凍てつく世界の冷たい花
すべてが凍てつく氷の世界、そこに一つの花が咲いていた。
しかし、花は凍らない。
いつでも、温かくて。光を放っていた。
だからその花は、冷たく凍えた世界では、貴重な存在だった。
「動物さん達、どうか私のこの光で暖をとって」
多くの動物が、その花の恩恵をうけるために、集まった。
けれど、ある日一匹の動物が、その花をひとりじめしてしまった。
そのため、花の恩恵を受けられなくなった動物たちは、凍えながら過ごさなければならなかった。
だから、ひとりじめされてしまった花は、自分を持ち去った動物にお願いした。
「私がいなくなったことで、多くの動物さん達が困っているはず」
しかし、花のお願いは聞き届けられる事が無かった。
動物は、決してその花を手放そうとしなかった。
そのうち、とても冷たい風が吹いて、動物たちの命が一つずつ消えていった。
それでも花が返されることはなかったため、とうとう全ての動物が死に絶えてしまった。
その花と、独占した動物以外は。
その事を知った花は、自らの心を凍らせた。
もう光らない。温かくならない。
生き残っていた動物も凍え、永久の眠りについた。
氷の世界で、その花は凍えたまま生き続ける。
いつかその心をとかすものがあらわれるまで。