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破棄

「一応お前が嫌だっていうなら無理にはやらないが、出来る範囲なら何でもいいんだよな。」

改めて約束の確認をする。

そして実現可能なラインを定めておくとしようか。

まずここで言質を取っておかなければ後でどうとでも否定できてしまう。

ここで思考放棄して大丈夫、とでも言ってくれれば俺の目論見はほぼ確実に成功するだろう。



だがやはりさすが美鈴だ、一筋縄では行かない。

俺の言葉に疑念を持ったのか顎に指をおいて考え込む。


そして俺を訝しそうな目で見てくる。


……バレたか?


俺は誤魔化すように視線を逸らす。



しばらく間をおいて美鈴は口を開いた。



「誠君の事を嫌いになるとか…関係を悪化させるのは無しね。進展ならどんなのでもいいけどさ」



思わず小さく喉の奥で唸る。

完全にバレていたかは知らないが少なくともこの条件では俺の一つ目の願いは達成できない。

さり気なく後半割ととんでもないことを言ってるが……それはもう慣れた。




婚約関係の破棄。

それが俺の考えていた一つ目のお願いだ。



破棄と言うか……厳密には改めてお互いに考えてみよう、みたいな流れを作りたかった。

あくまであんなのは幼心故の一時の気の迷いに過ぎないのだ。

正直俺も何やかんやで済ませようとしている雰囲気はあるが当然納得は出来ない。

少なくとも美鈴は本気の様だが……


以前、電車での一件の際に話しておきたかったが機会を逃してしまっていた。


が、恐らく美鈴が出した条件と照らし合わせるとこれはアウトだろう。

悪化……まぁ少なくとも進展ではない。

釘を刺された以上は無暗につつくのはダメだ。


冗談のように聞こえて真面目な話題にすれば重い空気になるだろう。

従ってタイミングを見極めなければならないのだ。


そして今はその時ではないということは言うまでもないだろう。



一つ咳払いをして気持ちを整える。

残念だと思わないわけではないが予測は容易に出来ていた。

だったら二番目のお願いに移るだけだ。

これはさすがに断られないだろう。



俺は机に置いてあったペンケースから消しゴムを取り出す。



そう、件のファミレスの謎の消しゴムだ。

まずはそれを美鈴に手渡す。


美鈴は不思議そうに消しゴムを眺める。


「……これ食べろってこと?」

「俺を何だと思ってんだお前は」


間髪入れずに否定する。どういう発想だよ。

ていうかそれはお前にとってセーフなのか?


美鈴は消しゴムを改めてじっくりと見回す。


「んー普通の消しゴムだよね、これ。……あ、もしかして前言ってた足元にあったやつ?」

「そういうことだ」


改めてこの察しの良さには困らされる部分もあるが助かることも多い。

長々と説明するより早く本題に入りたいからな。



「この消しゴムが何なのか……お前の意見もじっくり聞いてみたいんだ」



俺なんかの頭じゃまるで想像もつかない現象。

しかし、美鈴なら何か分かるんじゃないかと思った次第である。


美鈴は少し不服そうな顔をして言った。

「そんなのでいいの?」


その様子に呆れる。何をさせたかったんだこいつは。

直接言ってやりたかったが、深堀りしたらまたペースを持ってかれそうだ。

それこそこいつの望みに誘導なんてことも……



俺は口をつぐんで、ゆっくりと首を縦に振った。今はそれだけでいい。

今日は出来る限り頑張って更新していきたい……!

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