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【03】 その姉妹、なかなか追放されない


挿絵(By みてみん)





 私こと、シロナちゃんとヴェインの意見は、最初から追放という事で決まっていた。


 プライドの高いクリムゾナもおそらく自らの追放の意に賛同する事だろう。

妹のナナハも盲目的なくらいに姉に従順。もうこれで『追放』は確定したようなものだ。



 メンバー間での問題といえばソーマだけ。


 彼は何故だかいつも『クリムゾナ姉妹を追放しない』という方向に話を進めようとする。

自分が勇者としてパーティーリーダーとして、中立の立場にいると見せかけて、実は頑なに追放しないようにと事態を丸く収めようとしている。


 おそらくソーマは自分の立場を弁えもせずに、クリムゾナ姉妹に何か特別な感情を抱いているのだろう。


 追放会議は毎回と言ってもいい程に似たような傾向とそれっぽいこじ付け的な内容によって締結を迎えるのだから。

その裏に潜んでいる真意に、この鋭敏で聡明なシロナちゃんが気付かないとでも?



 でも彼の愚行だって私にとっては想定内の出来事。


 私の密告に応えてついに天使が降臨したのだ。魔王やその他大勢まで現れたのは予想外だったけれど、それでも天使の力は絶大。

だから蚊が刺した程度の誤算など何の問題もならないのですよ。……フフフ





 これでやっと……クリムゾナを天界へ迎え入れることができる。



 クリムゾナへの戒め?粛清?天使による痛烈で熾烈な尋問、拷問……?その他諸々……?

そんなものある訳ないじゃない。それは単なる見せ掛けだけ。


 実は天使達はああ見えて痛みとか苦しみにすっごく敏感で、とってもメンタルが弱いの。


それを隠そうとして、あんなに尊厳と威風に満ち溢れた気格の高い態度を取るけど、本当は少し血を見ただけでも卒倒するくらいなの。

誰かが苦痛を感じて呻いたり泣き叫んだりしているのを見たら、それだけで天使たちもおいおいと泣き出してしまうくらいなのよ。


 イメージって本当に怖いもの。最近ではすっかり『人に裁きを与えにくる』ってイメージばかりが定着しちゃってる。

昔の天使といえば、裸でラッパを吹き鳴らしながらただ笑ってパタパタしてるだけの意味不明な存在だったのに。


 確かにメンタルが強くてオラオラでイケイケな部隊もあるけど、それはごく一部なのよ。

何故だかクリムゾナを激しくライバル視している『あの部隊』だけ。



 天使って本当はすっごく優しくてクリムゾナの禁忌だってずっと笑って許してたんだから。


 だから今回だって彼だってそう。碧空の熾天使セイファー・マグヌス。

 

 彼も表向きはすっごく怖そうに見せかけてるけど、本当はワンコやニャンコやコツメカワウソが大好きなとても心優しい熾天使。

彼が言ってる『直々の引導』ってのも実は酷い懲罰なんかじゃなくて、『クリムゾナを導いて神の道に引き入れる』方の意味合いが強い。


 疑わしいなら辞書を引いてみればいい。本当にそういう意味だから。

さっきも言ったけど、やたらと粛厳を込めた話し方をするものだから勘違いされやすいのだけどね。



 だから天使達の本当の目的はクリムゾナを『絶大な力を持つ天の救世主』として天界へ引き入れる事なのよ。


 それに妹のナナハの不思議な特質にも天使達は着目している。

彼女には何か秘めたる未知の力があるらしい。それが何なのかはまだ分かってはいないけど。



 姉妹が天界へ迎えられた暁には、この(わたしく)ことシロナちゃんも、その武勇と知略と功績が認められて天界への顧問として歓待されるの。

既に天使との密約は絶対的に交わされている。決してこの取り決めが揺らぐ事はないでしょう。



 これで私の密かなる計画は完全なる形となって昇華する。


 クリムゾナ姉妹を勇者パーティーから追放したと見せかけて、天使に引き渡したと見せかけて……。

本当はシロナちゃんとクリムゾナ姉妹は、秘匿なる神の領域で新たな形で巡り会うのよ。フフフ。


 今まで誰にも打ち明けたこともないし誰にも知られていない事だけど。







 実を言うと……。私はクリムゾナの事が大好きなのだ。いや、大好きなんて言葉ではもはや生ぬるい。

もう愛している。愛しすぎて崇拝している。彼女の事を尊く想いすぎて狂信してしまう程に。


 でも私には教皇の娘という立場がある。それに神に仕える聖職者でもある。

【清浄たる白のブリュンヒルド】という肩書きもある。私は全てのプリースト達の模範となるべき存在でなければならない。



 だから表向きだけでも大好きなクリムゾナを弾劾していなければならないのだ。

でもそのおかげか。聖女としての意に反した執行が(もたら)した思いがけない勤労所得があった。

それによってクリムゾナの私の扱いは途轍もなく酷いものになった。

分かりやすい程に露骨な嫌がらせだって幾度となく仕向けてくる。


 でもそれが私にとっては堪らない快感だった。

彼女の暴虐をその身に受けている最中、私は天にも昇るような心地よさに襲われるのだ。



 私が初めて淫らな享楽に目覚めたのは、クリムゾナの『プロヴォーク用の都合のいい肉壁』として、ビリビリの裸にひん剥かれて敵の真っ只中に人間投擲された時だったか。


 初めての経験になるそれは苛烈窮まる程に恥ずかしかった。最初は嫌悪感しか無かった。

本気で号泣もした。もうお嫁にいけないとも思った。私の中の清浄が穢されたと思った。


 でもクリムゾナが私に与えてくれた(よこしま)なる未知の刺激は、静粛で閑静とした私の中の邪魔でしかなかった硬い殻を一瞬で粉々に砕いてくれた。

それまで聖女として生き培ってきた、私の中のつまらない乙女はその時粉微塵になって掻き消えた。



 それからというものの、彼女に脱がされる度に私の心は至福の快感を得るようになった。


 もちろん表向きは激しく嫌がって見せてる。

そういう事は何度繰り返されても不思議と慣れないもので、その時が来るとやっぱり普通に恥ずかしい。

嫌がってるのも割と本気だし、泣いてるのも割と本気。


 でもそれは『イヤよ、イヤよ、も好きのうち』という例のアレ。



 彼女の手でひん剥かれる事を心待ちにするようになった私は、その時の事を思い返しては夜な夜な我が身を慰める日々。

クリムゾナの事を脳裏に抱きながら達する事もある。

これがもうすっかり止められなくなってしまったから、本当の私は聖女失格なのだ。


 でも私だって本当は普通の女の子になりたかった。

今まで恋する事さえ許されない世界に生きてきたのだから多少は恋愛感が歪んでも仕方ないと思う。


 そんな言い訳を繰り返しながら【清浄たる白のブリュンヒルド】の肩書きを遂行し続ける私。

私の力はまだこの世界にとって必要。教皇の代弁者としての立場も放棄する訳にも行かず。



 

 私は何も淫らな享楽だけに魅了されたのではない、とだけ付け足しておきたい。単なる淫乱聖女とは呼ばれたくない。

クリムゾナの何ものにも囚われない生き様が私の心を掴んで離さなかったのだ。


 彼女は不思議な魅力に溢れていた。私は完全にクリムゾナに心酔していた。



 『今日はどんな無茶苦茶な事をやらかしてくれるのだろう?』



 『ああ……。 もっとこの退屈な日常を粉々にぶち壊してほしい』



 聖女である私にはそれができない。でも彼女なら、クリムゾナにならそれが出来る。

彼女には何のしがらみもない。何て素敵な(ヒト)なのだろう……。


 っていうか。彼女にもっと酷い事をされて苛められたい。『クソ聖職者』といって罵られたい。

結局そこに戻るのかよ、って言われちゃうかもしんないけど……それでもいいの。


 いつしか私が密かに抱く慕情が彼女に知れてしまった時……。クリムゾナはきっと私の事を受け入れてくれるに違いないから。

クリムゾナの美しい細腕で抱きしめられて、そしてそのままぶん投げられたい。







 おおっと。あまり妄想が過ぎるといけない。今は追放会議の只中なのだった。

 

 あんまり破廉恥な事ばかりを思い浮かべてこの場で恍惚とした表情になるのは非常に不味い。

そうなればシロナちゃんの女の子が突然暴走して、今すぐ寝室に駆け込みたくなるかもしれない。



 今はまだ計画が完遂するまでの途中経過でしかないのだ。

いくら天使の降臨にまで持ち込めたといってもまだまだ油断してはいけない。



 事は慎重に進めなければ……。



 この計画が上手くいけばクリムゾナは『無序の紅の天使』として天界に迎え入れられる事になるのだから。


 彼女がどんな美しい姿の天使へと進化するのか。想像するだけでも私の胸が高鳴る。

それに天界へ昇れば、彼女の夢である『9999』ダメージにも大きく近づく事になるだろう。


 彼女らの狂った【ステイタス】だって神の力であれば、きっとすぐに元に戻せる。



 『9999』は天使達、いや。万物の神々の望みでもあった。実を言うと神々も世界の心理を解き明かせていないのだ。

『9999』ダメージを叩き出した者が消滅する理由だって未だ不明のまま。


 私がこんな事を言うのは酷く背教的だけど、あいつらは全知全能を謳ってる癖に本当は驚くほどに無能なのよ。

だからそれを隠すための賢しい小細工や印象操作ばかりをずっと繰り返している。



 なまじ物理的な力に長け過ぎているせいか、もう遥か昔の太古の時代から神々には何の進歩も無い。


 故に神界というものは酷く退屈な世界。何の変化もなく一定。新しい刺激も生まれない。娯楽の一つだって存在しない。

でもそれは神々も自覚していたから。だから神々はクリムゾナという暴虐で異質なる神性を強く求めた。



 それなのにクリムゾナは超が付くほどに神を嫌っていた。彼女はつまらない人間を激しく嫌う側面があるから。



 神託を現世へと伝える役目を担う【清浄と白のブリュンヒルド】である私は、時に神界の様子を垣間見る事もあるのだけど。


 確かに上界にいる神々は恐ろしくつまらない。あまりにもクソつまらなすぎて眺めてるこっちの精神まで削り取られてしまうくらい。

彼らは何のジョークも言わない。言っても多分無駄。だってユーモアの欠片もないんだもの。

彼らが笑っている所なんて一度も見たことがない。本当にずーっと真顔。


 何が楽しくてそこに存在しているのか不思議にも思う。たぶん神々本人らも疑問に感じてると思う。



 こんなものを全知全能だと思い込まされ崇拝させられてるんだから、信心深い人間が愚かしく育つのも仕方のない事ね。

一応は最高峰の聖女である私は、口が避けてもそんな事を口に出せないんだけども。


 でもそれが真実。神と天使とヒトの真の系譜なんてこんなもの。


 だって、こんな想いを抱いてる私なんかに最高峰が勤まるくらいなんだから。

だからこそ尚更、神々にはクリムゾナという逸脱した存在が必要なのよ。


 彼女さえいれば天界も神界も変わる。これは神の新しい時代の幕開けになるはずなのよ。



 それなのにつまらない神々はクリムゾナに嫌われて勧誘する事に失敗し続けた。それだけじゃない。

時には暴力に訴えて強制拉致を謀った事もあるそうだけど、彼女の激しすぎる暴虐の力は神でさえも容易く退けた。


 次元の魔王戦では『最終神の極光剣エクセリオン・キャリバー』だって使いこなして見せたものね。あれは絶対的な神の力そのもの。


 それを一応は人の身であるクリムゾナがいとも容易く唱えて、行使できるなんて……。

本当に素晴らしいわ。もう彼女こそが神の頂点に立つに相応しいのではないかしら?



 神々は苦悩したわ。どうすればあのクリムゾナを天界へと迎え入れられるのか。でも神々はアホだからいい策が何も浮かばなかった。

そこでついに白羽の矢が放たれた。神の矢に選ばれた特使。それがこのシロナちゃん、その人なのである。



 フフフ……。私の見事な知略と計略を以ってすれば、クリムゾナを追放と見せかけて天界へ送る事など造作もない事。

これが達成された暁には私も神の力を受け取る事になっているというのは先刻も告げた通り。



 クリムゾナとナナハ。そしてこのシロナちゃん。3人は天界で二度、巡り会う。

あわよくば……2人目の妹としてその永劫たる輪廻の中に迎え入れられたい。



 実を言うと私はクリムゾナとナナハの艶かしい秘密も知っているの。

平素は淡々と普通の姉妹を演じてる2人が、実はとんでもなく仲睦まじいという事を。



 例えば彼女達が食卓で見せる姿とか。



 もう半年は滞在している宿屋『竜の三つ首亭』で提供される『マンドレイクと砂漠ドレイクのオムレツ』という料理の一品目。

これはクリムゾナとナナハの揃っての大好物。


 でもマンドレイクもドレイクの肉もとても貴重なものだからいつも品薄のこの料理。

何とか料理にありつけても、大概一人前が限界。


 それを『ダイエットだから』と言ってごく自然な所作で、妹の皿に半分以上も盛り付けてしまう姉のクリムゾナ。

ダイエットってそんな細身で何をのたまうものか。彼女は本当に素直じゃない。でもその瞳の先にはいつも妹のナナハがいる。


 ナナハだってそれは同じ。お互いにお互いの好きな物を常に自然な所作で分け与え合っている。

その事に周りは気付いていないと2人は思ってるのかもしれないけど、それはもう完全なる周知の事実だった。


 2人は恋人のように仲がいい。これに気付いていないのは鈍感なヴェインくらいでは?



 それに時折、彼女らが見せる所帯じみた雰囲気も堪らない。


 誰にも気付かれないようにそっと妹の口を拭くクリムゾナとか。姉の世話を焼かんと常に奔走するナナハの姿とか。

そこには何の迷いも躊躇いもない。お互いがお互いの事を自然と必要としてる証。


 本人らはそんな雰囲気を滲ませまいと苦心しているようだけど本心は隠せない。2人の行動がそれを物語っている。


2人はもう、まるで仲のいい夫婦のよう。



 それに……本当はもっと蜜月な関係である事も私は知っている。


 周囲の目を盗んで人気のない場所で静かに抱き合っているのを何度も見たことがある。

見たというか、もう思いっきり覗いてるから。


 2人だけで夜中にこっそりと宿を抜け出すなんて日常茶飯事。

2人をいやらしい目で監視している私がそれに気付かない訳はない。


 妹のナナハの胸の中で微動だにもせず己の身を委ねている姉のクリムゾナ。

どっちかというと姉のクリムゾナの方が甘えん坊さんなのだ。それがまた堪らない。普段はあんなに暴虐的なのに妹にはこっそりデレてるなんて。


 なんて尊い姉妹なのだろう。それを見た時の私の胸は不思議な温かさと、少しだけチクッと痛む妙な快感を得るのだ。



 私にも一応姉はいるけど、残念ながらそうはならなかった。

うちの姉も暴虐的だった。でもあまりにも粗暴が過ぎてとうとう何処ぞとも分からぬ領域へ追放されてしまった。


 だから、という訳ではないけど、私はクリムゾナとナナハ姉妹の関係に憧れていたのだ。




 私はふと横目で追放会議の中にいる姉妹に視線を向けた。

会議の只中でも淡々とした姿を装ってる2人。



 でも必ずと言っていいほどクリムゾナの隣にはナナハがいる。ナナハの隣にはクリムゾナがいる。

どこに向かうにも何をするにも常に二人で一緒。まるで一心同体。


 彼女らの誓約の鎖は10メートルに及ぶらしいけど2メートルだって離れている所を見た事がないんだから。



 本当に羨ましい……。



 でも私はそんな2人に今は介入できない。むしろ敵対していなければならない。

この追放会議で見事追放の票を勝ち取って、彼女らを天使に引き渡すまでは……。




 私はソーマが何故か私に対してどす黒いオーラを向けてくる事に気付いた。


何だ……?この男は一体何を企んでいる?まさかこの期に及んでもまだ追放を妨害する気でいるのだろうか?



 というか追放会議が邪魔者どもによって荒らされ始めている。

一体何だというのだ。こいつらは……。




「ウゴアアアアアアアァァァ!! だから追放などさせんと言ってるじゃろうがァッ! こうなったら貴様のはらわたを喰らい尽くして……! フシュルルルルルゥ!」



「ついに本性を出したな魔王バラムデウス……! いいだろう! このセイファー・マグヌス様が直々に相手になってやろう!」



「うおおおおお! 私らも魔王さんに加勢しますよっ!天使が怖くて宿屋の主人がやってられるかってんだい!」



「おおー! いいぞ! 今こそ町人パワーを思い知らせてやる時だ!」



「及ばずながら我々闇の勢力も魔王側に加勢しよう……!」



 何も問題はソーマ一人だけではなかった。


 何処からともなく唐突に乱入してきた町人その他大勢。謎の組織に属する如何わしい面々。

そしてその最たるは恐怖の魔王・バラムデウスの存在。


 何故この愚か者どもはこんなにも私の計画を邪魔したがるのだろうか?神の力で裁かれたいのかしら?

天使と結託したシロナちゃんの力は絶大なのよ。いざとなったらこの邪魔者どもを全員ぶっ殺してでも……。


 私の手にあるライトイプシロンが密かな光を放つ。





 そんな只中に乱入してくる影がもうひとつ。



「やあ、諸君。 いいね、いいねぇ。 盛り上がってるねぇ。 ボクもこの追放会議に参加させて貰ってもいい?」



「誰だ貴様は……? この私の聖戦に水を差すとは愚かな。 貴様も神の炎で裁かれたいのか?」


 

「ヌヌグフウウウゥゥゥ! 部外者は引っ込んでろ! 喰らい尽くすぞッ! フシュウウウ!」



「アハハハ。 怖いナァ、魔王と天使のおふたりさん。 そんなにカッカしないで欲しいでよぉ。 それにボクは部外者なんかじゃないよ?」



 突如の乱入に露骨な敵意を(あらわ)にする熾天使と魔王。

対して飄々とした様子を崩さない珍妙な雰囲気を漂わせる謎の人物。


 一人称が『ボク』だけど彼女はどう見ても女性。女性というか幼女。ロリッ子。

その容姿は歳半ば20にも満たない風貌。そこはかとなく幼い。


 漂わせる雰囲気は大人びているが見た目だけでいえばロリッ子化したクリムゾナと大差ない。


 彼女はこの世界では見たこともないような不思議な意匠の装束を纏っていた。

その神秘的な雰囲気が彼女の幼さに相反し不思議な雰囲気を漂わせている。


 彼女は一体何者なのだろう?


 でもこれ以上の部外者の乱入は私の計画にも追放会議にとっても邪魔でしかない。ナンセンスで不用なネタでしかない。

なのでさっさと問い質して、事と次第によってはこの場から即刻追い出す事にしよう。



 私は謎の人物に粛々と問い掛けつつ、それとなく彼女を制する事にした。




「あの。 あなたは誰? 一体何処のどちら様なのです? 今この会議はとても重要な局面を迎えているのです。 出来れば邪魔をしないで欲しいのですが……」



「それは分かってるよぉ。 でもボクってば新たにこの世界にやって来た次元の魔王なんだけどなぁ。 そこのクリムゾナちゃんに爽快にぶっ殺された役立たずの後釜のね」



「へえ。 あなたが新しい次元の魔王さんなんですねぇ……」



「ふーん。 なんか前回のヤツより人間っぽいな。 しかも女かよ?」



「……かわいい。 ロリッ子でしかもボクっ子。 尊い……好き。」



 謎の人物はあっさりと自分の身分を告げた。


 それがあまりにも飄々としてるものだから、すぐには事の重大性に気付かずにめいめいと各々思うままに感想を呟く追放会議の面々。






「って……。 次元の魔王………?」



「そうボクが新しい次元の魔王。 この世界そのものをぶっ殺す存在だよぉ。 そんなボクをこんなに雑に扱ってもいいものなのぉ? ねえ、ねえ」



「――――!!?」



 『次元の魔王』という彼女の言葉に会議の場にいた全員が驚愕、戦慄して言葉を失うのだった。




まだまだ未熟な作品に評価とブックマークありがとうございます。

回を重ねるごとに淡々とした実況物語になってしまうのは避け、ずっと自分で読んでも一番に楽しめるような作品を執筆していくつもりです。この物語に常に変化と激動とご都合主義を――。

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