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八方塞がり

ファミレスの中に誰が居たか、改めて記憶の糸を辿っていく。

と言っても普段からそんなに他の客の顔なんてじろじろ見たりしない。

故に確証なんてものはなく、あくまでいたかもしれない、というのが手一杯だろう。

あのファミレスは学校から歩いて10分ほどの所にあるため距離で絞ることは不可能。


何となく、うちの制服を着た男子を見たような覚えはある。

クラスは違うが同じ一年で……



微妙な所で記憶が途切れ、俺は頭を掻く。


「なんつったっけなぁ……一年であの天パ金髪の……美鈴は」

「ちゃんは?」

「……美鈴ちゃんは心当たりないか?」


ノータイムで指摘されるの死ぬほど怖いんだが。今のは一応セーフ判定なのだろうか。

美鈴はもどかしそうに顔を歪めて少し黙る。

その動作に俺は少し違和感を覚えた。



「飯田……や、飯島くんだっけ?誠くんの言わんとしてる人は何となく分かるよ」


ようやく口を開くもやはり歯切れが悪いような気がする。


美鈴は誰とでも接している分交友関係はそれなりに広いんだが……


しかし一人一人への関心は意外と薄い。

浅野のように日頃から話す存在ならともかく異性の、それも別クラスの人間となるとさすがに覚え切れないようだ。

まぁそれについて本人は限界がある以上仕方ないと割り切っているようだが……



その割には俺の事は引くぐらいに完璧に覚えている。

ダメとは言わないがもう少し他にリソースを割いてもいいのではなかろうか。


……いや、俺だからなのかもしれないが。



「でも俺はその……飯島?とは面識ないし、多分関係ないと思う」



第三者について前提とすべきは俺たちと少しでも面識があるかどうか。


少なくとも相手に認知されている以上、俺かあるいは美鈴の関係者だと睨んでいる。


となると飯田……あぁ飯島だった。




俺は話したこともないし美鈴もほぼ関わっていない。

さすがに飯島は違うと断言してもいいだろう。




しばらく考え続けて頭を抱える。

結局飯島以外にファミレスに居た人間は分からないし……

キリがない話、いくら考えたところで結論なんざ出るわけない。

そもそもあの状況でそんなこと見る余裕はなかった。



何か、ヒントのようなものでもないだろうか。


「……私が結構話すのは誠くんに尊ちゃん。あとは橋本さん達のグループと……強いて言うなら生徒会かな」


指を折りながら美鈴も交友関係を洗ってくれている。

よくよく考えてみれば美鈴はあの時寝ていた為状況理解もまだ漠然としたものだろう。


俗にいう八方塞がりってやつだ。


「偶然……は出来すぎだし私もないと思うけど…今度尊ちゃんにもそれとなく聞いてみるかな」




結局その日は大した収穫もないままお開きとなった。

帰り際に申し訳なさそうな顔をする美鈴を見て罪悪感が俺の胸に残る。




「くそぉ……!」

やるせなくなり一人部屋でぽつんと悔しさを吐く。

美鈴は本来状況を全く理解できない立場に居たのだ、そりゃ分からなくて当然の話である。






一番正解に近づけるのは俺の筈なんだ。



何でもいい。とりあえず思い出せ。取っ掛かりが分からないなら全部だ。

そう自分に言い聞かす。


勿論そんなことが出来る筈もないが、それでも今の俺がやれることを探していくしかないのだ。




あの時出てきた話題、名前、状況、発言……片っ端からしらみつぶしに思い返していく。




例え見ていなくても……浅野と飯島以外の俺か美鈴の関係者があそこに居たと思えるものは……




そんな事を延々と考えていると、俺の意識はいつの間にか途絶えていたのだった。






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