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【BL】記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た  作者: キトー


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13/22

13.今日の占い

 

 代わり映えのしない平日の朝が訪れた。

 テレビは爽やかな笑顔のニュースキャスターが朝の挨拶を告げる。


「おはよう御座います秋さん」


「ん、はよ……」


 夏はニュースキャスターに負けず劣らずの爽やかな笑顔で、あくびをしながら起きてきた秋の頬にキスをする。

 そんな夏の頭を撫でて、秋は洗面所で顔を洗った。

 さっぱりした秋がリビングに戻ればすでに朝食が用意されており、味噌汁の優しい香りが秋を包む。

 炊きたてのご飯に目玉焼き、味噌汁は熱すぎない温度に調節されていた。


「おー、目玉焼きだ」


「秋さん毎日喜んでくれますね」


 嬉しそうに手を合わせる秋を嬉しそうに見る夏。ソファーに並び、共にいただきますをする。

 ハムと一緒に焼かれた目玉焼きに箸を入れると黄身がとろりと垂れていく。その光景が秋は好きだった。


「夏って相変わらず卵料理上手いよなー」


「目玉焼きでそう言っていただけるのは光栄です」


 美味しい朝ごはんを食べている最中、ふと天気予報が気になり秋はテレビに目を向ける。

 口に付いていたらしいご飯粒を夏から舐め取られながら、今日はちょっと寒そうだから上着を着ていこうと決めた。


「夏も上着持っていけよ」


 朝食を食べ終えて夏に告げながら横を向けば、穏やかに笑う夏とばっちり目が合って、あまりにも嬉しそうな様子に困惑する。


「……お前なんでそんな嬉しそうなの?」


「もちろん嬉しいからです」


「何が?」


 首を傾げた秋を、夏はそっと肩を抱いて気引き寄せた。


「誰よりも早くおはようと言ってもらえて、作ったご飯を喜んでもらえて、隣で美味しそうに食べてもらえて、今日は寒いからって心配までしてもらえたんです」


 夏の唇が更に弧を描いて頬が染まる。


「好きな人からそんな事をされたら嬉しいに決まってます」


「あ、そぉ……」


 夏に釣られるように秋の頬も色づき、なんだか気恥ずかしくなった秋はそっぽを向く。


「好きです秋さん」


「分かったから、言わんで良いから」


 居心地が悪そうに身じろぐ秋を夏は更に引き寄せる。

 ハグもキスも膝枕も口についたご飯粒を舐め取られてもスルーするくせに、好きの言葉には戸惑うのが秋である。

 妙な気恥ずかしさを誤魔化す為にテレビを見るふりをすると、可愛らしいイラストと共に若い女性のアナウンサーの声が予期せぬことを告げる。


『今日の最下位は、ごめんなさ〜い、天秤座のアナタでーす』


「んげ……」


 つけていたテレビの天気予報はいつの間にか占いに変わっており、不吉な占い結果をテレビは楽しそうに説明しだした。


『天秤座の人は良くない出合いがありそうな予感! 予定に無いお誘いは出来るだけ断って。恋愛面でも危機が訪れる予感! 喧嘩をしたらアナタから謝ったほうが良さそうです』


「……」


 恋愛面はともかく良くない出合いは面倒くさそうだ。良し今日は学校とバイト以外はまっすぐ帰ろう。

 そう誓った秋に、テレビの占いは余計な言葉を続けてしまった。


『ラッキーアイテムはブレスレットでーす。大切な人とお揃いにしたらさらに運気がアップ! ぜひ恋人とお揃いで腕に忍ばせて運気と恋愛運をアップさせてみてくださいね!』


「ねぇよブレスレットなんて」


「隠しナイフ型のブレスレットならありますが」


「物騒だなお前!」


「ちゃんとお揃いであります」


「しねぇよ」


「しかし……」


「しなくていい」


「でも……」


「せんでええっちゅーねん」


 いちいち占いごときに振り回されてたまるかと、夏の話を遮ってそっとテレビの電源を切った。

 明日から占いは見ないでおこう。夏が面倒だ。

 

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