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依頼―3

 キースはお目付役として、しばらく俺について来てくれるようで部屋を出た後も、そのまま案内してくれる。周りを見る余裕なんて無かったから城から出る道も分からなかったので助かる。


 最後まで残った三人ね。

 勇者としてハズレだとしても、召喚されたからにはそれなりのスキルを持っているはずだ。

 以前に勇者が召喚されたのが約百年前。その時の勇者も、それ以前の勇者もスキルは強力なものだったと記録が残されている。

 今回は数が多いせいでハズレもいたのかもしれないが、それでもそれなりのスキルはあると思う。最悪、スキルが無くてもやる気と根性さえあればなんとかなるが。探索者の半分以上は良いスキルなんて持っていない。持っていたとして、無いよりはましだったりスキルのおかげで少し楽くらいのものだ。

 俺も恵まれた側の人間だが、上位クランのさらに上位は馬鹿みたいに良いスキルを持っている。最初に選ばれた勇者はそういった馬鹿みたいに強力なスキルを持っていたのだろう。


「騎士団と魔導師団が連れて行った勇者のスキルは分かりますか?」


 一番有能だとされていた勇者の力がどの程度なのか。勝つ必要は無いが、他の力がどのくらいかという情報は持っていた方が良い。

 それに、実力があるなら迷宮や討伐なんかで一緒になるかもしれないから、実力のある奴の能力は知っておきたいというのもある。


「一人は聖剣の召喚で騎士団長がすぐに引き取りました。騎士団はもう一人取ったのですが、そちらは盾と剣の技量に関するスキル持ちで、召喚された勇者の中で簡単に体力測定や手合わせをさせて、一番有能だった人物ですね」


 これぞ勇者と言った聖剣スキル持ちと、現時点で最も優秀な人材ね。

 その二人なら少なくとも使い物にはなるだろう。聖剣スキル持ちは他のスキルが気になるが、騎士団が取ったということは他も悪くはないのだろう。

 下手に恐怖心を抱かせさえしなければ、時間さえかければ使えるようにはなるだろう。訓練所で鍛えて簡単な魔物を倒させていけばいい。


「魔導師団は希少な回復スキル持ちと魔力量が多く三属性に適正のあった人物ですね。あと、近距離でも戦える魔法剣士系のスキル持ちだったはずです」


 回復スキル持ちは長期戦を見越せばいた方が良い。あとはバランス良く戦えるように有能な人物を取ったというわけか。


「しっかりと鍛えれば、その五人だけでもかなりの戦力になりそうだな」


「そうでしょうね。だからこそ、他の勇者には悪いですが外に任せたのでしょう。城に置いておくには経費がかかるので、先にポンとお金を出して、育ってくれれば良いなというところだと思います」


 まあ、そんなところだろうな。わざわざ外に依頼を出すということは、中にいられると邪魔だということだろう。

 見捨てたわけではなく、しっかりと任せられる人に預けたのだから、上手く育ってくれればそれから囲えば良いのだ。


 低コストハイリターン。それが出来るなら一番良いのは間違いないからな。あの報酬額でも国からすればそれほど痛い出費ではないだろうから。


 ただ、キースがこの話に乗ってくるとは思わなかった。ついてくるとは言ったが、それは監視の意味合いもあると思っていたが、勇者が育つかどうかは本当にどうでも良いのかもしれない。

 何故ついてくる?と疑問に思うが、別に見られて困ることも無いから、手伝ってくれるならこのままついてきてもらおう。


「あそこにいる三人ですね」


 門の前に立つ三人の少女。

 服装からして、前衛が二人に後衛が一人だろうか。いや、前衛らしき装備の内の一人は魔法も使えるのだろうか。杖も持っているが、他の装備は剣士のものだ。


「君達三人が余り物の勇者かい?」


「あ、余り物って! ……くっ! 間違ってないから言い返せないのが辛い」

「うっ……そうです……」


 余り物という言葉を聞いて肩を落とす三人。

 前衛なのか後衛なのかよく分からない少女が一番元気なセミロングの茶色い髪をした女の子。三人の中では一番背が高く、しっかりした雰囲気をしている。元気だし、見た限りでは運動も出来そうだが、残されたということはスキルが悪かったのだろうか。

 もう一人の前衛の少女は、自信がないのか少しおどおどした感じだ。髪は短めの赤い髪だが、前髪が少し目を隠していて、俯き加減も相まって暗く感じる。この子も見た限りではそこそこ動けそうだから、性格とスキルのせいなのかな?

 最後の一人は、完全に後衛型と言った感じの大きな杖を持った少女。長めの黒髪で一番背が低いから他の二人よりも幼く見えるが、聞いていた話では殆ど全員同世代らしい。この子は運動は苦手そうだな。人と話すのも得意ではなさそうだから残ってしまったんだろう。


「俺が君達の指導を行うことになったヘイレンだ。どの程度こちらのことを知っているかは分からないが、探索者で階級はゴールドの上位だ」


 探索者は能力と功績で階級が付けられる。下からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとなっていて、その階級の中でもそれぞれ下位、中位、上位と分けられている。

 この階級によって依頼が回ってきたり、依頼料が変わったりする。条件付きの依頼なんかは一定以上の階級が必要だったり、他にも探索者ギルドの利用の際に特典があったりする。


 他にも能力別ランクという、あまり使われることはないが実力をある程度示してくれるものもある。


「ゴールドの上位なんて、どこの大手クランのマスターかは知らないけど、私達を押し付けられるなんて可哀想な人ね」


「別にハズレくじってわけでもないさ。君達にやる気があるなら、ゴールドランクになれるくらいの実力は最低でも付けてあげるよ」


「ご、ゴールドランク!? わ、私達に!?」


 思ったよりも食いつきが良い。何があったかは知らないが、強くなりたいという気持ちはあるようで良かった。やる気があるなら問題なく教えられるだろう。


「その辺の話も、移動しながらしようか」

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