、魔法で術式を広げる必要がある。
言わば魔術は魔法を模して、それを魔法陣として頭で構築して、さらにそれに文字や意味のある詠唱をすることでイメージを抱かせることが出来る。だけど、これのやり方は違う魔法で魔術を編むイメージに近い物だ。
自然本来の姿をその人自身に合わせた『詠唱』や『術式』を再構成する必要がある。そしてそこに『生きた』魔法と魔術が結びつく。
法神の部下を倒したことを報告すると俺は一人でこの里を泳いで回っていた。泳ぐというよりは海魔法と水魔法で出力を上げて進んでるだけなんだけどな。
「...難しい。本当に」
「なーにが?」
「エヒナ..」
色々考えごとをしていると後ろには笑顔のエヒナがいた。いつも通りの笑顔でそっと背中を抱きしめてくるのを感じながらも俺は思考を加速させる。エヒナを除いた俺自身の肉体と精神を限界まで強化して、時間魔法で自分のことについて多重演算と、それが導く未来を見ながら先のことを考える。
あの時見た回廊が見える。空が星々で覆い尽くされ、宇宙には流星が流れていた。そこで一つ一つの自分の能力と向き合って行く。時間はあまり残されていない。だけど、この先はきっと自分が強くないと何も守れない。そんな気がした。
『森羅万象』、『乖離』、『◾️◾️◾️』、『◾️◾️』、『◾️◾️』、『◾️』
もしも仮に俺の固有の能力がまだ発現していないならきっと俺はそれを見つけるべきなのだろう。そしてきっとそれを知ることはなぜか、怖かった。
思考と時間を元に戻すと俺はエヒナの手を掴むとそのまま背中に載せるとそのまま里の中に入る。そして中に入ると四霊たちと話すイグニスの姿があった。
「来たか駄竜」
「ああ。またせたな」
それだけ呟くとイグニスは興味を失ったように里の中を自由に歩いて来ると言うとそのまま離れて行った。
「空さん実は海神がいたことにはいたんですけど少々厄介でして」
「もしかして王魔と混ざったか?」
「いえ、王魔だけでなく、竜ともです」
王魔と海神と竜が混ざった奴となるとその力はあっちの世界なら間違いなくSランクに該当するだろうし、俺たちでも手を焼くレベルだ。だけど今回は四霊もいる、それに仮にも乖離を使えば一気に解体することだって出来る。だけど、ここでは上手くいかないだろう。
だがこれが仮に四霊ならどうだろうか。あいつらならきっと力を合わせればそれなりにいい結果になると思う。だが今回に限っては朱雀がかなり厳しいだろう。朱雀は火を使う霊獣だ。今回は海だし、それに海神は火に絶対的な防御がある。
今回の相手は3体が混ざってるとはいえ、どれも神獣に匹敵するレベルで油断はできない。核を壊されることが万が一でもあれば、復活は二度と叶わない。
「朱雀どうする来るか?」
「..行きたいです。正直。だけど、空さんや四霊の足を引っ張りたくない」
「..分かった。俺は青龍を起こして来るから玄武は白虎を迎えに行ってくれ」
「..御意」
***
空が一人で青龍を向かえに行っている間に玄武について行っていた。玄武はあんまり話さない性格だけど、この四人をちゃんとまとめてくれるリーダーみたいな存在だ。昔は『空、殿を尊敬している』とか言っていつも真似てた。でも、個性が強すぎる私たちを多分だけどまとめるのが無理だと思ったのかあまり干渉して来なくてなった。
理由は少し分かる気がする。私はいつも別のことを常に考えてるし、青龍はいつも寝てるか空を飛んでいる。白虎は興味がないことだと本当に一人でどこかに行ってしまう。
こんな三人をまとめようってのがどれだけ難しいのかは正直玄武しか分からないと思う。だから玄武はおそらくだけど、なるべく私たちを尊重するようなまとめ方になったんだと思う。白虎はまだ変なところに興味があるみたいだけど。
「玄武は今後どうしたい?」
「..分からぬ。だが、四霊と一緒であればそれでいい」
やっぱり玄武も大概だけど、口下手だし、表情が顔に出ないし、だけど真面目なのはきっとみんなが認めてる。
「白虎..帰るぞ」
「..空さんは?」
「青龍のところだ」
「分かった。ならおんぶして」
「分かった」
白虎がダルそうに体を起こすとそのまま玄武の甲羅の上に乗り、そのまま再び眠りに着こうとする。すると甲羅から植物が出てくると優しく白虎を突く。
「寝るな。すぐに出かけるぞ」
「分かったよ。全く。それで朱雀もいいわけ?」
「え?私?別にいいけど」
「朱雀...お主は空殿..の空間魔法で先に安全なところにおれ」
「はい?」
まとめるのが上手いとは言ったけどやっぱり人の感情までは読めないみたいね。だからって怒るわけじゃないけど、確かに火が使えないここだと私は戦力外だけど、安全域で一人待っとけは絶対嫌。
「空殿から..伝言だ。『朱雀は一度俺に仲間のところに向かって欲しい』だそうだ」
「...仲間?他の神獣らしい」
「..分かった。だけど白虎を頼むわよ」
「朱雀に言われたくないし、まるで空さん取られるみたいな顔しちゃって」
「?!だ、誰がそんなことを!」
そういうと二人は口を開けて『本気で言ってるのか?』みたいな顔を見せる。しかも『正直か?』みたいななんだか暖かい目線に変わって行くと私はなぜかここから猛烈にに離れたいと思った。
「だって、あな、グッヘッ「やめろ」」
「何すんのよ!玄武!あんただって分かってるでしょ!」
「..黙秘だ」
「ちょっと?!」
それだけ言うと玄武は白虎を霊法と掴むとそのままグルグルと回転して行ってその場を離れて行った。そして私だけが残った。
「..なんでバレてるの?」
身体の炎が強く燃えるのを感じながらどうしてか考えているとどこからか空間魔法の気配がした。そしてそれを感知した時にはそこには銀色の鎌を持った黒い外套を被った何かがいた。




