ニートと雪 後編
「お兄様、みてみて!あ、ちめたい!」
妹は雪を人かき手で集め、空高く撒き散らした。
「お兄様も触ってみて!」
「ああ、そうだな。」
そう言われるがままに、雪をひとつまみ掴んだ。
それは忘れもしない彼女の死体と同じくらい冷たかった。
いや、もしくはそれ以下かもしれない。
1年前も今日のような白銀の世界が街中を覆っていた。当時、大学4年生で彼女がいた。彼女とは大学の同じサークルで付き合っていて、卒業後は同棲も視野に入れた付き合いだった。
彼女はとても明るく、俺みたいな捻くれ者とは打って変わっての別次元の存在だった--------
と、目が覚めると少し寝汗をかいていた。
コツン、コツン、階段が上がってくる音がする。
「入るわよ、あなたどうしたの?宇宙の境界線みたいな微妙な表情。」
「ああ、少し嫌な夢を見たんだよ。」
「あら、どんな夢?」
「君がいなくなる夢さ。俗に言う金縛りってやつ。」
「あら、そう。」
といいながら、俺に近づいてくると、薄い口紅が着いた唇を頬に当たってるか、当たってないかの絶妙なテクで掠めた。
「私はここにいるわよ。」
と笑いながら彼女は返答した。
「ついでに就活頑張ってね♡」
と振り向きざまのその彼女の表情は唯一無二の表情だった。
「あー、このままニートで人生終えてぇ…」
そんなことを思う反面、ニートの現実逃避なんて半日でもいいかなとも思う、マイナス5度の朝だった。
その時砂時計がゆっくりゆっくりと止まることをしらいかのごとく--------