考察
今回ちょっと短めです
美鈴は消しゴムの細部、包装紙に至るまでじっくりと観察している。
何だかんだで俺のお願いとあれば全力で成し遂げたいのだろう。
しかし消しゴム自体に何か特徴があるとは思えないんだが。
え、何?発信機とかそういうのがあるかもしれないの?
いやあんな小ぶりな物にどうやって仕込むんだという話だ。
そんなことを思いながら黙って美鈴を見守る。
「どうだ?何か分かったか?」
そう聞くと美鈴は首を横に振って消しゴムを俺に手渡す。
「消しゴム自体は何もないね。メーカーも普通のだし、角も削れてないから新品かなー」
探偵のような口ぶりで美鈴は語る。
まぁここまでは普通に誰でも気づくことだろう。
少し消しゴムを詳しく見れば分かることだ。
え?俺?
全く気付かなかったけど何か?
え?
それはさておき次に考えるべきは……
手元の消しゴムを眺めながら俺は呟く。
「これを誰が寄越したか……だな。一応聞くけどお前じゃないんだよな?」
前にも聞いたが一応再度確認はしておく。
美鈴は俺の言葉を聞いて少し悲しそうに眉をひそめる。
「その時は普通に寝てた。事の発端は私なんだよね、ごめんね」
「いや…そんな気にすんなよ。お前も疲れてたんだしさ」
急に美鈴はしおらしい素振りを見せる。
どうにもこいつは失敗を人一倍気にする性格なのだ。
更に俺に火の粉が降りかかったとなれば……まぁ本人的には大分きついんだろう。
個人的には迷惑が掛からなかったとまでは言えないが引きずるようなことでもない。
それよりも早く元気を出してほしいため、出来る限り美鈴を慰める。
その後俺たちは話し合いを重ねて、あり得そうなケースを3つに絞った。
①浅野が気を使ってこっそりと俺の足元に投げた。
②第三者が何らかの理由で俺を助けた。
③ただの偶然。
この中ならまず③は深く考えなくてもいいだろう。
だって、偶然と言われたらそれまでだ。それ以上は何も言えやしない。
ていうか偶然緊急時に足元に消しゴムが落ちてたってどういう確率だ?
それこそ神様の仕業…とでも言うべきだろう。
だが俺はあの時神様なんか信じないと決めた。
故にこの説は考えない……ていうかそうであってほしくない。
従って①の方から考察を始めることになる。