4ー10 メルドリエの迷宮
俺たちはあの森を抜け、道中の王魔を倒しながら2日目になった。空の王魔はかつての竜や人々がアンデット化したものもあり、進むのは難航じていた。
四霊と進んではいるがそう簡単にはいかない。他の王魔だけでもキツいのにこの空の辺りははぐれ王魔が出ることが多い地域で魔力の消費量が今までで一番すごい。
特に鳥だと思って近づくと幻影魔法で姿を変えてるだけで全然距離感が違うく見えたり、急に下から狙撃されるわでちっとも進まねえ。
「このままだと埒あかねえ」
「迷宮前まで転移出来るか分からねえけどやるか」
「え?!空さん。それは」
「別にいいんじゃない?だって空さん強いし」
「言質とったからな」
俺は全員を一度結界で囲むとそのまま補助魔法で更に結界の強化を施し、メルドリエの迷宮前まで行くことになった。
転移魔法で結界と四霊と俺自身を転移させる。少し遠いし、魔力が濃すぎるので少し時間がかかる。ここで邪魔されると面倒なので魔法剣や簡単な魔法で王魔を牽制する。
「空さん。僕ら迷宮入れますかね?」
「メルドリエの迷宮はデカいから大丈夫だ」
まあ。それはとにかくとして、この場から出ないと色々面倒くさいことになるからな。
転移座標をしっかりとイメージする感覚でこの結界のまま転移するイメージを保つ。
「玄武。結界の補強頼めるか?」
「...了解だ。空殿」
「よし。それじゃあ今度は3人でこの結界を守れ。あの時と同じようにチームワークで戦え」
3人は首を縦に振ると結界の中から扱える霊法で次々と来る王魔を倒しつつ、結界を壊されないように朱雀や、青龍、白虎が王魔を薙ぎ倒していた。
その間玄武と俺は結界の維持とメルドリエの迷宮を見つけるのに時間をかけていた。
ここの大地は一般人が入ったらすぐに魔力が欠乏して死に至るレベルで魔力が消費される場所で、メルドリエの迷宮を見つけないとそのうちガス欠になる。
兄貴の世界魔法が使えたらいんだが、あれはちょっと他と一線離れた別の分類だから俺には扱えない。
あれがあれば無駄な魔力消費を抑えることが出来るんだが。
「玄武。『大地の力』でメルドリエの迷宮を見つけられないか?」
「...分かった。我。やってみよう」
「玄華・大地深潭」
玄武が『大地の力』でメルドリエの迷宮を探してくれている間に俺は幻想魔法でもう1人の俺を作り出すとそのまま幻想幻武を持たせた状態で結界の外で戦わせる。
幻想なので実態はないが、攻撃する時だけ実体化して、相手の攻撃を喰らう。
それ以外は基本的にダメージを喰らわない。
王魔の相手はあっちに任せておいて今は迷宮の場所を探す。
メルドリエの迷宮はこのあそことの境界線より向こう側からまるで蛇みたいに移動する移動型の迷宮になっているから見つけるのが非常に難しい。
玄武の方を向いて見ると玄武は甲羅から顔を出すとそのまま地面に向かって黒い玉を打ち出す。
すると地面にヒビが入りそのまま地面に深く潜っていく。
「見つけた。空殿。我と思考を共有してくださえ」
「わかった。お前たちも後は俺の作った幻想がここを受け持ってくれる。だからこっちに寄ってこい」
「分かりました!」
俺は仲間を更に強化した結界内に入れるとそのまま玄武と思考を共有してメルドリエの迷宮へ向かう。
***
一方その頃竜の里では。
「ああ。わかった。空も気をつけてな」
はぁーどうして俺と空は双子の兄弟のはずなのにどうしてこんなにも性格が違うのだろうか。
こんなことぐらい前から分かっているつもりとはいえ、正直へこむ。
それに、あの迷宮に行くってことはおそらくあいつに会いに行ってることは想像できる。だけど正直なんでこの時期なのかが分からない。
今は俺以外のみんなもいるからいいが、空。お前一体どういうつもりだ。
「あの。守さん今お時間大丈夫ですか?」
「ああ。うん。大丈夫だよ」
ここは今城の中にある図書館でそこで久しぶりに1人になれたのでゆっくりしていると空の彼女であるティアさんが来た。
そういえば、空とティアの出会いの話とか全く聞いたことがなかったかもしれない。それに、あの空が惚れた子なんだどんな子か知りたいしね。
「あの。空って昔はどんな感じだったんですか?」
「うーん。今はまだましだけど、昔は全然頼ってくれなくてよくみんなと任務の時でも喧嘩になってたよ」
「分かります。最初会った時も神剣遣いと戦った時空が1人で戦ってもう少しで危なかったです」
うん。間違いない僕の弟だ。空ならたとえ器が違うくてもそれをやっている。毎回人がやらないようなことをするのが好きだった空にこんな可愛い彼女さんができるなんて兄として凄く嬉しい。
僕も空を見習わないといけないといつも思うんだけど、僕にはあんな大胆なことはできない。
「他には何かありませんか!」
「すごい必死だけどどうしたの」
「いや。そのもう時期バレンタインですし」
「あー。そんな文化まだ残ってたんだ」
バレンタインか。まだあの時代の文化が残ってるのは驚きだったけど、正直あの頃はチョコとか食べれなかったから味すら知らないんだけどね。
それから空のことをティアさんに教えながら図書館で過ごしていると急に図書館の壁を貫通して一本の魔法剣が飛んでくる。
だけど僕は慌てずその魔法剣を受け取るとその魔法剣が動物の姿に変わる。
『兄貴。俺3日ぐらい別件でいねえからこの魔法獣置いて行くから何かあったら言ってくれ』
「相変わらずあいつ」
「これが魔法で出来た生き物?」
ティアさんが興味深々なのか色々触りまくって魔法獣を見ていた。
こんな応用ができるのは絶対空だから警戒する必要はないんだけど、今回こんな協力なものを送ってきたってことはおそらく警戒度を上げておけっていうことだから。
念のために世界禁忌目録で確認しておく。目を瞑ってそこに見えるのは膨大な量の情報で、今度は世界命令を使って情報を整理していく。
丸い円盤のようなものに触れ、必要な情報呑みを取り出す。
すると情報が頭の中に入ってくるとそのままそれがどこから来ているのか調べる。
地図がその空間に現れると空はどうやら『メルドリエの迷宮』に行って、どうやら霊獣たちと一緒らしい。
あの4人復活をしたのならよかった。でも誰が結界を破壊したんだ。それに時期があまりにも良すぎる気が。
「でも。まあ大丈夫か」
「何がです?」
「こっちの話」
僕はその後背後に隠れていたアイラスさんや弟たちと一緒に食事を楽しんでいた。
「空。ちゃんと帰ってこいよ」
***
「ハァクシュン!寒くねえのにな」
「空さん火入りますか?」
「いや、お前んの炎消えないから嫌だ」
全くもって迷宮に入ったのにこんな感じじゃ先が思いやられるわ。まあ、そんなこと今から関係ないぐらい忙しくなるんだけどさ!!
探知魔法で辺りの魔物や王魔を探してや倒して進んで行くと、ようやく骨のある奴が来た。
開けた場所が出来るとそこから壁を捻り曲げ出てきたのはミノタウロスだった。それもただのミノタウロスじゃない。斧はこの時代でいう幻想級に武器と対になる魔神級と呼ばれる武器だ。
甲高く、うるさい奇声を発しながらこちらに近づいてくる。戦闘体制に入る霊獣たちを横目に俺は人型になる。
ミノタウロスがこちらに向かって風魔法の暴風並みの威力の斬撃が飛んでくる。
「空の太刀・絶景」
その攻撃を刀で切り裂くとそのまま転移魔法で背後に回り、一瞬で距離を詰める。光魔法で目眩し、光魔法で拘束する。刀を鞘を収めるとミノタウロスが倒れる。
「流石です空さん!」
「おぉ。ありがとうな」
メルドリエの迷宮の王魔ってこんなにも弱かったか?それにこの先はすぐにボス部屋で守りの王魔すらいないなんておかしい。もしかして先に入った奴がいるのか?
その後空たちは着々と迷宮を攻略して行くとついにメルドリエの迷宮の最後のボス部屋に到達していた。
「ここからは正直俺だけの力じゃ難しい。霊獣のみんな手伝ってくれ」
「もちろんです!」
「まー頑張りますよ」
「...我。微力ながら力を出そう」
「頑張ります!」
入る前に大体の戦術を決めておいた。前衛は俺と玄武で、後衛は青龍と白虎で、援護には朱雀に入ってもらうつもりだ。この布陣だったら強敵が来たとしてもすぐに対応できる。
この迷宮に来るまでの違和感は少しあるがこの先には必ず王魔の中でも一際強い奴がいるはずだ。気を引き締めていかねえと絶対足下を掬われる。
俺が竜の状態でも入れるような大きな扉を開ける。するとそこからは大量の魔力の気配を感じ取る。すぐさま全員を転移魔法でその攻撃を避ける。すると転移する寸前に受けた攻撃が目の前に現れる。
「玄華・円転黄河」
玄武がすぐに隣にいてくれたお陰で防御力ならあのカバリオとタメを貼る絶対防御が目の前に現れる。メルドリエの迷宮産の迷宮の壁を触媒とした術で一気に防御を固めそれを完全に防ぎきった。
それを横目に攻撃してきた対象を見るとそこには今まで見たことがない王魔だった。ガーゴイルのような容姿だが違うところが挙げられるなら明らかにデカ過ぎる。
ガーゴイルにしては身体のあちこちから紫色の何か魔石のようなものが体表まで出てきいて、それがその周囲の空間を無差別に切り裂いているのが見えた。
あんな王魔見たことがない。空間を存在しているだけで無差別に切り裂くなんて。
「一旦距離を取れ!いいかあいつに近づかずに倒すぞ!!」
「水天・青波」
「朱炎・朱炎」
「天北・宝雷」
三人の遠距離攻撃が繰り出されるとすぐにその王魔はニコリと笑うと次の瞬間に腕が変形し、その瞬間に空間ごと斬り霊術を一瞬にして塵に帰す。
あの空間属性の魔力障壁なのかあいつ自体の特性なのか分からないがあれをなんとかしないと隙を着かない以外に接近戦に持って行くことができねえ。
玄武のカウンターを狙ってもいいがそれをすると今度はジリ貧になる他ない。
玄武は次元魔法に対する耐性を持ってねえ。受け身になった時点でこっちの負けだ。
「重力・空間・結界・混合魔法対次元拘束結界」
結界で作った柱を目の前の王魔の辺りに設置すると俺はそのまま結界を発動する。この結界内なら次元魔法の攻撃を重力魔法で一気に切断力を下げ、さらに自動で発動する次元を切り裂く攻撃を防ぐための障壁も出せる。
これでまともな戦いができるはずだ。それにここでなら朱雀の本領が発揮できるしな。
「空さん。これ僕にやれって言ってますよね」
「援護は任せろ!!」
「人使いアラー」
「朱雀中心で攻める。朱雀は思いっきりその力を振るってくれ」
朱雀がわかったという表情をすると俺たちは朱雀が攻撃に集中できるようにするために、玄武を戦闘に青龍と俺が援護と隙を見つけ、さらに弱点を見つけなければならない。
最大化してないとはいえ、ここまで大きい相手であれをやらたら今の人間族じゃ勝てねえぞ。まあこんな敵がワンサカ出ても困るんだが。
一応幻想幻武を取り出し、背中の腕に持たせるとそのまま青龍と同じタイミングで攻撃を開始する。
「空の太刀・巨刀月下」
真風魔法と竜の翼を使った軌道力でそのまま太刀を振るう。一瞬だけ次元をずらされるがすぐに結界の効果で元に戻り、一気に旋回して身体を捻る。
腕を狙ったつもりが思ったよりも素早い動きで少しかすっただけだった。
避けた後に青龍の攻撃が来ると今度は背中にある紫色の魔石のようなものが光ると一瞬で目が見えなくなる。
その瞬間に俺と青龍は自分の貼った結界に叩きつけられる。まさかあのデカい図体の癖して絡め手を使うのかよ。戦いづらすぎてむかつくわ。
身体はなんともないが青龍が完全に怠そうにしていることも踏まえると早く終わらせたいがここじゃ少し狭すぎる。結界も完璧じゃないからな。
それに仮に青龍がキレる前にやらないとこいつよりも厄介なことになる。
そうなったらあいつと会うのも叶わなくなる。
「朱雀まだいけないか?」
「もう少しでチャージ終わります。後3分稼いでください」
「分かった。玄武防御無視攻撃できるか」
「無論」
俺と玄武の魔法と霊術を合わせた技で王魔に対する絶大な特攻ダメージが与えられる代物になっている。ただこれにはリスクもある。この攻撃をする間に必ずあいつは次元魔法で何か仕掛けてくるはず。そうなったらもう一度やり直すタイミングはなくなる。
「水天・青の雫」
「ちょ!青龍?!」
いきなり最大火力の霊術を使うとそのまま青龍が持っている宝玉から一滴の透明な雫が落ちる。するとその瞬間に一瞬で王魔が防御態勢を取り、そのまま逃げようとした瞬間その王魔の身体の一部が弾け飛ぶ。
「いま!して!」
「水天・星怒滅」
空間が一瞬歪む瞬間を狙い中に入ろうとする王魔を引き止めるために星の力を利用した技で動きを完全に止める。その後に浮いている王魔に地面や天井、あらゆる角度からミスリルよりも鋭く切れる大量の星の双牙が王魔を喰らう。
王魔をがっしりとそれを噛むとそのまま身体の一部、左半身を完全に食いちぎるとそのまま拘束をさらに強める。次元魔法が使えないようにさっきの霊術の効果で魔力を練りにくくしてあるからこれで。
「できました!」
「わかった。撃てー!!!」
「朱炎・凰火朱滅」
真なる炎が抵抗する王魔を焼いていくとそのまま相手の空間と時間を焼き、消滅させていく。それを見ながらただなすすべも無く無残に消えることがない炎に焼き付くされていく。
危なかった。正直超級レベルの魔法が使われる前に対処できてよかった。いくら俺でもある特定の属性を極めた専門の奴には叶わないからな。
「勝った!!」
「ああ。みんなよくやってくれた。朱雀も玄武も青龍も白虎もよくやってくれた」
「私だけ何もしてない」
「白虎は援護してくれたって」
「うん。怠い僕を引き上げてくれた」
白虎は今回の戦いでは一番先頭に入りづらかっただろうな。雷の霊術が得意だったから正直この戦いでは弱点が多かった。雷では次元を破ることはできない。それに朱雀の攻撃はあの不死鳥と同じでこの世に2つしか無い力だからしょうがない。
焼き尽くされていくのを確認した後はそのまま全員に光魔法で回復を施すとそのままメルドリエの迷宮の最奥に着く。
ここに来た理由は2つ。一つ目はここからしかいけない隔離された領域に行かなければならなかったから。もう一つはここに置いてあるとある物を回収するため。
扉がわざわざ開けてあるということは、やはり遅かったか。扉を開けるとそこには本来あるはずだったものが存在していなかった。
「自然剣トラヴィスがねえ」
あの剣はここの管理代わりの剣でこのメルドリエの迷宮のダンジョンの核だったのに一体誰が。それにそれならとっくにメルドリエの迷宮が動きを停止してもいいのでは。
「マルクトたちか」
確かにあいつらなら俺たちとは違って、力を制御する必要がないし、それに直接兄貴と同じ魔法だって使える。あの剣を使って何をするかなんて一発で分かる。おそらくだがこのタイミングとなると王国を襲う気がする。
根拠はまず俺が数日帰れないこと、今はあまりにも守るべきものが多すぎて逆に俺たちは戦いにくいということだった。
だが、仮にこの迷宮が機能を完全に停止すれば地脈の流れが滞ってあっさりと死の大地と化す。
「何考えてやがる。あいつら」
とにかくここはもうダメだ。すぐにでも転移門のところに行かねえと。
更に奥にある部屋を開けるとそのまま転移門を発見し、動いていない前提で魔力を流し込む。
「ようこそ。ここからはヴァニカル海へと参りますので水魔法か、風魔法による呼吸をしてください」
「アナウンス?ここ絶対」
「転移します。...3...2..1...0」
すると突然転移門から声が聞こえるとその瞬間に転移門の床が光りはじめるとその瞬間転移が始まり俺たちは転移させられた。




