閑話 とある天才の独白
この国には昔からの名残で身分という風習が残っている。簡単に分けると、平民とそれ以外。この国の殆どの人は平民であり、平民がこの国の中心で特に言うことのない普通の人達なのだ。まあ、てことはそれ以外の人達は普通じゃないって事なんだけどネ!
で、普通じゃない人をざっくり分けると王族、貴族、特定の宗教団体、難民辺りが主なとこなんだとか。その中で今言いたいのは王族と貴族っていう昔っからいた人達についてなんだけど、この人達って普通の人との大きな違いがあるってこと。
回り道しちゃったけど、結局その違いってのが諸説あるんだけど私は呪いって呼んでる。その呪いがどんなものなのかっていうと、王族と貴族に女の子が生まれないっていうものなんですよ。
なんでそんなことになっちゃったかなんて言われても、私が生まれるよりもずっと前からそうなんだから、私に分かるはずもないのであった。
そして、長々と語ってつまんない話してきちゃったけど、最終的に大事なのは私が貴族の娘だってこと。そして私が天才だってことなんだよね。
話が違うって言うかもしんないけど、神罰だとか古代の研究者達の成果だとか言われているこの呪いを、私は生まれたときには跳ね返していたのだ。ほら、私って天才!
なんて言うと何言ってんだとか、言う人もいるけどこれぐらいの軽口は許して欲しいもんだネ!
だってさ、昔っからの当たり前を跳ね返しちゃった人が不自由なく生きられるわけじゃないんだよ? 寧ろ貴族といえば男って前提の社会に私の居場所なんて無いのだよ。
それでも私は自分が天才なことを誇りに思ってるし、満足してる。――いや、満足してた、かな?
「ほら、これで詰みだよ」
「参ったな……さっぱり歯が立たないや」
フフン、そうでしょう、そうでしょう。なんたって私は天才なんだからネ!
で、目の前で一緒に私と遊んでるのが私の双子のお兄ちゃん。剣ばっかり振ってる剣バカだったけど、良い遊び相手だったんだけどなぁ。
騎士になるとか言って学校に行っちゃうと、滅多に帰ってこなくなったんだけど、今日は珍しく帰省中ならしい。
まあ、それは別に良いんだけど、今日は様子がおかしい。百歩譲ってお兄ちゃんが普段から頭はおかしいとしても、今日は流石に異常なのだ。
いつもなら剣に関する話ばっかなんだけど、今日は口を開けば王女様、王女様。剣バカなお兄ちゃんらしくない。
世間にすら秘匿にされている奇跡の子、普通なら一目見ることも難しいらしいけど。なんでも先輩の縁とやらで会ったらしい。
ん……? てことは私と同じような人なんだよね王女様って。だったら、会ってみたいなぁ。
「ねえ、お兄ちゃん。私も王女様に会いたい」
まずは平和的な方法を試してみる。まぁ、間違いなくお兄ちゃんにそんな権限は――
「えぇ? 無理だよ、俺だって会いに行けるわけじゃないし」
無いよね。うん、知ってた。だから聞いたのだって一応だもの。
じゃ、忍び込む計画を立てないとね。ニシシ、いやぁ、楽しみだなぁ。