アール遺跡
「ネル。どうしてこうなったんだろうな」
「そうねソラ。これは私のせいじゃないわ」
僕らは16歳になって成人した。
そろそろ職を探さないといけない年齢だ。
なので夢にまで見た冒険者になることにした。
僕が好きな童話で勇者がドラゴンを倒すというお話がある。
それは冒険者だったか弱い男の子が精一杯努力をして、仲間と共に強敵を倒していって最終的には周りから勇者と呼ばれていた……そんな物語があるのだ。
そういう伝記とかが好きな僕は言うまでもなくその勇者に憧れた。
そして最も危険で安い不人気な職業、冒険者になることを選んだ。
もちろん周りからの反対があった。
てか反対しかなかった。
でも夢を見た僕は止まらなかあった。
幼馴染の働かない、働く気がないネルを無理やり動かし冒険者登録を受けに行った。
登録と言っても面接だけで済む。
無事お互い合格し、冒険者の証である冒険者カードを発行してもらった。
ちなみに冒険者カードにはランクがある。
ランクが一番下は1で一番高いランクが10となっている。
クエストをこなしていったらランクが上がっていくらしい。
まあ、言うまでもなく僕らはランク1だ。
それは置いといて、布の服とナイフだけで簡単なクエストを受けに行く。
その内容はアール遺跡という魔物とか一切出ない安全な遺跡の探索で、めぼしい物を見つけたら冒険者ギルドが買い取ってくれるというまさにランク1向けの初心者専用の簡単な依頼だ。
その遺跡は最近発見されたという事でお宝が眠っているとの事で。
僕らは鼻歌交じりに手をつないで一獲千金を想像しながらスキップをして遺跡に向かった。
そして遺跡に入る時にネルが張り切って、「ソラ! これは早い者勝ちよ!」と言いながら遺跡に突っ込んでいった。
いくら安全な遺跡とはいえ、最近見つかったばっかりの遺跡だ。
確認したときは安全でも良く調べたら罠とかあるかもしれない。
なので大急ぎでネルを回収しに行く。
いつもなら外に連れて行くとき「嫌だあああ!! なんで外に出ないといけないの!? これ以上近寄ったら痴漢と訴えるからね!」とかわめき散らしているのに今日は依然乗り気だ。
ちなみに過去にもこういう風に突然やる気を出したことがあるのだが、そのたびに裏目に出て僕が解決してきた。
例えば、「料理を手伝う!」とか言ってスープを僕の顔をぶちまけてその掃除をしたり、「買出しに行ってあげるわ!」と言って全く違うものを買ってきて僕が買いなおしに行ったり。
まあこれはまだ些細な出来事で例を挙げるとキリがないのでこの辺にしとくが。
そんな訳で彼女が突然やる気を出したとこに不安しかないのだ。
むしろ「やる気を出してえらいな」と言える人は彼女を知らない人が学習しないバカのどちらかだ。
なので僕がとる行動は二択で、追いかけるか放っておくかだ。
冒険者は死人が多いのでいくら安全な遺跡とはいえ心配だ。
かと言って追いかければ面倒ごとに巻き込まれそうな気がする。
……ネルとは小さな時から付き合いがあるのでもし危ない目にあってたら後味が悪くなるだろうなぁ。
僕はため息交じりにネルを追いかけ勢いよく遺跡の中に飛び込んでいった。
薄暗い、瓦礫の間から微かに日光が差し込む遺跡内を走っていく。
ツタが壁に張り付き、そこら中に苔が生えているこのアール遺跡は風が吹かないのか埃が溜まっている。
そして埃を踏んで出来た足跡。
恐らくこの足跡はネルのだろう。
なのでそれについていく。
「おーい。ネル? どこ行った?」
足跡についていきながら一つの部屋に入った。
「ソラ見て! これ私が見つけた部屋なの! 凄いでしょ!」
目に入ったのはネルと装飾をされた箱だ。
「お~! それは宝箱か!」
「そうなの! 凄くない!?」
そう言ってこっちに近寄って褒めてほしそうに頭を向ける。
これは頭を撫でろって合図なので適当にわしゃわしゃしながら宝箱を見るめる。
冒険者登録する時に言われた事なんだが探索する時は何もかも疑えと教えられた。
一応言葉ではネルを褒めているけど実際は警戒しかしていない。
「ならあれを開けてくるね~」
「あ、ちょっと待って――」
ネルは軽い足取りで宝箱の所まで行き僕の言葉を聞かずにガコッと開けた。
――ガシャンッ
「「あ」」