西方・王国建国(対極の将軍8)
久し振りの投稿です。
待っていてくれた方、遅くなってすみません。
「なんだと!?戦闘をせずに武威行為のみに遵守せよだと!?なぜだっ!」
「王の御命令なれば・・・」
「だから!その理由が有るだろう!」
「・・・ロブション男爵が行方をくらませた事に関係が有るかと推測致します。これはあくまで私の推察に御座います故、定かではありません」
「ロブション殿が・・・」
ロブション男爵はこの指令が届く2週間前に持ち場であるラモネズ川に面した砦の守備を放棄して行方不明となっていたのだ。
トルムラート王国陣営は満場一致で孫娘の下へ参じたものと結論付けた。
他に行方をくらませる理由がないのであるから至極当然の結論である。
しかし、ロブション男爵は行方をくらませる気は微塵も無かった、とある人物による誘いがあり孫娘の本へ参じる事に方針を変更したのだ。
そのある人物とは・・・
シナト王国のコーウェン伯爵、ルクナガルト侯爵の叔父である。
そのコーウェン伯爵はロブション男爵の居る砦に対抗する為に作られた砦に防衛の為に駐在していたのである。
そして、何度目かの小競り合いの時に偶然敵指揮官を見つけ出したのだった。
その指揮官が見覚えのある人物で、何処の誰であったかを思い出した時に思考が高速で巡りロブション男爵を伴い甥の本へ参じる事にしたのだった。
「ロブション殿、御久し振りに御座います」
「コーウェン殿、久し振りじゃの。壮健そうで何よりじゃ」
「して・・・宜しいのでね」
「うむ!儂1人ならば参じる事は無かったが、コーウェン殿も参じるのであれば勝機は過分に見いだせるのでな」
「私も参じる事に躊躇はしておりました。しかし、何の因果がロブション殿が近くに居ると知りこの計画を立てたのです」
「・・・なるほどの、儂ら2人の兵力を併せれば少なくとも5000にはなる、数の上での不利を解消する程ではないが士気の高揚には役にたつの」
「はい・・・ところでロブション殿はとこまで情報を掴んでおいでですか?」
「正直なところ、何も掴んでおらんのじゃ、なぜに勝ち続けているのか不思議でならんのじゃ」
「そうですか、では私の知る限りの情報を教えます」
ロブションもコーウェンも国にとっては知恵袋的な存在にもかかわらず国から情報が下りてくる事はなかった。
それは仕方のない事だった、反旗返したのが肉親なのだから。
しかしコーウェンの自領はルクナガルト侯爵領に隣接している為にロブションよりも多くの情報を得ていた。
一つ、両侯爵家が長年匿っていた人狼族と竜人族が参戦している事。
一つ、先代の侯爵や領民が現侯爵の判断に賛同している事。
一つ、カートライトが味方している事。
「なんじゃと!カートライトじゃと!」
「はい、両国の初戦はカートライトに翻弄され勝ちを得たとの報告でした」
「左様か・・・カートライトがか・・・」
「2日前に届いた知らせによりますと、人狼族とカートライトはトルムラート王国次陣に当たるらしいです」
「ふむ・・・誰が指揮官になるのかは聞いては居らんが、恐らくはパグラリア殿であろうな」
「水軍将がですか?」
「うむ、1000や2000を率いるならば他にも居るが万近い人数となるとパグラリア殿しかおるまいて」
「・・・なる程、シナト側も万近いとなると・・・ロダルグ公爵くらいですね」
「猪か、ふむ・・・」
ロブションがロダルグを猪と評したのは的を得ていた、彼の用兵は用兵と呼べるほどではないレベルなのだ。
個の武を頼り尊重して各自自由に戦闘を行わせる、只只前進有るのみの先方しか使わないのであった。
この突撃は少人数ならは効果は有るのだが、人数が多くなるに連れ敗北の色が濃くなってくる。
個の武に自信がある者は押し合いへし合い我先にと進み武を示すことを誉としている者が多い。
それが多数になると後方に居る者は示す機会が薄く士気下がってしまい注意力も閑散となってしまうのだ。
なので側面からの急襲などには脆く敗北してしまう事が多かった。
「決まり・・・
「ですね」
「うむ、戦端を切ったら後方より急襲をかけ一気に殲滅じゃの」
「その際に輜重隊も虜獲していまいましょう。食料・武器は多いに越した事はありませんしね」
「自分達の食い扶持位は持参せんと孫に嫌われそうだしの」
「同感です、甥の冷たい視線は御免被りたいですからね」
「ほっほっほっ・・・して、どのようなルートで向かうか決めておるのかの?」
「はい、どちらかの国内の街道を使おうと思います」
「街道とな?大胆じゃの。まぁ意図はわかるがの」
「しかしロダルグ公爵を急襲するならばシナト側を行くのが妥当かと」
「そうじゃの」
かくしてコーウェン・ロブションの部隊はシナト王国の街道を北上する事となった。
しかし、ロブションには一抹の不安があった、この一連の出来事は自分達を陥れるための罠ではないか?と。
その不安も行軍中のコーウェンのとった行動によって大幅に軽減された、コーウェンは供回りを1人も於かずに単身でロブション隊に居るのだ。
その行為を好意的にとるならば、罠ではないと言う意思表示、悪意を持ってみるならば、この程度の兵数ならば単騎で突破できる、と言う事になる。
しかしコーウェンは武威によって名を馳せた訳ではない、政策や用兵によって名を馳せた頭脳派であるから、単騎突破ができるとは思えない。
なのでロブションはコーウェンを信じる事にした。
その大胆な行動をとったコーウェンもロブションと同様の不安はあった。
交戦した敵指揮官がロブションの配下の者だと思い出し、今回の事を提案する使者が戻った時にロブション自らが同行していたのだった。
即決即断する辺りはロブションらしいと思いもしたが、勘ぐりもあったのだ。
自分がこの砦に配置されている事を承知していて配置されたロブションなのではないか?
だとすれば、この即決即断は策略の一環である可能性が高い、と。
しかしコーウェンは思い直す、この計画は自らが画策し実行に移したのだ、その計画に即決即断をし信じ便乗してくれたロブションを疑うのはお門違いも甚だしい。
むしろ自分がロブションを罠に掛けようとしていると疑われている可能性の方が高い。
ならば、その不安を払拭し信じてもらうのが筋であろうと。
そこから考え至ったのが単騎にてロブション隊と行動を共にする事であった。
――1週間後――
コーウェンとロブションはロダルグ公爵の部隊を発見した報告を受けた。
その行軍は隊伍がゴチャゴチャで正確な人数を把握出来なかったが総勢1万程と推測された。
「ふむ・・・隊列を乱して行軍する事に有効性があるとは思わなんだ、猪めに教えられるとはな」
「そうですね、人数の把握や規律などを考えるとどうしても隊列を整えての行軍になりますからね」
両部隊の斥候の報告に大きな開きがあったのだ。
最初に届いた報告は、8000~10000の人数だったのだが、次に届いた報告によると10000~12000となっていた。
最大で4000の開きがあるのだ、この差は両部隊の総数と1000程しか差がない。
「誤差は兎も角、少なくとも1万はいると見るのがよさそうですね。それにしても・・・これでは奇襲を仕掛けるにしても、どこへ攻撃すると効果的なのかわかりませんな」
「そうじゃの、本陣は厚いのじゃろうが、全体的に厚いのか薄いのか分からん、分からんから本陣の場所も特定できん」
最小限のまとまりだけを保ち行軍するロダルグ軍は、数個の円が連なっている陣形だった。
その円は人が多いから形成されているのではなく、距離をとり行軍している部分もあり範囲の割に人数が少ない箇所もあったり、逆に人が密集し円を形成している箇所もあったのである。
しかも円の形は変動しており、人数も一定ではなかった。
これでは奇襲を仕掛けるにはリスクが大き過ぎた、人数が少ないと見越し奇襲を仕掛けるのも、いつ人数が増えるか分からないのでリスクが大き過ぎる。
「当初の予定通りですね」
「それしかないの」
――3日後――
「・・・異様な形になりおったの・・・」
「えぇ本当に・・・」
ロブションとコーウェンがロダルグ軍を発見し3日の後に反乱軍との戦端は開かれた。
陣形を整え先に攻撃を仕掛けたのはロダルグ軍だった、元々陣形などは無視する傾向が強かった為にものの数分で陣替えを終わらせ即座に攻撃へと移ったのだ。
反乱軍はと言えば、陣替えもそこそこに攻め込まれてパニックに陥っているように見えたが、攻撃を防ぎつつ陣替えを終わらせた。
この時点で可笑しいと本来なら気が付くべきなのだが、ロブションもコーウェンもロダルグ軍の陣の詳細を知る為に激突時を注視していなかったのだ。
2人が可笑しいと気付き始めたのは、反乱軍の両翼が左右に移動を始めた時である。
当初、逃亡を計っているのかと思ったが伸びた両翼がロダルグ軍の側面に襲い掛かりコの字に包囲をしてしまったのである。
2人はこの半包囲などは突破してしまえば脅威に非ずと考え、急ぎ輜重隊及びロダルグ本陣へ奇襲を掛けねばと思い副官に出陣の命をくだしたのだったが・・・様子が可笑しい。
ロダルグ軍は反乱軍を突破する事がいつまで経ってもしないのだった、2人の位置から見ると反乱軍中央は線にしか見えない、それだけ薄い陣容であるのに突破出来ない。
2人が呆気にとられ見ていると、反乱軍はロダルグ軍を包囲間近まで追い詰めていた。
数的劣勢にある方がとる作戦ではないし、上手く行くはずもない作戦なのに完全に包囲しようとしているのだ。
この包囲をみて、ロダルグ本陣が動き始めようとしていた。
「むっ!いかんな!コーウェン殿、我々も動くぞ!」
そう宣言すると、返事も聞かずに副官に突撃命令を下した。
コーウェンも間をおかずして同様の命令を下した。
2人が目指すは輜重隊とロダルグ本陣。
その頃、反乱軍中央でロダルグ軍の突破を数1時間に渡り防いできたのは竜人隊であった。
しかし、その防衛に少しずつ綻びが出始めて来ていた。
「・・・ここまでか」
「もうちょい行けると思うぞ」
族長マドラムが振り返り見た先には初老の男が旅装で立っていた。
その男は戦場には似つかわしくない微笑みを浮かべて戦況を眺めていた。
「最初から見ていたが、なかなかどうして優れた戦術じゃないか。今の世にもここまで出来る者が居るとは思わなかった」
その人物が誰なのか族長マドラムには心当たりがあった。
助力を求め使者を送った相手、岩竜である。
岩竜は、土竜から石竜と進化した先の石竜から進化した土属性の竜である。
「もしや岩竜様に御座いますか?」
「元だけどな、2年位前に砂竜になれた」
「おおっ!それでは個体名を頂けるではないですか!おめでとう御座います!」「地竜王様が居らっしゃらないのでな、当分お預けだな」
「そうでした・・・では、他の竜王様に頂いては?」
竜種は幾度かの進化を行い成長する、その進化が最終の1つ手前まで到と同属性の竜王より個体名を授かる習わしがあった。
しかし地竜王は先の八竜大戦で負け陣営に属していて大戦終了後に姿を眩ましていた、よってこの砂竜が地竜王より名を授かる事は難しかったのだ。
しかし、何にでも抜け道は有るもので他属性の竜王より名を授かると言った方法も有った。
他属性より授かった名も真名と成りうるが、他属性より授かるのは恥ずべき行為であるために通常ならば避ける行為である。
「所在の分からぬ今、その方法でも良いのだが・・・授けてくれそうな竜王様は皆遠方でな、中々難しい」
「左様ですか・・・残念です・・・」
「まぁいいさ、進化した事で寿命も延びたしな、気長に待つ。それよりも今はこの戦闘を終わらせねばな」
――しかし、なぜ魔術を使わないのだ?魔術を使えば20分も掛からずに終わらせる事ができように。
竜人達が魔術を使わないのには理由が有った、ウィンザーは魔術の破壊力及び範囲の広大さから魔術は強力過ぎて死者負傷者の数が従来の戦争より増大し極端な消耗戦になると危惧しアムネジアの戦闘参加を見合わせた。
竜人達も理由は同様に魔術の強大さが理由で使用を限定していたのだった。
「何故魔術を使用しないのか不思議に思いますか?」
「そうだな」
「確かに魔術を使用すれば勝利は容易いです。しかし、それでは過去の過ちを繰り返す事になります」
八竜大戦で竜人は魔術を多用し勝利を数多もぎ取っていた。
しかし、その強大さ故に八竜大戦後に多種族より畏怖と言う名の差別を受けた。
その畏怖は月日が経つうちに増大し多種族が交流を持つ事にすら拒否をするようになっていった、そうなると竜人族は人の多い街に居ても孤立する様になり住み難くなっていき果てには街を後にする者が続出するようになったのだ。
街に住まずに集落を形成し住んで居た者達も、商取引に来る者が居なくなり他集落との交流もギクシャクし始め、次第に疎遠となって行った。
「周辺と疎遠になるだけならば其処に居続けたでしょうが、恐怖の対象が周辺地域にまで広がってしまった場合、排除対象になってしまいます。相手は一般人故に返り討ちにするのは容易いてす。しかし、それをやってしまうと・・・
「多種族全てが敵にまわるか」
「はい、なので当時の族長は人里より離れた場所へ移住を決めたのです。今回の戦は我等が再び世に出る為に行っております故・・・
「分かった、極力魔術は使うのを止めよう。然らば・・・俺は前線の更に先にて刀を奮うとするか」
「?・・・本来の姿には戻らないのですか?」
「説明も無しに突如竜種が現れてはパニックにならぬか?」
砂竜はそう言うと前線に向けて歩み出した。
前線最後尾に到達すると徐に地面に向けて手をかざした、すると砂が手に向かい立ち上り始め一定量が集まると形を作って行った。
「ちと通してもらえるかな」
己の身の丈程もある刀を携えた砂竜は竜人の脇を抜け最前線にまで到達した、そして武器を振るっている者を一瞥すると。
「俺が奥に入る、少し楽になるはずたがら今暫く踏ん張るのだ」
「あ、貴男は?」
竜人に問われた砂竜だったが、その問に答えずに敵中に入って行った。
入った瞬間、砂竜を中心に敵兵が倒れてた。
どうやら身の丈もある刀を振るったようなのだが、それを見ていた竜人には違和感が有った。
「おい、こいつ等を縛っておいてくれ」
そう言うと砂竜は敵兵の多い地点に向けて進んで行った。
指示をされた竜人は倒れている敵兵の元へ赴くと、先ずは驚愕しそして困惑した。
倒れている敵兵は誰一人として死亡していなかった、それどころか流血すらしていなかったのだ。
そこに至り竜人が持った違和感の正体ははっきりした、砂竜の攻撃を防いだ者は居ないのは勿論、刀を振るったにもかかわらず血飛沫が一切上がっていなかったのだ。
「いったいどうやって・・・」
種自体は簡単だった、砂竜の持つ刀は砂が密集し形作られている。
その刀が対象に当たると衝撃だけを与え対象の表面を滑り移動するのだ、そして対象を滑り抜けると同時に元の刀の形に戻るのだ。
敵が密集していると言っても密着している訳ではない、武器を振るうだけの間隔は空いているのだから威力を損なう事が無かったのだ。
「あの御仁はいったい・・・」
普通ならば正体不明で訝しむ対象となっていただろう砂竜であったが、戦闘中に族長の居る後方からやって来て敵兵を薙ぎ倒していく存在であったので竜人達は味方と判断をした。
そして砂竜に倣い攻勢に出ようとした時。
「お前達は今まで通り足止めをするだけで良い、もうじきこの戦闘は終わる」
砂竜は大地より伝わる振動で敵本陣に向かう味方部隊が居ることを察知していた。
その部隊は自軍の味方であると決めた理由は希薄な事ではあったが、人種の習性として味方が危機的状況に有る場合には大多数を戦地に向かわせ指揮官と少数の護衛のみが本陣に向かうのが常だったからだ。
今現在、8割方包囲されている味方を放置して全部隊をもって本陣に向かうのは、こちらの味方か余程頭の弱い輩と判断したのだ。
実際、その判断は間違っていなかった。
その部隊はコーウェンの部隊であった。
コーウェンはロブションに輜重隊の制圧を任せ自分達は敵本陣の制圧に向かっていたのだった。
「良いか、交戦するよりも公爵の身柄の確保を最優先とする!確保に至れば戦闘は終了する!」
コーウェンの読みはこうだった。
ロダルグの周りには忠誠を誓った者はさほど多くはない、自らの武を認められ周囲に居るだけだと。
故にロダルグを拘束し、その権力を無力化すれば散り散りになる可能性が高いと。
その策は上手く行った、ロダルグ軍本陣に詰めて居る者は確かに強かった。
しかし多勢に無勢、ロダルグ軍本陣200人に対してコーウェン軍3000人では、如何に個の武が強くとも1人に対して数人で対峙させれば簡単に無力化をする事が出来た。
そうしてコーウェンは被害も少なくロダルグの下に辿り着いた。
「ロダルグ公爵、投降してもらいます」
「コーウェン・・・裏切るか・・・」
「裏切ると言えば裏切りになりますな。しかし、私からすれば表返ったと言うべきでしょう」
此度のシナトと の戦の経緯を知る者ならは反旗を翻した気持ちが分からなくもないのだから。
拒否権が有るのならば派兵などは間違い無くしなかったと言い切れたのだ。
「公爵様も同様ではないのですか?此度の戦の発端の馬鹿らしさについては」
「そうだな。我が兄ながら実に馬鹿らしい」
「ならは如何でしょうか?これ以上の戦闘を止め投降してもらえませぬか。勝敗は見えていると思いますが」
「ふん!はっきり言いおるわい。・・・良かろう何が何でも勝ちをもぎ取るつもりは無いしな。伝令!戦闘中止の合図だ!」
個人的な事情でゴタゴタしています。次話投稿が何時になるか未定ですが早めに出来るようにします。




