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羨ましいよ

本当にお待たせしました……!

「……挑発のつもりですか?御子柴先輩」


好きだから。その言葉に対して猛烈な拒否反応を示す美鈴。

その場で立ち上がり、今でも会長に掴みかかりそうな勢いだ。


「ちょ、落ち着けって!」

慌てて肩を掴んで俺は美鈴を諫めようとする。

いくら人目が無い場所とは言え学校で喧嘩はマズいだろう。

挑発だと理解しているのなら、一回抑えてくれ……!


そう念じていると、会長が俺を見て至極楽しそうににやけている事に気付く。


「ぅぐ……!」

その顔を見て俺もたちまち胸の奥から怒りが込みあがってくる。

最も美鈴の様に手を出したりはしないが……それでもこの反応はさすがに腹が立つ。

何処まで言ってもこの人の思うつぼなのだろうか。



が、俺たちはすぐに心境を変える事になる。


次の会長の一言によって。


「羨ましいよ。本当に」


「……あ?」

「……え?」


これまでの流れから予想だにしていなかった一言。

俺と美鈴は揃って呆気に取られる。


会長はただひたすらに呆然と上の方を眺めながら、ひらひらと右手で空を仰いでいた。

まるで何かを掴もうとするかのように。


「何かが一つでも食い違っていれば、多分私がそこに居れた筈なんだ」。

「…えっと、そこって……?」


言葉の意味を問うと先輩は右手を元の位置に戻して緩やかに俺たちを指差す。

思わず後ずさりをしてしまいそうになった。


ビビってはいるが何となく言いたいことは分からないでもない。



つまり……俺と入れ替われればって事なのか?

「私を押しのけて誠くんの隣に居座る気ですか?」


一瞬隣を見てオイ、と突っ込みそうになる。まぁ本人は至って真面目に言ってるつもりだろうが。

また俺と美鈴とで推論が食い違う。


「あの、聞いてます?」

何故か会長は声に出した美鈴の質問の方には返答を寄こさない。

視線は依然として逸らしたままだ。

その変貌っぷりが、これまでとはまた違った不気味さを醸し出す。


「本当に悔しくて悔しくて悔しくてさ。でも……でもどうしようもないんだよ?」


いつもの落ち着き払った様子とは一転して、たどたどしく早口になる会長。

何かが切れたようにひたすら息を吸う事も忘れて話し続ける。


どうすることもできず終始俺たちは圧倒されていた。


「だって私が出会った時にもう二人は婚約済み……ははっ!滑稽な話だよね」

「あの、御子柴せ……」

「最初から私の人生に正解やチャンスなんて概念すら無かったんだよ」


さすがにフォローをしようとしたのか、美鈴が声を掛けようとするがそれを遮ってでも話を続ける。


美鈴は意味が分からないと言うように会長の顔を奇妙気にじっと見つめていた。


いや……それは俺もだ。

何だ?何が起こっている?彼女は何をしようとしている?


分からない。急に癇癪を起こし始めた。

これまで一貫していた姿勢が、押して倒れていくドミノの様にじわじわと崩れているのだ。


「ただ決められた筋書きを横から眺めて、惨めったらしく指を咥えながら羨むだけ……」


今までの挑発は、具体的な狙いは分からないが何か意図があったのが分かる。

俺たちを極限まで苛立たせた後に、本命の行動に移そうとしていたのだと。


だが今はまるで違う。言ってしまえば真逆なんだ。


そこに意図や狙いなんて物はない。

むしろ今まで積み上げてきたそれらを否定するかのような物言いだ。


虚を貫き俺たちを煙に巻いていた会長が、打って変わって純粋な感情をぶちまけてくる。

それも不満や諦観ばかり。

混乱しない方がどうかしているだろう。



「私は……君たちの恋愛物語の脇役に過ぎなかったんだ」

掠れた声で言う会長の頬には、一筋の涙が伝っていた。

寝取られ、もう遅い……完全に会長視点の話ですね

でもこういうのって最近はbssとも言うんでしたっけ?


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