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「ミィザリィィィィィ!!!」
かれこれ五回目のシャウト。左肩をガッシリと捕まれている。
「ミィザリ」
ブン!!!
「ごふぅ!!!」
エリックの角材の振り下ろしが綺麗にきまる。男は地面に倒れていく。何故か花びらが舞っている。
「痛いじゃないですか」
倒れると同時ににょきっと起き上がる男。エリックは背中に変な汗をかいた。
「いやだって怖かったから」
「左様でございますか。しかしながら、いきなり人を撲殺しようとするのはどうかと思いますよ」
ハチャメチャなメロディーで肩を掴んだ挙げ句、超至近距離でシャウトするのもどうかと思う。
「そ、そうか。悪かったな。じゃ、じゃあ」
思ったけれども、エリックは逃げ出したくて仕方がなかった。
「おおっと! お待ち下さい! 」
「な、なんすか? 」
「ここであったのも何かの縁。先ずは自己紹介といきましょう」
「はい? 」
「私の名前はラインハルト・フォン・ローエング」
「それ以上はやめろ。リアルに支障をきたす」
「では、ラインハルトで。愛のまま我が儘に吟遊詩人をやりながら旅をしております」
「あぁ、吟遊詩人? すごいな。よくわからないけど。頑張ってくれ。じゃあな」
「お待ち下さい! 貴方は? 」
(チッ。逃げられないか)
エリックは腹を括る。
「エリック・スタンフィールドだ。勇者をやっている」
「まじか勇者。いてぇなこいつ」
ぶん殴りてぇ。
「コホンッ! 付いていったら面白そうだ。ケケケケ(なるほどなるほど。素晴らしき出会いでございますな! これは運命を感じますぞ!! このラインハルト、勇者様の盾となり剣となりましょうぞ!!)」
「おい、本音と建前が逆になってるぞ」
……。
…………。
「息子よ! 」
「違うから。無理矢理すぎんだろ」
「づれでっでくださいよぉーーー」
ラインハルトが体育座りで泣き出した。