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美鈴ちゃん

何を勘違いしていたのかタグに二次創作を付けていました……

申し訳ございません。

初めに言おう。俺はこの挑戦を受けた。


いやもう見え透いた罠であった筈なのに。何で俺は学べないのだろうか。



もうこのモノローグの感じからして結果は分かるだろう?普通に負けた。





言い訳をさせてほしい。6枚落ちはめちゃくちゃ絶妙なハンデだったのだ。

俺と美鈴の実力の差を埋め、尚且つゲーム性までは崩壊しない。

何とか俺でも勝てそうと思った……いや、思わされてしまったのだ。




「さ~て、何でもか~……どうしよっかな~」

わざとらしく語尾を伸ばしながら美鈴はにやにやと笑う。

その表情に思わず息を吞む。



何でも、と言うのは気軽に言ってはいけない。言われても素直に応じるな。

勿論ケースバイケースではある。あくまで冗談の範疇で済む場合がほとんどだろう。


じゃあ今この場合はどうなのだろうか。答えは美鈴に委ねられる。




俺の頭の中ではずっとあの時の声が反響していた。


「大好き」



シラフでああいうことを言ってきた奴だ。

もし【何でも】なんて免罪符を持ったらどんな事をしてくるのか。

予想が付かない訳じゃない。ただ何度も言ってきたが美鈴は俺の予想を軽々と超えてくる。



いやさすがに、さ す が に 一定の超えちゃいけないラインは分かっているだろう。



そうは分かっていても安心できる筈もなく美鈴の一挙一動に注目してしまう。



やがて美鈴は思いついた、と言ったような顔をして口を開く。

やけに口元の動きがスローに見えるのは何故なのだろう。


走馬灯……いや死にはしないだろうけど。



様々な考察や妄想をしながら、その時を迎える。



しかし、美鈴から出てきた言葉は俺が思っていたのとは違う方に意外なものだった。



「じゃあさ、これから1週間私の名前の後にちゃん付けて呼んで」



「……それだけ?」



思わず口に出してしまう。俺は馬鹿か!ああ馬鹿だよ!馬鹿だから追い込まれてたんだよ!

ちゃん付け……いや、全然ハードル低くないか?


怪訝そうに見つめると美鈴は満足げな顔をしていた。

「うん、ちっちゃいころ以来全然聞いてなかったからさ」



どうやら本気でこの程度でいいようだ。

正直拍子抜けである。いやそれで済むに越したことはないんだが。

俺は安堵のため息を吐く。


「じゃあ今試しに言ってみて!ほらほら」


待ち遠しそうに促す美鈴に俺も答える。

散々びくびくしていた俺だが当然この程度の約束は守るさ。


「あー……美鈴ちゃ……ん」




上手く呂律が回らない。ていうか思いの外恥ずかしいぞ、これ。

軽いお願いだと思ったが意外と後を引くような感覚が強い。

何か、初々しくなるというか……言語化しづらい感情だ。



「懐かしい~小学3年生以来だ」


あやすようにぱちぱちと手を叩いて美鈴は喜ぶ。

それによって一層俺の羞恥心は増していく。

なんて言うか……年下になったような感覚になる。



まぁでもマシ。最悪と比べたらよっぽど軽い罰ゲーム(?)だ。



「じゃあ、今日から1週間はずっとちゃん付けね。勿論学校でも」


「あぁ……あぁ!?」



ちょっと待て。学校でも!?

一瞬納得しかけたが俺は口をあんぐりと開く。


「もし呼び捨てにしたらその都度また1週間延長ね!」



俺は軽く絶望する。

最悪ではないが決して軽い罰ゲームではなかった。


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