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ストーカー

俺と美鈴は平静を装って学校まで15分ほどの道を歩く。

装って、という言い方から分かるように少なくとも俺は冷静にはいられていない。



俺たちの30m程後方にて駅から延々とついてくる人物。



黒縁の眼鏡をかけて、頭には紺のニット帽を被っている。

茶色のトレンチコートを着ているのは制服を隠す為だろうか。

そして口元にはマフラー……もう冬だし服装自体に違和感はない。




一見何て事のないファッションのようにも見えるが……露骨に顔が見えづらい格好だ。


サングラスにマスクとか言う典型的アレな風貌で来られたらそれはそれで怖いが。



ただ、それでも確信を持って言える。

確かに雰囲気は変わるが、それでも全体的な印象というか……風格は消えない。

昨日あれだけ目に焼き付かされたんだ。少しの変装くらいで忘れてたまるか。



間違いなく生徒会長、御子柴優香だ。




何考えてんだあの人は。

昨日から俺の脳は最早理解を拒否するレベルにまで到達しそうだ。



言い訳をさせてくれ。別に覚悟をしていなかった訳じゃないんだ。

違和感は俺自身感じていたし美鈴の警告もしっかり頭に入れていた。


生徒会長が来ても警戒を怠るな、と。



だがいくら何でもいきなり今日堂々(?)とストーカー行為をするのはおかしいだろ。

警戒を散々語ったが、むしろそれはあっちも同じ話である。

昨日あれだけ美鈴が牽制したんだ。危機感はお互い感じるべき状況な筈。



分からない。どういう意図があるんだ?

天然か?実は物凄く空気の読めない天然だったりするのか?


いや、それはない。あの美鈴が一目置くレベルの頭脳を持ってる人だ。

話が上手いって言うのは要は場の空気を読むことに長けてるという事である。


そんな人が、他人の懐疑心一つ見抜けないなんて事がある訳ない。




或いは、現状のように答えが出ずに混乱しつくす所まで考えてるのか?

だったら目論見は見事成功してると言えるだろう。



「……大丈夫か。美鈴ちゃん」


一応、小声で確認する。

俺よりもいくらか考えは冴えているだろうがそれでも美鈴も不安だろう。

美鈴ちゃん、と言う呼び方じゃ少し締まらないが……今の緊迫してる状況にはむしろ丁度良かった。




ふと思った事がある。。



……そう言えば俺、これまでちゃん付けを忘れたことないよな?



うん、ないない。

※ありました


「私は大丈夫……さすがに予想外だけど。あんまり刺激はしないようにしよっか」


苦笑いを浮かべながら美鈴は視線までは向けずとも後ろを気にしている。

刺激はしないようにって……最悪そこまでの事が起きるのか?


美鈴の口から出てきた予想外、と言う言葉に俺の不安感が少し増す。

それを会長には悟られないように歩幅のペースの維持をより意識しておく。

美鈴から聞いた話だが、人間は歩幅の変化である程度心理状態が見えるそうだ。



昔から俺は不測の事態と言うのに対面することが少なかった。

何故かと言うと……情けない話だが優秀な幼馴染のおかげだ。


傾向やその場の流れを見て大体を悟り、トラブルになりそうな場合は極力未然に防ぐ。

幼いころから美鈴はそうやって生きてきた。

それにあやかって……俺も事件とかとは縁遠い生活を送れてきた訳だが……




今回は違う。美鈴ですら予想外なんだ。

その言葉の重みは誰よりも理解できる。



改めて生徒会長の底知れなさを思い知らされた。

何処まで言っても掌の上で踊らされている、なんて考えすら浮かんで来る程に。




とは言っても……こんなのはまだ序の口に過ぎなかったんだが。

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