第一話 今日から高校生です!Part.2
クラスのみんなに挨拶を告げた後、しばらく話していた。というか、質問攻めにあったというのが正しい気もするんだけどね...。
はじめは男の子たちからの質問だった。
「花見詩織ちゃ...くんだよね?君のことはなんてよべばいい?」
「好きな呼び方で大丈夫だよー」
「んじゃ、ちゃんで!!!」
「詩織ちゃんの趣味は読書って言ってたけど、何読むの?」
「んーと、恋愛小説かなぁ」
そう僕が答えると、周囲の人たち(特に男の子)がどよめきだす。変人だと思われた!?などと冷や汗をかいていた僕だが、次の男の子たちの発言で、驚くことになった。
「「「「「か゛わ゛い゛い゛」」」」」
鼓膜が破れんばかりの大声に、僕は思わずひっ!と小さく息を漏らしてしまった。うぅ、びっくりしたよぉ。その様子を見た雅がすかさずフォローを入れてくれる。
「こら男ども、あんま騒ぐな!詩織が小動物みたいになってるでしょうが!」
フォロー(若干貶されたような気もするけど)のおかけで、男の子たちは落ち着きを取り戻した...と思う、たぶん。
今度は女の子たちから質問が飛んでくる。最初は、ショートヘアの木村夏樹さんからだった。
「はいはーい、質問です!どうして男の娘になろうと思ったのー?」
「んー、僕はもともと可愛いものが好きだし、親の影響もある...のかな」
そう僕が答えると、今度は間髪入れずボブヘアの北島明美さんが声をかける。
「てことは、もしかして親御さんも男の娘だったり?」
期待の眼差しで見られています。すごく恥ずかしいです。
「うん、まあ、ね」
声がかぼそくなるのを自分でも感じた。僕はこういうところがダメなんだよね...。人に見られるとしり込みしちゃって、弱気になってしまう。でも幸いにも北島さんは気にしていないみたいだし、今度からがんばろう!などと自分を勇気づけていると、他の人たちからも色々訊かれていく。
-5分後-
まだ質問されています。
-10分後-
もう、流石に訊くことないのでは...?
-15分後-
うぅ、頭がパンクしそうですぅ。
そんな僕を見かねて、雅が助けてくれようとした時だった。1人の男の子から質問がくる。
「そういえば、この話題訊いてなかったわ!ねー、詩織ちゃん、中学校ではどうだったの?やっぱモテた?w」
その質問に僕は、息が出来なくなるような感覚に陥った。中学校のことは今でも嫌なくらいに覚えている。夢にまで見るほどに。僕は中学でのいい思い出なんて何もない。だって、いじめられていたんだから。明らかに様子のおかしい僕を見て、周りの人たちは困惑している。それを見かねた雅が助け船を出してくれた。
「あー、中学の話題はやめたげてー。こいつ見ての通り小心者でしょ?だから私としか話さなくてさー。その内気なとこ治すためにここ来たんだー。だから、中学の思い出きいても私と一緒にいたことしか言えないのよw」
雅は優しいなぁ。話をはぐらかしてみんなの気をそらしてくれた。あとで何かお礼しよう!雅のおかげで僕は呼吸を整えることが出来た。質問してきた男の子も僕に謝っていたけど、彼のせいではないから気にしないでほしいとその旨を伝えた。ほどなくして、教室のドアが開く。それと同時に聞きなじみのある声がした。
「諸君!親睦は深まったかなー?そろそろ部活動紹介を見に行く時間だから、体育館に向かうようにねー」
ドアの間で阿部燐花先生がそう告げる。
「「「はーい」」」
クラスのみんながそう返事をして、各々体育館に向かっていく。いよいよ部活動紹介かー、何か部活とか入ってみようかなー。僕はそう思いながら、雅と木村さんと北島さん、それからセミロングの小野寺陽菜さんの5人で体育館へ向かった。なんだか、みんなでいるのっていいね!
僕らが体育館につく頃には、大きな人混みが出来ていた。なんでも各々好きなところで見ていいらしいです。危なかったよぉ、気の合う人ができなきゃ、ボッチイベント確定だったよぉなどど胸をなでおろしていた。
僕らは比較的前のほうに座った。ほどなくしてアナウンスが流れ始める。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!新入生の皆さんにいいことを教えましょう!高校では勉強も大切ですが、それ以外にも充実した高校生活を送るうえで大切な要因があります!それはなにか!ずばり、部活動!・・・。」
アナウンス役の方が会場を盛り上げてくれて、新入生たちは待ちきれないといわんばかりの表情だった。かく言う僕もその一人なんですけどねぇ。そうこうしているうちに部活動紹介は進行していく。
「柔道部の皆さん、ありがとうございました!皆さん、今一度大きな拍手を!」
そう司会役が述べ、僕らは拍手を送る。柔道部の人たちかっこいいなぁと思っていたら、周りの雰囲気、特に女性の先輩方の目つきが変わっていく。え、なになに!?どういうことなんですか!?しかし、その答えは次のアナウンスの後、すぐに分かった。
「次は剣道部の皆さんです!」
そう流れた瞬間、
「「「「「きゃー!」」」」」
うわっ、吸い込まれそうなほどきれいな顔!
ものすごい黄色い歓声とともに、目を見張るほどイケメンな方が現れた。その美貌に僕も思わず息をのんでしまう。端正な顔立ちをした方だが、僕はあることに気が付いて雅に声をかけた。
「あの人、女の人だよね?」
「あんたが朝いってたひとじゃないの?ほら、男装の人がいるから、女装して登校しても許される―みたいなこと言ってたじゃん」
あー、そういうことか。あの方がうわさの人だと僕は理解した。ほどなくして、剣道部の紹介が始まる。説明はもちろん、歓声を受けた方だ。
「初めまして、新入生の皆さん、私は剣道部の主将、黒宮涼香です。」
黒宮先輩っていうのかぁ、かっこいいなぁ。
「私たち剣道部は、日々鍛錬に励んでおります。目標はもちろん全国制覇、また、文武両道も我々の目指すところです。では・・・」
今までの部活紹介の時よりも、さらに真剣に聞き入る新入生たち。かく言う僕も黒宮先輩の一挙手一投足に目が離せなかった。
「以上が我々剣道部の活動です。ご清聴ありがとうございました。」
発表が終わるとまたもや黄色い歓声があがる。ふと雅のほうをみると、少し不貞腐れているような気がしたので、心配になった僕は声をかけた。
「雅、どうかした?」
「べつにー?」
そういうと雅はそっぽを向いてしまう。僕何か悪いことしたのかなぁ、ごめんよ雅。と心の中で謝っておいたのだった。
部活動・サークル紹介は滞りなく終わり、僕らは来た時と同様、5人で教室に戻った。
教室に戻り席に着くと、ほどなくして燐花先生が教室に入った。
「はーい、んじゃHRはじめるよー。明日から早速授業するから時間割通りに教科書持ってくることー。」
そう告げると、クラスの人たちは落胆の表情を浮かべた。
それをみた燐花先生は苦笑いをしつつも、資料を配布し次の話題に移る。
「それから、入りたい部活動がある場合は、先生にこの書類を提出してくださいなー。んじゃ、今日は解散!」
そういって、クラスを後にする先生。去り際に「今日は帰宅早いし、何飲もうかな~♪」といって出ていった。生徒に聞こえてますよ、先生。
HRが終わり、各々帰路につく。僕と雅は電車で帰宅するけど、木村さんたちは家が近いみたいで歩き。仲良くなった人と別々で帰るのって少し寂しんですね...。雅以外の友達いないから知らなかったです。
木村さんたちと別れを告げた後、僕らは電車に乗り、最寄り駅で降りて家に向かった。
「詩織はなんか部活入るの?」
「はいるよー」
「まさか、剣道部...じゃないよね?」
雅がそう訊いてきたので、僕は頭に疑問符を浮かべつつ、その質問に答えた。
「ちがうよー、料理研究会かなー」
そう僕が答えると、雅は小さく安堵したような声を漏らした気がした。
「雅はやっぱ、バスケ部入るの?」
「んー、たぶん入るかなー」
「ずっとバスケしてたしそうだよね、ガンバ!」
「ん、ありがとー、頑張りますw」
そういって、雅は微笑んだ。それを見て、やっぱり僕より雅のほうが数段かわいいと思ったけど、いったら怒られそうなのでやめときます。
たわいもない会話をしていると、自宅に到着した。雅とはここでお別れです。
「じゃ、明日も今日と同じ時間にここで待ち合わせねー」
「遅れたらごめんねw」
「もー、遅れる前提はだめだよー?」
そういって、僕は雅と別れた。
「ただいまー」
「「おかえりー」」
家の玄関を開けてそう言葉にすると、奥からお父さんとお母さん、もとい、男装した母と、女装した父が出迎えてくれた。
そうなんです。父の薫は女装家で、母の美月は男装家なのです。
クラスで北島さんに親も男の娘かと訊かれたとき、微妙な反応だったのは、緊張もあったが、一番の理由は両親とも女装と男装を好むからだったのです。このことは、あとでみんなにゆっくり伝えようと、僕はそっと誓ったのだった。
お父さんが玄関にきて、開口一番にいつもいうことがある。
「詩織、今日も一段と可愛いな、我が息子よ」
うぅ、やっぱり今日も言うのね...。恥ずかしいからやめてほしいと何度も言ったのに、それでもいうのだから諦めるしかなかった。絶対、僕が大人になるまでにやめさせます。
自室に行き、部屋着に着替えると、リビングに向かった。
リビングに行くと、お母さんが恐る恐るといった感じで、僕に訊いてきた。
「しおちゃん、今日学校どうだった?」
両親は僕のいじめのことを知っている。それを危惧しての質問なんだろう。なので、僕はその憂いを払拭するためにも、心に残る不安を隠して、満面の笑みでこう答えた。
「大丈夫!クラスの人たち、みんな僕のこと理解してくれるし、もう気の合う人もできたんだよ」
そう答える僕に対して、お母さんは少し微笑むと、
「しおちゃんがいいと思うなら、私たちはもう何も言わないわ。でも、もし万が一にでも嫌なことがあったら私たちに相談して頂戴ね。もう、あの時のようなことは絶対に起こさせないから。私たちは何があってもあなたの味方だからね」
と優しく包み込むような声で言った。それに続けてお父さんも笑いながら、
「美月のいう通り、父さんたちは詩織の親であるとともに、よき理解者でありたいんだ。だから、遠慮はいらない。いつでも話を聞くからね。」
そう僕に告げた。お父さんもお母さんも昔から僕に良くしてくれた。今でもこんな僕のことに難色を示さず寄り添ってくれる。僕は本当にいい両親を持ったなぁ。僕は泣きそうになるのを堪え、さっきよりもより笑顔でうなずいたのだった。
朝というのは1日の始まりとともに、憂鬱な気持ちを連れてくる。だけど、昔よりは今日の僕は憂鬱ではなく、わくわくした気持ちも多少抱いています。おはようございます、詩織です。
僕は待ち合わせ時刻の一時間前に起きると、リビングでお母さんの作った朝食をとり、歯磨きと洗顔をしてから、学校に向かう準備を始めた。寝癖をヘアアイロンで直し、下地を濃くならないように付けたのち、薄くアイシャドウをつけ、これまた薄くアイライナーをひけば準備おっけー!予定時刻の5分前に自宅の前で雅を待ちますが...
「相変わらず、来ない...」
雅は相変わらず予定時刻になっても来ない。雅の遅刻癖になれてる僕もダメなんだろうなぁと思いつつ、待っていると、遠くから聞き覚えのある声とともに、声の主が走ってきた。
「ごめーん!遅れた!」
「おはよ、雅。今日は7分遅刻だからいつもより早いね」
「ごめんってば!」
「相変わらずの寝坊?」
「みんながみんな、詩織みたいに朝強くないの!」
「はいはい、んじゃ、学校いこっかw」
そういいながら、僕らは駅まで向かった。
学校へ着くと、木村さんたちと昇降口で会った。
「おはよー、二人とも!」
「おはようございます。」「おはよー」
朝の挨拶もそこそこに、僕ら5人で教室を目指す。その中で、こんな話題になった。
「今日の2限、体育になったんでしょ?」
「そうそう、英語苦手だからラッキーって感じ」
「ひなー?あんたもっと勉強頑張んなさいよぉ」
そういった会話を横目に、ひとり焦りを感じている者がいました。そう、僕です。英語が体育に変わったことを今知った僕は、一人で焦っていると、何かを思い出したように雅が叫んだ。
「あー!いけない!詩織に体育になったこと伝えてなかった!」
事の顛末はこういうことらしい。木村さんが先生から伝言として体育になったことを聞き、みんなに連絡を回そうとしたが、僕の連絡先を貰い忘れ、雅経由で伝えようとしたところ、雅が失念していたらしい。うぅ、雅、どうして家の前で言ってくれなかったのさぁ。体操服忘れてきたよぉ。などとしょげている僕を可哀そうに思ったのか、木村さんが何とも申し訳なさそうな顔で声をかけてきた。
「詩織ちゃん、ごめんね昨日連絡先もらうの忘れてて、今交換しよ!」
そう言うと、北島さんと小野寺さんも「わたしも!」といって連絡先を交換してくれた。やった、親と雅以外で初めて連絡先を交換しました!と喜んでは見たものの、何だろう、この虚しさ...。僕、もっと頑張らなきゃなと軽く自己嫌悪に陥っているのもつかの間、教室に到着した。
HRののち、燐花先生に事情を説明すると、保健室に行けば借りられるとのことだったので、1限が終わり次第向かうことにするのだった。
1限が終わり、雅に同伴してもらいながら保健室へ向かう僕。途中で何度も雅に謝られたけど、僕は全く怒ってないし、寧ろ連絡先交換の糸口になったので結果的にはよかったと思う...多分。
保健室につくと、保健室の先生が出迎えてくれた。
「こんにちは。養護教諭の三島さくらです。今日はどんな要件かな?」
柔和な面持ちで三島先生はそう僕に問いかけた。
「えっと、その、体操服を貸していただきたいのですが...」
「体操服ね、わかりました」
そういうと保健室の奥へ三島先生は行き、しばらくして体操服をもって戻ってきた。しかし、その手に持っていたものを見て僕は困った表情を浮かべた。
「先生、あの、僕男なので、女子用の体操服は少し問題があるというか、なんというか...」
そう、三島先生が持ってきたのは女子用体操服なのです!ここ冷涼高校の女子用体操服は、時代にそぐわぬブルマであり、かわいくて好きだけど、男が着ると変態に見なされかねないんです。女装してるんだし、今更関係なくね?とお思いのそこのあなた!一応、こんな僕でもポリシーはあるのです。可愛い恰好はしたいけど、犯罪すれすれの格好は如何なものかとね。その思考のもと、断るセリフを考えていると、雅が隣りで悪い顔をしているのに気が付いた。そして、
「しーおーりー、着よ?」
えっと...、雅さん?呆気に取られていると、今度は先生が口を開く。
「あぁ、あなたが花見詩織さんね!可愛い男子が来たって構内で噂になっていたわ」
えぇ、噂になっているのですか!目立ちたくないのになぁ。と思っていたら三島先生まで雅と同じ顔をしだした。
「詩織さん、ごめんなさいね、今男子の体操服すべて貸し出しているのよ。だから、女子用の着ない?」
あ、絶対嘘ついていますよ、この先生。そうこうしているうちにどんどん2限目の時間が迫る。
「大丈夫、詩織のことは絶対私が守るし、ね、お願い!」
えぇい、もうどうにでもなれ!そう思って僕は女子用の体操服を着たのであった。さよなら、平穏な学校生活。なお、受け取った際、三島先生から「眼福」と聞こえたのは気のせいだよね...。
体育、それは僕が唯一授業で苦手な科目である。というのも僕は運動が得意ではないのだ。なのに、仕方なく、やむを得なず、どうしようもなかった状況とはいえまさかブルマで初授業を行うことになるとは...。朝のわくわく感はどこへやら、ただいま、憂鬱な世界。
僕と雅がついたころには生徒は既に整列していた。体育の授業は僕らC組と隣のD組の合同で行われるので、僕の変態姿は約60人の記憶に刻まれることになる。うぅ、胃が痛い。僕らが列に加わると、体育教師の岩山勝先生は準備体操の指示を出す。隣のクラスの人たちはもちろん、C組の生徒たちからの視線も痛い。ヒィ、見ないで...。周りではひそひそ話す声も聞こえ、トラウマがフラッシュバックしそうになったが、
「ね、あの子超可愛くね?」
「遅れてきたロングヘアの子でしょ、俺くそタイプw」
「あの子入学式にみた天使やん」
「俺、幸せすぎて死ねるわ...」
等の内容が聞こえたため、どうやら僕の陰口ではないようで、安堵したが、その会話内容は恥ずかしいのでやめてくれませんかぁ。
準備体操も終わり、次の授業内容に移ることを岩山先生が指示していた。
「今日は一回目だから、これから毎回やる二人または三人一組の柔軟体操のためのペアを決める。各自好きな人と組んで決まったら名簿に記入するように。でははじめ!」
そういったのと同時だった。僕の周りに男の子達が駆け寄ってきたのは。
「ねね、君俺らと組まない?」
「僕と組んでくれませんか?」
「おいおい、俺と組むって、な?」
なに、この状況?僕の頭の中は既に混乱状態。ふいに岩山先生を見ると、青春だなぁといったような感慨深い顔でこちらを見ている。とその時、集団の間隙を縫って雅が来た。
「詩織、ペア組む?」
雅!僕は二つ返事で快諾した。
「雅、助けてくれてありがとう」
「さっき言ったでしょ、守るって」
そういって集団から僕を連れ出してくれる雅。それでも男の子たちは下がらない。
「んじゃ、俺もペアに混ぜてよ!」
「いや俺だってw」
そう言っている男の子を雅は一瞥して吐き捨てるようにいった。
「無理!詩織は私と組むの。あんたらの入る枠はないわ」
そういうと、僕を連れて集団から遠ざかる。後ろでは、きっつだの、俺はありだの聞こえたが、何はともあれ、ペアも作れたし、雅には感謝してもしきれない。僕らは名簿にペアとして記入すると、柔軟の練習をするのであった。
体育の授業が終わり、雅と一緒に体操服を保健室に返した(三島先生はニヤニヤしていた)後、教室に戻り、ドアに手をかけたとき、教室内での話し声が聞こえた。聞こえた内容から、どうやら僕のことを言っているらしい。僕の表情が強張ったのを見て雅が声をかけてくれる。
「大丈夫、詩織のこと悪く言うやつらじゃないよ。それに、さっきも言ったけど、私が守るから安心して。ほーら、シャキッとしなさいな!」
そう雅に促され、僕は教室のドアをあける。すると、クラスのみんなが一斉にこちらを向き、各々に口を開いた。
「ブルマめっちゃ可愛かったよ!」
「スタイル良すぎない?」
「控えめに言って天使」
「おれ、性別の垣根なんて超えて見せるさ」
「おいおい、俺もお供しますよ、兄貴」
「どうしてあんなに足細いの?」
等々、嫌なことは一切思われていなかった。それを聞いた雅が、目で「ほらね?」と僕に合図する。今まで、両親と雅以外にこの姿を受け入れてくれる人はいなかった。でも、この高校に入学してから、みんなに男だと打ち明けても引かれず(何故か悲しまれたが)、受け入れてもらえるようになった。そんな優しいみんなへ向けて、僕はありのままの気持ちを述べる。
「みんな、僕のこと受け入れてくれてありがとう!これから迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします!」
僕の言葉を聞いたみんなは、頷いたり、返事をしたり、サムズアップしたりと反応してくれた。雅も隣でうれしそうな顔をしている。そんなみんなを見て、心の片隅にあった不安が払拭された気がした。あぁ、この学校に入ってよかった!花見詩織、15歳、僕の高校生活はやっと始まった気がします!
僕は今日から高校生です!