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西方・王国建国(結末2)


 城門を開き味方を中に入れてから30分程経つと、首脳陣は城の中から出てきたのだが、その顔色は一様に悪い。

 あんなものを見て意気揚々としていれる訳は無いのだから妥当ではある。


「あれは・・・何ですか?尋常ではありません!」

「あれはねー、主の定めたルールを無視した奴の末路だね」

「君は?」

「此方の方は雷竜王様です」

「竜王だと!?このような子供がか?」

「あはははは、本来の姿に戻ってもいよ?パニック必至だろうけどね」

「それは、御遠慮願いたい」

「あはははは、だよねー♪んじゃあ僕は帰るかなぁ」

「雷竜王様御待ちを、名付けを御願いしたいのですが宜しいでしょうか?」

「ん?良いよ」

「有難う御座います」


 竜種の2人はその場を後にした。

 名付けは本来の姿で行う慣わし故に人が居ない場所へと向かった。


 そこへ残された者は沈黙して揃って何かを考えていた。

 その沈黙を破ったのは、トルムラート国王だった。


「彼奴あやつをどうするのだ?」

「どう致しましょうか?・・・ロダルグ公爵の意見を御聞きしたい」

「うむ・・・あれは差別・偏見の戒めで間違いないな?」

「間違い無いかと、伝え聞くものと一致しますので」

「ならば内外に公表する」


 シナト国王が肉塊となり国の運営が出来なくなった今、継承権1位のロダルグがシナト国の最高権力者となる。


「あの様な者が続出されても困るのでな、名称通り戒めとなってもらう」


 ロダルグの結論は中々に厳しい。

 自身の兄であるが、今一度差別・偏見の戒めを思い出すと共に徹底させる為に主要な街を巡回し数日間晒すと言う。

 その行為はデメリットが生ずる可能性を含んでいる。

 国王が差別・偏見の戒めを受けた事を周知とするのだから、王族、延ひいては貴族全体に懐疑の眼差しを向けさせる事となるやも知れない、懐疑の内容は人により違うものになるだろうが、一様に言えるのは求心力を失う事だろう。

 求心力を失えば、現体制に取って代わろうと企む者達が現れて国内に混乱をもたらす事も有りうるのだ。

 こう考えるとデメリットの方が大きい、にも拘わらず公表する理由は只1つ、目撃者が多すぎるからだ。

 シナト兵が約1万、反乱軍は守備隊の500人だったが主力が帰陣した今、話が広がるのは火を見るよりも明らかだった。


 話が広がるのを止められないのは箝口令を敷いたとしても同じだろう。

 人数が多すぎる上に勝者である反乱軍に強要する事はできない。

 例え出来たとしても大きな貸しとなる、それも何代も先の世代にまで背負わせる程に大きな貸しだ。

 その様な貸しを作るくらいならば公表してしまえ、ついでに不穏分子の炙り出しもしてしまう腹積もりなのかも知れない。


「晒すのか・・・ならば、トルムラートの厄介な貴族とその親族等を見せに行かす」

「・・・問題を起こしたりはしないだろうな?」

「分からん。だが、彼奴同様戒めを受けるやも知れん」

「・・・そう言う事か。分かった、だが無闇に混乱を来す様なら牢へぶち込む。更に、そちらの要望は一切受け付けんが宜しいか?」

「構わん。国として関与したくないでな。・・・1つ試したいのだ」

「?・・・試すとは?」

「うむ、差別・偏見と言うのは敵国だった国民に対して雑言を浴びせても適用されるのかをだ」

「ふむ・・・それは、程度によるのではないか?」


 ロダルグの言う通りだ。

 シナト国民のくせに、程度ならば子供喧嘩レベルであるから戒めは発動しない。

 しかし、シナトの豚共め、等の人を人として見ない台詞は戒めが発動する。

 更に言えば、同じ人種ひとしゅであるにもかかわらず、獣と揶揄する事も差別・偏見となる。


 この差別・偏見の戒めは至極簡単なルールで成り立っている、自分以外を同種であろうが多種であろうが取るに足らぬ存在。生きる価値など無い、人として認めぬ等と同意の言葉を口にしたら発動するのだ。

 頭の中でその様な事を考えているだけならば発動はしないのだ。


「程度か・・・ならば戒めが発動した者がいた場合、そやつも晒しに使ってくれ。晒した後は密閉せずに王都へと送ってくれぬか?輸送の費用は無論、予が持つ」

「よかろう」

「手数をかける。それでだ、ガムラミット侯爵よ、予らを如何とする?」

「どう致しましょうか・・・シナト国王があの様になるとは思いもよりませんでしたので・・・」

「確かにな、ならば問う。どの様にするつもりだったのだ?」

「国王同士で喧嘩をしていただくつもりでした」


 両国が派兵至る原因は、実に下らない子供の喧嘩と変わらない罵り合いが原因なのだから、子供の喧嘩同様に本人同士で決着を着けさる予定だったのだ。

 国王としてふんぞり返って居る2人の喧嘩、それ自体が子供の喧嘩と変わらぬものであったろうが、プライドだけは人一倍備えている者達だから、体力が尽きるか意識を失うまで殴り合っていたかもしれない。


「随分と悪趣味な事をさせようとしておったのだな」

「そうでしょうか?戦の理由を知れば国民は納得して頂けると思いますが」


 笑みを絶やさず言うファシリアスに対し少々苛つきを覚えたのだが、反論の余地が見つからず自身も納得する以外になかった。

 トルムラート国王は徐に天を仰いだ、色々と思う所があるのだろう。


「あのバカ者とは腐れ縁だった・・・同じ年に産まれ、同じ教室で学び、同じ歳で婚姻し、同じ年に娘が出来、同じ年に即位し・・・産まれながらに競いあっていた」

「陛下・・・」

「じゃがそれも仕舞いだな。どこかで捻れた彼奴は表舞台から姿を消す、予の勝ちだ!は、はははははは」


 勝ち誇り笑っている姿はどこか寂しげだった。

 突如競いあう相手が居なくなるのはショックなのだろう、出し抜く事を考え続けた相手、シナト国王は下手な肉親よりも近しい存在だったのかも知れない。

 決して仲が良い関係ではなかったが、笑って送るのがトルムラート国王なりの手向けなのだろう。


「おっさん」

「おっさん!?無礼であるぞ!」

「悪いな、こちとら根っからの庶民なんでな、貴族が納得する礼儀なんざ持ち合わしていねえんだ」

「む!?・・・」

「そんでだ、今日は旨い肉とクソ不味い肉を食わせてやる、楽しみにしときな」

「何?旨い肉と不味い肉?」

「あんたら全員にな」ニヤリ


 言い終えるなり雷竜王と砂竜の方へ向かうウィンザーであった。


「なんなんだ!彼奴は!」

「ウィンザー殿はいつもああですが・・・確かに礼儀とは程遠い方ですが、無礼と言う程では無いと思いますが」

「庶民でも口の悪い方ではあるが、節度はあるな。しゃしゃり出た所は見ていないな」

「それにしても肉ですか、前回と同じ肉ですかね?あの時は二脚トカゲでしたね」

「二脚トカゲ!・・・食えるのか?」

「ええ、中々の味でした」

「ほう、また一興と言った所か」

「では、込み入った話をしたいと思いますので此方へ」






「ぐあっ!なんだこれは!」

「クソ不味いだろ。熱鳥ヒートバードの肉だ」

「これは度を越しておるぞ!」

「あははは、その気持ちは良く分かる。次はこっちを食ってみな」

「む!・・・また熱鳥か?」

「ちげーよ、こっちは砦猪フォートレスボアだ」

「砦猪とな・・・・・ほう!これは旨い!」

「だろ!不味いのを食った後だと旨さが増す気がすんだよな」

「成る程、その様な意図があったのか。・・・お主は様々な物を食しておるようだな」

「まぁな、殺った生き物は不味くても食う様にしてるからな」


 食を通してウィンザーとトルムラート国王が意気投合し始めている隣では。


「ほう、この熱鳥と言うのは中々の珍味だな」

「えぇーそうかなぁ?不味くは無いけど美味しくも無くない?」

「・・・それは属性の違いではないかと」

「そっか!君は地属性だったね」 

「はい、この肉は大地の恵が染み込んでいます。食べるならばこの様な肉が良いです」

「そっかそっかー、ならさー、その山を縄張りにしちゃえば?」

「・・・その山は金剛様の寝座ねぐらに近過ぎますゆえに・・・」

「ならさー、縄張りを持たないで街に住んだり放浪してみるのはどうかなー?そんで、たまに捕りに来るとかさ」

「・・・街や放浪・・・か」


 新たな指針を示され考えを深くして行く砂竜と、陽気に肉の追加を頼む雷竜王の向かいでは。


「コーウェン、賠償はあれで良かったのか?もっと取られるものと思っていたのだが」

「あの程度が妥当だと思います」


 シナト国へ請求したのは、金貨1000枚分を銀貨でと、ルクナガルト領内にある王家直轄の街のみであった。

 普通に考えれば少ないのやも知れないが実際は違った。


 まずルクナガルト領とコーウェン伯領はシナト国から離脱する。

 これは、シナト国にとっては北辺の領土を失う事になる、そこが他国となるのはメヤ公国、延いては内海での交易に掛かる関税が増える事になる。

 賠償を多くせずとも関税による収益を見込めるのだから、最低限の賠償、兵士への恩賞分しか求めなかった。


 そして直轄領についても、自国内に他国領があるのは問題にしかならぬ故に請求したのだった。


「あの街は王家所有ですし、国としての痛手は低いのでは有りませんか?」

「うむ、あの街の税は全て王家へと入っておる」

「ならば王家に我慢してもらうまでです」

「儂はそれで構わん、王家と言っても殆ど国王の懐に入っていたからな。なくなった所で痛手でもなんでもない」


 肉塊となった実の兄を批判するロダルグとコーウェンの横では。


「ロブション殿、領地の件はあれで良かったのですか?」


 ロブションの所領はトルムラート中西部にあり、現状では飛地となってしまう。

 それを回避する為に、ガムラミット領に隣接する場所と交換をする事が賠償に盛り込まれた。


 ロブション男爵の領土はロブションの長年の成果が実り、作物の収穫量が他領より秀でていた為に、トルムラート側にも異論は無くすんなり受け入れられた。


 バグラリアが、あれで良かったのかと言う理由ロブションが今後統治する土地に有った。

 土地自体は5割増ほどになるのだが、税収や収穫量は半分以下になってしまうのだ。


「バグラリア殿、貴殿が産まれた頃のロブション男爵領の税収などご存知か?」

「いえ、知りません」

「今の3割程だったのですぞ」

「まっ、誠ですかっ!?」

「王都に戻った時にでも調べてみると宜しい。しかしのう、気候・土・水が違う、つちかったノウハウは役立つじゃろうが試行錯誤を繰り返せねばならんだうな・・・クックックッ、面白い!」


 環境の違う地で領内を富ませる仕事が出来、やる気と歓喜の溢れるロブションを横目にラグナリスとファシリアスはウィンザーの方に歩みを進めていた。


「ウィンザー殿」

「ん?」

「此度の報酬ですが・・・」

「他の奴等と同じで良いぞ」


 本来ならば、この様な場所でする話ではないのだが、ウィンザーの性格上改めて場をもうける位ならば今言ってくれなる。

 侯爵はそれを見越していた。

 もちろを当人がそれを嫌えば、場を改める気でもあった。


「それがそうも行かなくなりました」

「ん?」

「シナト兵の間では、ウィンザー殿1人に負けたと思っている者が多数を占める様なのです」


 ウィンザーを先頭に3人で無人の野を行くが如く敵中を突破し、精鋭たる近衛隊すらも赤子を相手取る様に往なし国王を捕らえ自陣へ連れ帰ろうとし、道中で差別・偏見の戒めを受けた国王を連れ帰る。

 事情を知らぬならば、誰がどう見てもウィンザー1人のなした事となってしまうだろう。


「・・・で、侯爵さん達は俺にどうしろと?」

「はい、居を構えて頂きたい」

「そうなるわな、だけどなぁ・・・」


 自身は目標に向けて修行をしている、一所ひとところに留まっていては達成出来ない目標。

 侯爵達の望みは叶えてあげたい気持ちは有るが、自身の事を優先したかった。


「常駐して頂かなくても構いません。帰って来る場所としてもらえるだけで良いのです」

「・・・それで良いなら構わないが・・・良いのかそれで?」

「はい、居が有り我々と繋がりが有るるのが重要なので」


 居と繋がりがあるだけで十分なのは端的に言ってしまえば、攻めて来るとウィンザーの怒りを買うよ、であった。

 シナト軍はウィンザー1人に負けたと思っているので、それだけで十分と判断をした。


「なら、良いか」

「ありがとうございます。それで、戻った時は行った場所の話などを聞かせて貰いたいですね」



 次の日にはトルムラート国王、ロダルグ公爵と約定書を交わし、これを終戦の合意とした。

 トルムラートとシナトの戦争についても前シナト国王が戒めを受けた事で、これ以上の争う事は不毛と意見が揃い、互いに賠償などは要求しない事を取り決め終戦とした。

 

 終戦より3日後。

 反乱軍は完全な独立を宣言し新たに国を興すとなった。

 初代国王はラグナリス。

 その妃にファシリアス。

 国名を拠点としていた中洲廃城の正式名称をそのまま使いアルオシェルとした。


 その発表が有った頃、新しく国境地帯となった街道を歩く1人の大人と3人の子供の姿が有った。


「さぁて、ここいらからシナトだよな?」

「・・・多分」

「ウィンザー様ー、シナトにはどんな美味しいものがありますかねー?」

「知らん」

「えー!楽しみじゃないんですかー?」

「楽しみだけどな、知らんもんは知らん」

「あはははは、シナトの先にあるくにならばっちゃんに聞いた事があるので少しは知ってますよ」

「ん・・・ワニってのが美味しい」

「ワニ!?・・・楽しみですねー♪」

「他にも、馬の亜種なんかも美味しいと・・・


 未だ見ぬ西方南部の食材の話で盛り上がるウィンザー達であった。


 

次話から主人公のジンの話しに戻ります。


が、


冒頭のシーン・・・個人的にキライなシーンなので時間がかかるかも知れないです。

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