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「ふおあああぁ……」


自分でも驚くほど重いため息が出た。

ようやくうるさいほど暴れていた心臓も鳴りやんできている。

あくまで和やかな勉強会だった筈なのにどうしてこんな事になったのだろうか……



俺はじっと美鈴の寝顔を凝視する。

いや違う、別に責めようって訳じゃないんだ。

訳ではないんだが……こんな事態を引き起こしたのが美鈴であることも事実なのである。



ていうか……




「お前寝てないだろ。もう目開けていいぞ」


寝ている、いや寝たふりをしている美鈴に向かって堂々と俺は言ってやる。



全く……起きているのなら素直にしてくれればよかったのに……

多分そうすれば余計な悶着を起こさずに済んだだろう。

にしてもどのタイミングで起きていたんだ?こいつは。




とはいえ美鈴のアシストに助けられたのも事実。

いつ手元に忍ばせていたかは知らないが、よくあのタイミングで潜り込ませたものだ。


しかし同時に不審に思うこともある。それならお前が説明してくれれば良くね?って点だ。

少なくとも俺なんかよりはよっぽどマシな説明ができるだろう。


……まぁ、俺が中途半端に言い訳を始めたから出るタイミングを逃したのかもしれないが。



いずれにせよ本人の口から聞かない限り真意は分かりっこない。


だから俺はさっきから美鈴に問いかけているのだが……


「おい。美鈴?」



美鈴は目を閉じたまま一向に返事を寄こさないのだ。

相変わらず寝息のようなものを立てながら俺の手に掴まって何とかバランスを取っている。

いや寝息のようなものっていうか……普通に寝息じゃないか?これ。



幼いころから美鈴はよく嘘をつく。

何故嘘をつくのかと聞いてみればそれによって慌てふためく俺を見るのが好きだからだそうだ。

何言ってんだこいつ。


しかし決まって、俺が確信をもって嘘だと見抜けば美鈴は大人しく白状するのだ。

故に今この状況ならこいつは起きる筈なんだが……



未だそんな気配はない。

まさか隠し通せてとるは思ってないだろうし……なら、まさか……



「……普通に寝てんのか?」






結局美鈴は30分以上経ってから目を覚ました。

美鈴は細身だがさすがにここまで支えていると肩が痛くなる。


事の一部始終を話すと美鈴は驚いて、そして慌てて俺に謝ってきた。

少なくとも俺から見てその反応に一切の嘘だと思える様子は無い。



「誠くんの手を握ってたら心地よくてつい……昨日遅くまで勉強してたからかな」

果たして俺の手は関係あるのだろうか。

まぁこいつにとったらそういうもんなんだ……と納得するしかない。

美鈴は申し訳なさそうにもう一度頭を下げ、俺はそれをなだめる。


何だかんだでいつの間にか空は赤く染まっていた。


とりあえず俺たちは真っ直ぐ家に帰ることにした。




自室の椅子に座って大きく息を吐く。

改めて長く苦しい1日だった。

俺は今日のことを思い返しながら軽く復習をしておく。

さっきの勉強会もあってか驚くほどすらすらと問題が解ける。


何だかんだで身になる1日でもあったのだ。


終わり良ければ総て良し、というのは素晴らしい言葉だと思う。




しかしどうにも腑に落ちない点があるのだ。


俺は机に置いた消しゴムをまじまじと見る。

あの時、絶体絶命の状況で俺を救ってくれたものだ。



俺はこれを足元に投げたのは機転を利かした美鈴だと思っていた。

タイミングを見計らって言い訳をしやすいように落とす。

器用な美鈴の思いつきそうなことである。



しかし、美鈴はあの間もずっと寝ていたと言うのだ。


俺は首を傾げる。




じゃあ……この消しゴムを足元に投げたのは誰なんだ……?

読んでいただき誠にありがとうございます。

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