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生徒会長

「そういえば生徒会とかって実際業務とか何するんだ?」

「えー…何って、強いて言うなら会議とか……かなぁ」


朝の電車の中で美鈴と雑談を交わす。

最近生徒会に入った、との事なので俺なりに生徒会について考えてみたんだが……



改めて思うと、俺は生徒会が何をやっているか知らない。

フィクションの世界での生徒会は学校の中で巨大な権力を持ってたりするイメージがあるが

実際の活動内容はどんなものだろう。と思い聞いてみたがパッとしない返答だ。


美鈴は周りの人間にぶつからないように気を配りながら顎に手を当てて考えている。

どうも歯切れがよくない。

少し面倒くさい聞き方だったかもしれないな。



「じゃあ、楽しいか?」

一呼吸入れて今度は比較的答えやすい質問をする。

しかし、これはこれで安直すぎると言うか捻りがないんじゃないかと我ながら思う。



「……他も業務とか淡々とやるだけだし、別に楽しいかと言われると……あぁ、御子柴先輩はちょっと面白いかな」


「…生徒会長か」




御子柴 優香(みこしば ゆうか)、二年生で今期のうちの学校の生徒会長だ。

肩まで掛かる長い黒髪、整った目鼻立ち。よく通る透き通った声。

絵になる、という言葉がまさにぴったりと言える清楚そうな人である。

それが俺の……ていうか大体の人間の第一印象だった。


それこそ男子達なんかはその容姿だけであの人に投票する!なんて言い出す奴もちらほらいて……

そんな訳で迎えた生徒会選挙の当日。

正直俺は副生徒会長に立候補した美鈴の演説くらいにしか興味がなかったためさして他の人間のは話半分程度にしか聞いていなかったが……



御子柴先輩の演説は俺を含め、瞬く間に学校の人間たちの視線を奪った。





スマホの通信制限に悩む生徒のために高校にWi-Fiを導入する。

睡眠時間の定期確保のために授業の一環として正式に休息をとれる時間を作ることを計画している。

校内の学食や購買の品質の向上。



終いには水道からジュースが出るようにしたいなどとのたまう。愛媛じゃねぇんだぞ。



あまりにも荒唐無稽で、まるで小学生が考えたような現実離れした計画。

それを全く恥じる様子も見せず、堂々と彼女は言い放ったのだ。




当然そんな計画に賛同する人間がいる筈も……





めちゃくちゃ居た。ていうか体育館は死ぬほど盛り上がった。



確かに現実離れした計画だが、もしそれが叶ったらどうなるなどと考えるまでもないだろう。



最高だ。少なくとも何一つこちら側にデメリットはない。



男女関わらず生徒たちは大盛り上がり。先生たちは呆れたように苦笑いを浮かべる。




結果圧倒的な大差で生徒会長まで上り詰めた。




思い返してみると恐ろしい人だ。同時に凄い人でもある。






「それこそ、誠くんが入ってくれたら退屈しなかったのになぁ…」

笑みを浮かべながら美鈴は俺に詰め寄る。

それに対して俺も半笑いで言葉を返す。

「全校生徒の前で発表なんかが俺に出来るかよ」

美鈴は頬を膨らませ、残念そうな顔をする。

「だよねー応援演説頼もうと思ってたのに……」

「ははっ、ご期待に沿えず申し訳ない」




先週の美鈴呼びの一件以来、俺たちの間にあった曖昧な距離感は消えてくれた。

そのおかげで今はこうして、お互い気兼ねなく軽口を叩き合える仲に戻れたのだ。




まぁそれはすなわち美鈴の愛による攻めが増えた、ということでもあるが……所詮この程度のものはジャブと言って差し支えない。

一々そんな一言に踊らされるなんてみっともない話。俺も少しは耐性が付いて来ているようだ。



ちなみにあの大好きの囁きは無警戒の顎にアッパー食らうぐらいの衝撃である。当然耐えられる筈もない。



そして今後いつあのような不意打ちが来るか俺は常に警戒していなければならないのだ。

だがさすがに美鈴と言えどもそう何度もあのレベルの発言はしないだろう。






と言っても、次の重い一撃はそう遠くないうちに来るのだが……



この時の俺にそんなことを知る由は微塵もないのであった。



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