01 Prologue
あなたの背中を、わたしは見てきた。
進むときも、苦境のときも。
あなたの助けになる。そばにいる。それがわたしの使命で、わたしが存在するただひとつの意味だった。
なのにわたしはこのごろ、あなたに違うことを望んでいる――
『――敵機体の接近を確認。総数、六』
「来たか。思ったより速度がはやいな」
コックピットの壁に投影された外界の映像、そこに重ね合わされているHUD左下のレーダーには迫る六つの機影がある。遠い砂漠の砂が巻きあがる光景も男には見えていた。
『無線の傍受を開始……』
スピーカーから響く涼やかな声のあと、ノイズが交じった男たちの音声が割り込む。
〔……目標を視認した。ほんとうに一機だけとは〕
〔おいあの狐色、……まさかバレットフォックスかよ!? 死なない男だぞ!〕
〔怖がるな、ありゃただの死に損ないだ。I.I社のしもべ野郎め。お前ら勝てば名が残るぞ! 俺たちの底力を見せつけろ〕
『どうやら荒々しい方々のようですね。どうしますか、マスタ?』
「『どうしますか』って、普段どおりやるだけだ」
男は声に答え、息をととのえた。
「アルテミス、はじめるぞ」
『承知しました。戦術記録用の録画をおこないます』
録画を伝える電子音が鳴った。
「こちらルナール。これより一〇六回目の戦闘を開始する」
推進器に炎が迸り、鋼の巨躯兵器は動きだした。
EA《エンゲージメント・アーマー》〜死なない狐と狩りの女神〜