表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/45

何故知っている?

昼休み、用のない日は美鈴と弁当を食べる。


意外と知られていない中庭の木陰、ここなら人の目を気にしないで気軽に食事が出来るのだ。



ちなみによくある展開だし屋上で食えば良くね?って思うかもしれないがそれは違う。

屋上が開いている学校なんて大抵はフィクション特有の奴だ。

基本的にどこも屋上は閉まっている。確かに屋上で風に当たりながら飯を食うのもオツだろうが……




今日は情報収集も終え別行動をする必要もないので二人で昼食だ。

そしてに誰もいない状況、故に現状の相談がじっくりできると思っていた。




思っていたのだが……




「いや~もうテストまで一週間切っちゃったね~生島くんは予習は万全かな?」


「えっと……まぁ……はい」


「あ!桜のそのグラタン冷凍の奴だ!意外だな~いつも弁当は全部手作りなのに」


「……」



どうしてこうなった。




どうしても何も強引に会長が割り込んで来たってだけだが。

しかし問題はそこじゃない。いや強引に割り込む事も問題だが。



何で平然とこの人は俺たちに話しかけてきてるんだ?


今朝のストーカー行為も充分にアウトだが、百歩譲ってそれは飲み込むとしよう。


接触?え?何で?


百歩譲って見られることはあっても干渉される想定は微塵もしていなかった。



偵察ならまだ分かる。

警戒度合いを確かめるために様子を伺うっていう行動だろう?

それでも昨日の一件があって尚早々にやるのは理解しかねるが……

まあ承服するとしようじゃないか。




どんな精神状態で今俺たちに話しかけてんだこの人は。



ていうか今の会話でおかしい所は俺でも分かったぞ。

グラタンが冷凍?ああそれはそうだ。

昨日美鈴はうちに泊まったからな。母が二人分の弁当を作ってくれたのだ。


基本的にうちの弁当は残り物と冷凍食品の詰め合わせである。

今日は俺が焼いた卵焼きとウインナーも入ってるが。



で、いつも弁当は全部手作り?


何でそんな事までこの人が知っているって言うんだ。



だって、今まで一度も昼飯一緒に食ったことないんだろ?

十何回か誘われたけど美鈴は一度たりともOKしなかったんだろ?




俺たちの関係、なら注意深く観察してれば見えてきてしまうかもしれない。

現に浅野にもバレそうになった訳だし。


ただこの人が知っていることはそんな域を超えている。


最早完全プライベートのレベルだ。



何故どうしてどこまでは言わない。考えても無駄だ。


俺はもう余計なボロを出さないように適当に相槌を打つだけの人間になる。


どさくさに紛れてとんでもない言葉にはい、と言わないようにだけ気を付けておこう。


美鈴はさっきから一言も発さない。


無言で、何言ってんだこいつといった視線を会長に向けている。


完全に同感だ。


まぁ、一応完全に無言になったらそれはそれで面倒くさい空気になりそうなので一応俺は喋っとく。


とはいえ当然だが空気はお通夜かよってレベルに暗い。


それが気に入らなさそうに会長はぼやく。


「何だよ二人共急に静かになって……昨日はあんなに話してくれたのにさ」


もう一回言っていいかな?

どんな精神状態なんだこの人は。


当然俺たち二人は反応を示さず黙々と飯を食べる。

正直逃げたい……が逃げられる場所などどこにもない。


ただ、少なくともこの人の一貫した部分としては俺たちをおちょくっている点だ。

当然反応すれば付け上がって勢いを増す。



要は真面目に取り合わなければいいだけの話、親戚のめんどくさい3歳児とか相手にする時と同じ。



だから俺は無反応を貫く。

飽きるまで、無意味だと気付くまで。




しかし、会長の次の一言で俺の姿勢は無様なほどに一瞬で砕かれる。




「……冷たいな。せっかく浅野ちゃんの件じゃ助けてあげたってのに」




「そうで…………あ?」





呆気に取られる俺を見る会長は、心底楽しそうな顔をしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ