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警戒心

「二人とも、行ってらっしゃい」


母の挨拶を背に二人で家を出る。

この現場を知り合いに見られでもしたらとんでもない事になるだろう。



……生徒会長、はさすがにこんな所にいるわけがないか。



どこかぎこちない気分になる俺、思わず美鈴の顔をちらりと覗く。


母の挨拶を背に二人で家を出る。

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……ん?



美鈴は自分の頬を手の甲で触りながらうーんと唸っている。

「何やってんだ?」


その所作の真意が分からず美鈴に問う。

何か気になる事でもあるのだろうか。



美鈴は少し恥ずかしそうに頬を染める。


「いやその……私改めて考えると昨夜は結構とんでもないこと言っちゃったなって……」



そんなことはない、と一息に言えないのが難しい話だ。

確かに昨日の美鈴の発言は少し尖っていた。

状況が状況なため気持ちは分からんでもないが……



まぁ、反省しているのは非常に嬉しい事だ。

脳内はともかくとして暴れる感情を行動にさえしなければ一先ず大丈夫である。



と、思っていたが……




「おい、じろじろ見すぎじゃね?」


「言ったでしょ。警戒しなきゃダメだって」



美鈴は混雑している電車内の人物の顔を次から次へと見定めていく。

幸い人の多さゆえにそこまで不審な行動には映らないだろうが……


しかし、さっき言動を反省していた直後の行動なので俺は何とも言えない感情だ。

ていうか生徒会長の通学路線って俺たちと同じなのか?


注意深く観察する美鈴の視線を追うように俺も電車内を見渡してみる。


サラリーマンに高校生に……主婦らしき集団に遊んでいそうな男。


様々な人間がいるがやはりそこに生徒会長の姿は無い。

いや、いたら怖すぎるんだが。



とはいえ紛れていたらさすがに気付きようがない。

あの容姿端麗っぷりなのでそれなりに目立ちはするだろうが……それにも限度がある。


少なくとも付きまとわれていたとして今まで気づかなかった訳だからな。


多分美鈴が昨日話し合いの場に校舎裏を選んだのはあぶり出しのためだろう。







まぁ、さすがに昨日あそこまで露骨な態度を見せておいていけしゃあしゃあと現れる訳もない。

万が一尾行をするにせよタイミングを見計らうだろう。

俺たち……というより美鈴に警戒されているのは火を見るよりも明らかである。



本格的に気を付けるべきは……学校周辺だ。


「この電車は終点到着後回送電車へと……」



丁度そんな考えに至った頃に駅に着く。

さすがにここから先は杞憂の一言じゃ片づけられないかもしれない。




電車を降りて改札口の前まで来て美鈴と顔を見合わせる。

そして、互いに頷き合う。





……居る。

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