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西方・王国建国(決着3)

 中洲廃城の守備兵500人は右往左往していた。

 防壁を築き門を増やし防御力を上げたとはいえ中洲廃城での初の防衛戦なのである。

 しかも攻め来るシナト軍1万に対し防衛に当たるのは、たったの500人なのだ、何をどうすれば良いのか判断に困るのは必至な事で、誰にも責める事は出来ない。

 悪い事は続くもので・・・


「隊長!竜が!竜種がこちらへ向かって来ています!!」

「な、なんだと!?」


 反乱軍首脳は砂竜が陣営に居る事は伏せていた、竜種というのは1体でも1軍を圧倒する力を持っていて古い個体ともなると1国を壊滅に追いやるのは簡単なのだ。

 その様な竜種が味方にいるとなれば、勝利を楽観視する者が多く出ると考えていたのだ。

 この戦いはあくまで人の戦、竜種には関係の無い戦だからして極力その力を借りたくはなかった。


 しかし、最終兵器が如く竜種が味方に居るというのは首脳陣営にも少なからず影響を与えていたのも事実だ。

 ウィンザーの砂竜を連れて中洲廃城の防衛に当たると言うのが最たる事である。

 

「む!?消えた?」

  

 竜種は向こう岸に着陸した直後に姿を消した。

 そして、暫しの後に門を潜ってやって来たのはウィンザー一行だった。


「ったく!だらしねぇな!なにグデグデになってんだ!お前の出番は着いて直ぐだと言ったろう!」

「ううーでもー速すぎですー目がグルグル回ったですーううー」 

「うだうだ言ってねえで、さっき言った事をやってこい!ラキ、クロ、ちゃんとやるか見張ってくれ」

「はい」

「・・・りょ」

「りょって・・・分かるからいいけどよ・・・」 


 呆れ顔のウィンザーに構わず3人はシナト国側の防壁へと向かった。


「皆さん、先程竜種が飛来するのが見えたのですが・・・何か御存知ではないでしょうか?」

「・・・御存知だったらどうするんだ?」

「え?」

「御存知ではだけど、戦闘に協力してもらう訳にはいかねえぞ?」

「な、なぜでしょう?」

「竜種に頼って勝つと、お前達の勝ちじゃなくなるぞ?竜種が勝った事になるんだぞ」

 

 竜種に頼って勝つ。

 それは相手に『竜種だから負けた』と思わせるだけだ。

 竜種がいなければ勝てたとしか思わない。

 だから、竜種がいなくなれば再度攻め込んで来るのは目に見えている。


 ウィンザーも竜種に頼る事は反則、最後の手段と思っている。

 最後の手段と言っても、直接戦闘をしてもらうでなく、中洲廃城の広場に本来の姿で居てもらうに留める考えだった。

 ただ居てもらうだけで、敵は廃城に足を踏み入れる事ができないはずだからだ。


「竜種を頂点にした国にするってんなら別だけど、そうじゃないんなら頼らないのがいいんじゃねえか?」

「・・・確かに、確かにその通りです。しかし、今回の防衛は・・・」

「大丈夫だ、なんとかなる!その為にも皆には頑張ってもらうぞ!」

「本当になんとかなるんですか?」

「正確にはなんとかする!だ。やるかやらないかだ」 


 そこまで言うとウィンザーはアムネジア達の後を追いシナト国側の防壁へと向かい歩きだした。


「一理あるかの」

「まぁね。しかし、言葉の足りない輩だねぇ。隊長さんや、竜種に頼って勝ったら戦争は長引くよ。疲弊しきって出来た国は早々に滅びるのが落ちってもんだ」

「あんたも言葉が足りてないさね。隊長さんや。敵が負けるのは竜種にであって反乱軍にじゃない。そうなりゃ、竜種が去った後に攻め込んでくるのは目に見えてるさね。その辺りも含めて考えてみるさね」


 ゴゴゴゴ


「おっ!エルフっ子がやりおったようだな」

「ありゃ・・・思ってたよりも高いさね」


 ラキュアとオウバイの見詰める先には2本の塔が建っていた、塔同士の間隔はさほど広くはなく4メートル有るか無いかといった所だ。

 その塔はアムネジアの【土壁【アースウォール)】を応用して作られた物で高さは15メートル程もある1辺が2メートル程の正方形の土柱だ。

 特徴があるとすると、1辺に幅1メートルの傾斜のついた壁が設置されていた。

 その壁の傾斜は70度程あり登るのには苦労する角度である。

 

「どれ、ちょいと見に行くかね」

「そうさね」


 2本の土塔は間近で見ると中々に威圧感があった、土塔は丸太で作った防壁の門柱を覆って建っており、門前に立つと嫌でも目に入った。

 更に丸太防壁は門柱同様に土で覆われ厚みを増していてる、と同時に弱点であった耐火性も補われていて破壊するのが困難になっていた。

 しかし、門自体は木製のままであった。

 理由は至極簡単、脆い箇所を設け攻撃箇所を集中させる為である。


「ラキメア!クロト!敵は見えるか!?」

「・・・見えない」

「まだ、来てないです」

「あいよっ!それじゃ、腹拵えでもしとくかね」

「えっ!ご飯ですかー!?私も行きますー♪」

「お前はやる事をやれっ!」

「えぇーっ良いじゃないですかー、まだ見えないんだしー」

「見えたら3秒で出来るか?」

「無理ですー」

「じゃあやれ」

「ウィンザー様のイジワルー!ご飯は作る所から見てご飯なのにー」


 食い意地の張ったアムネジアの意味不明な理屈は、見て作り方を覚える為なのか?はたまた、作っている過程を見て出来上がりの味の想像をする為なのか?

 いずれにせよ、調理過程をアムネジアが見る事は無かった。

 

 腹拵えをして1時間程後にシナト軍が見えるようになった。

 更に1時間経過して土魔術で強化した防壁へ先頭部隊が到達した。


「それじゃ手筈通りに頼むわ」

「あいよ、ほれ!オウバイ行くよ!」

「言われなくても分かってるさね」


 ラキュア、オウバイ、ラキメア、クロトは土塔の上に向かい跳躍した。

 4人の役目は敵頭上に人頭サイズの土玉を投げ落とす事だ。

 石の方が被害を負わせる事が出来るのだが、落とした石を壁や門に向かって投げられてしまい早期に突破される事になる、その点で土玉ならば人や地面に衝突した際に砕けてしまうので再利用される心配がないのだ。

 その土玉が、それぞれの塔に100前後、土玉が勝手に落下しないためのストッパーとして土柱が9本ある。

 戦果としては微々たるものだろうが多少の戦果が上がるのは間違いない。


「敵が密集してきたね、やるよ!」

「応さね」


 言い終わると2人は土玉を投げ始めた。

 その球速と精度たるや狙われたら密集地帯では回避不能なものだった。

 1玉1玉が全て命中していった。

 当たった者は兜を被っているいないに関わらず昏倒した。

 そして、周辺にいた者も衝突による土玉の四散した破片で軽傷から昏倒までの被害を被ったのだ。


 ものの10分程で土玉・土柱を投げ終わり退くと思いきや今度は、傾斜のついた壁を倒した。

 壁は土塔に接着しておらず自立していたのだ。

 よって倒す事が可能だった。


 15メートルの土壁が倒れ迫るのを平然と見ている事などできる訳がない。

 シナト兵は、その場から去ろうとするのだが、門前である為に過密度合いが高く思う様に動きがとれず、かなりの人数が下敷きとなった。


 倒した壁の効果を見届けた後に土塔の上にいた4人は防壁内へと降り立った。


「よし、仕上げだ」


 仕上げは簡単なもので、単に土塔の一部を消失させただけだったのだが、その消失のさせ方が絶妙だった。

 土壁が門に対して直角気味に倒れたのだが、土塔は45度で倒れる様に斜めに斬っただけだった。

 その効果は中々に大きく、土壁倒壊で更に密集した所へ土塔の倒壊だったために多数の兵が下敷きとなった。

 更に倒壊し四散した土の量も多く破片による被害も馬鹿にならない人数を巻き込んでいた。

 こうして、反乱軍は1人の被害も出さずに500人を越す戦果を上げたのだった。


 しかしシナト軍は焦らない。

 圧倒的な数的優位にあるので、戦意が著しく低下した前線を後退させ新たなる部隊を前線へと向けたのだ。

 反乱軍はこれに対抗して防壁内から土玉を投げ出していた。

 防壁上から投げないのは、内部の方が大量に土玉を置いておけるし、欲をかき狙いをつけて投げる輩を出さない為にだ。

 内部より適当に投げる土玉は何処に飛ぶのか分からない故に、シナト兵は常に頭上を警戒していないといけなくなり門への破壊工作がままならなくなるのではないかと予測して行ったのだが、全くの的外れだった。


 土玉を投げていたのは主に守備兵だったのだが、間違って門に土玉を当てるのを嫌い、門付近へと投げる者がいなかったのだ。

 シナト兵の地道な破壊工作が実り門が開いた。

 ここぞとばかりになだれ込んでくる兵であったが、入って直ぐの所に丸太が刺さっていて左右に別れて進むしかなかった。

 丸太は沢山は刺さっておらず直ぐに高さ2メートルの木柵に変わったが、後から後からやって来る味方に押されて乗り越える者は居なかった。


 木柵の内側に通じる隙間は4箇所あったのだが、そこにはウィンザー、ラキュア、オウバイ、マドラムが陣取り内部への侵入の障害となっていた。

 そして木柵の内側からは、またもや守備隊による土玉の投擲が行われた。


「投げるもんが無くなったら教えろ!」


 返答を待たずにシナト兵へと斬りかかったのだが・・・何か可笑しい。

 いつもの様に一撃で屠る勢いが無く小手先で嬲る様な剣の振り方をしている。


ーーくっそ!めんどくせぇ!自分で言っておいて何だが、めんどくせぇ!


 それはウィンザーの策の一環によるものだ。

 敵を切り伏せるのは簡単、しかし切り伏せてしまうと重傷者や死体が積み重なっていってしまう。

 積み重なってしまうと、柵を越える土台となってしまう。

 それは避けねばならない事だから、戦闘続行が不可能な位に負傷させて、自ら後退させねばならなかった。


 これは明らかな差が有るならば楽に行えるのだが、ウィンザーはまだ途上中で加減する程度では後退する程の傷を負わせる事が出来ていなかった。

 腕や足の骨折程度で良いのだか、剣の斬れ味が良すぎ儘ならず、いっそ拳で殴り飛ばす事も考えていた。

 ウィンザーの膂力があれば可能だが多対一ではリスクが大きい、どうするか考えていたところに。


「土玉が無くなりました」

「分かった、両隣に合わせて第二まで後退だ」

 

 他の箇所も、そろそろ土玉がなくなる様で周囲の様子を伺う者がいた。

 守備兵達は柵を越えようとする者に一撃を加えつつ第二柵の中へ入り出入口の防衛しつつ散開していった、再び土玉を投げる者、柵に張り付き乗り越えて来る者に一撃を加える者。


 ウィンザー等、第一の出入口にて粘っていた者達も守備兵が第二に入り終わると急ぎ第二の出入口に向かった。


「坊や、あんたは少し休んどきな」

「休むなら婆さんの方だろ?」

「あんたは手加減が下手みたいだからね、次の防衛の方が向いてる」

「だけどよお・・・

「次はあんた1人でやってもらうよ、そん時に休ませてもらうさ」


 何も言い返せなかった、実際手加減は難しかったし、思う様に数を減らす事は出来ないし、負担を増やす結果になり兼ねないのはウィンザー自身が良く分かっていたのだ。


ーーくそっ!もっと、もっと強くならねえと!


 強くなる事への意気込みを新たにしている際も戦闘は続く、第一同様の戦闘で代わり映えはしなかったが、守備兵の士気は上がっていた。

 20倍以上の敵を翻弄している事が要因のようだが、的外れもいいとこだった。


 これまでの戦闘で、再度前線へと来る事が無い数は高々1500位だろう、下手をすれば1000に到達していないかも知れないのだから。

 敵は少なく見積もっても9000は残っている。

 この第二柵の防戦で減らせたとしても200がいいところだろう。


 土玉が無くなり防衛隊が橋への門を潜り廃城まで後退をし終わり防衛の最終段階へと突入した時のシナト兵の被害は死者200名前後、戦闘不能負傷者1000名強、軽傷者1500名強だった。

 圧倒的な不利はまだまだ覆る気配すら無かった。


「よぉしっ!こっからは手加減はいらねえっ!死にたいかかって来いっ!ウィンザー・カートライトが相手になっってやるっ!」



 

 

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