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狩り―2

 八層。まだまだ上層ではあるが、初心者からは少し抜けようかという階層。魔物のも群れで現れることが増え始め、トラップも少なからず設置されている。


「とまれ、シーナ!」


 キースの声でシーナが止まり、それによって全員の足が止まる。


「一体どうしたのよ?」


「感圧式のトラップだ。これ以上進むとトラップが作動する」


 キースの見立て通り、感圧式のトラップがあり、トラップが作動すれば奥の壁から矢が飛んでくる。

 矢とは言っても、この階層なら先端が尖っていないせいで刺さらないものだが、当たりどころが悪ければ大怪我にはなるだろう。


 シーナとリコの運動神経なら矢を避けることはできなくても、大怪我をしないように防ぐことはできるだろうが。


「戻るってわけ? 一発なら構えていれば避けれるわよね」


「無理ではないが、やめておけ。俺が解除してくる」


 前へと出て、そのまま足を進める。トラップの範囲に入るところでスキルを一つ発動させて、真っ直ぐ突っ切る。壁の穴に設置された矢を引き抜いてから、四人にもう大丈夫だと告げた。


「今のがあんたのスキル? 一体何をやったのよ」


「俺の持つ三つあるスキルの一つだよ。エアライド。魔力を消費して空中を歩いたり滑ったりすることのできるスキルだ」


 これのおかげで感圧式のトラップは基本的に回避できる。滑るように移動──周りの人から見ると、空を飛んでいるように見えるようだが、それのおかげで、長距離の移動もかなり楽にできる。

 高さと移動距離で必要な魔力が変わるから、あまり高くまで飛ぶのは魔力の消費的に厳しいが。


「便利なスキルね。戦闘時にも使えるなら、足場が悪くても関係ないじゃない」


 そこに気づくとは、戦闘をしたことが無いとは思えないな。

 周囲への警戒の仕方と言い、初心者とは思えないのは、リコがよくやっていたというゲームのおかげなのだろうか。


「あ! 奥の部屋にチーアがいます!」


 シーナの声に俺以外の全員が武器を構える。

 別に俺の指示なんて待たなくても良いのに、わざわざこちらを伺ってくるので、作戦通りにと指示を出す。


 距離としては少し遠いが、チーアは遠距離攻撃の手段を持たない。どうせ、シーナやリコに気付かれないようにと言ったところで無理なのだから、距離があるのは問題ない。

 駆け寄るシーナとリコ。それをサポートするために少し遅れて追うキース。半分ほど距離を詰めたところで、チーアがこちらを見た。

 あの二人の運動神経は悪くない。だが、初めての戦闘でどれだけ冷静に対応できるかは分からないから、二人にはギリギリ剣が届く位置で振るように言ってある。


 二本の剣がチーアに伸びる。それに反応してチーアも攻撃してくるが、リーチの差でチーアの攻撃は届かない。

 チーアの小さな悲鳴とともに、右腹と左腕に致命傷にはならない程度のダメージを与えた。


 すかさず、少し距離を置いてリコが詠唱に入る。剣を杖と持ち替え、シーナを盾にするように後ろに並ぶ。


「プロテクト! シーナ頼むわ」


「任せて!」


 ダメージを軽減するプロテクトがかかったことにより、チーア程度の攻撃なら顔にさえ喰らわなければ重傷にはならない。

 訓練で打ち合いも少しはしていたので、痛みくらいなら大丈夫だと判断したのだろう。踏み込みに迷いがない。


「……私の出番なかった」


 決めに行った一撃がチーアの体を捉えた。両断されたチーアが崩れ落ちたのと同時に俺とカノンが到着した。


 チーア一体程度ならこんなものか。相性も良いから万全の状態からなら余裕で倒せるな。


「これからカノンにも戦ってもらうから安心しろ」


「それならいい」


 戦えると聞いて安心したのか、杖をどんと地面に着く。リコが持つ指揮棒のような手持ち杖とは違い、カノンが使うのは身の丈程ある杖。

 魔法使いが動かずに戦う前時代的とも言われるこのスタイルは、カノンの持つスキルのためでもある。


「結構疲れますね」


 ほんの一瞬の戦いだったが、シーナの息が少し切れている。同調するリコも僅かに汗が滲んでいる。


 冷静に対応できたとはいえ、初めての戦闘でのプレッシャーはきつかったか。訓練でも命の危険が絶対ないかと言われればそうではないが、実際の魔物との戦闘はその比ではないからな。

 だが、ここで止めるわけにもいかない。こんな中途半端に実践をするくらいなら、型の練習か打ち合いでもしている方が有意義だ。


「そこは実践あるのみだ。二人とも魔物相手に戦えることが分かって良かった」


 特にシーナのスキルは良い。決め手になる攻撃があれば、チーアなんて隙さえ作れれば勝ちだからな。


 シーナのスキルである"無慈悲なる一撃"。反動はあるものの威力は絶大で、もう一つの"一点集中"とも相性が良い。この二つ組み合わせだけで、中層くらいまでならまともに当てることさえできれば、一撃で魔物を倒せるだろう。

 欠点としては、敵が多数だと一点集中が使えないということと、最後のスキル"遠距離攻撃不可"のせいで、魔法どころか弓や投擲すら使えない。

 まあ、剣一つに絞れるのは悪くはない。ソロで戦うわけではないから、遠距離は他の人に任せれば良いのだから。


 問題は残る二人か。

 リコの方は、敵が弱ければ問題ない。スキルの"オールラウンダー"と"全ては平均的に"のおかげで、前衛から後衛まで対応でき、成長も早い。敵が強くなるにつれ対応が難しくなるが、戦いやすい戦法で弱点をつけば良いのだから、最大火力不足以外はなんとかなる。


 カノンは……悪くはないのだが、ダンジョンを含め、敵がどこから来るか分からないような場所では真価を発揮するのが難しい。

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