2021/07/11
小説には限界があると思う。
小説はあまりにも理想化されすぎているような、僕にはそんな気がする。小説が、だから面白くないというつもりは全くないし、小説家のことを悪く言うつもりはない。小説の媒体としての限界である。
小説はどうしたって、登場人物が同時には喋ることができない。できたとして、「「」」と二重カッコで囲むことによって二人が同時に喋っていることを伝えるくらいのものだ。それは人間が脳を一つしか持っていない以上、どうしようもなく、また文句を言うべきではないことではあるけれども、僕はそこに小説の限界があると思う。
現実世界においては、世界のどこかで常に誰かが喋っている。当然、それは「「」」で囲むことのできる全く被った言葉ではなく、それぞれの人が持っている、それぞれの言葉を、だ。そして、それぞれが話す言葉は紙に書ききれるような分量ではない。何千万人もの人が同時に何かを語っている。そこには各々の人生があり、時間があり、音があり、風景がある。
しかし、小説はそれを切り取ることしかできない。ただ一つの言葉を、ただ一つの言葉としてのみ表現する。
それが小説の面白いところでもある。しかし小説は、紙媒体は、それを上回ることがどうやってもできない。
だからなんだ――と言われても答えようのない、僕の夜の呟き。




