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西方・王国建国(対極の将軍・1)

「結構狩れたな、今から輜重に回せば晩飯ででてくるかもなぁ。アム、10匹程渡してこいや」


「え~勿体ないですー渡す位なら私が全部食べます!」


「お前なら食えるだろうけどよ俺達は正規軍じゃねぇんだ少し位は渡して印象ってやつを良くする事もしねぇとダメなんじゃねぇのか?それでもイヤだっつんなら俺が狩った分を渡しといてくれ」


 ウィンザー一行は今朝の説教の後で狩りに出ていた。

 ラキメアとクロトが同行する事になったので備蓄の食料追加と2人の実力を見るのに模擬戦などをやるよりも実戦に近い狩りを選んだのだった。


 ラキメアとクロトの双子は2人での連携は見事なものだった。

 しかし個になるとお粗末とまではいかないが、2脚トカゲを1匹相手取れる程度だった。

 世間一般ならそれでも十分に凄いのだが、ウィンザーもアムネジアも2脚トカゲなら10匹に囲まれても難無く切り抜けれる技量を持っている。

 人狼とはいえまだまだ身体の成長も終わっていない子供の2人に直ぐ同等になれと言うのも酷な話ではあるが、将来的にはなってもらわないと困った事になるかもしれない。


 ウィンザーはラキュアに『責任は取らねぇ』と言ってはいるが、気に掛けない、いざって時に守らないとは一言も言ってはいない。

 さすがに同行者が死亡するなんて事は如何なウィンザーでも願い下げな事なのだ。


「ラキにクロ、お前たちは2人で強くなるんじゃなくて1人で強くなれ」


「・・・なぜ?」「どうしてでしょう?」


「1人だと呆れる位に弱いからだ、それにだ、お前等は死ぬまで一緒にいるつもりか?いつか個人で行動する時が来たりする事は絶対に無いのか?1人でも強くないと対処できない事が起こらないとでも思ってるのか?お前達みたいに2人1組で戦闘を行う奴等がいたらどう対処すんだ?お前等の思う通りに全てが運ぶと思うなよ」


 軍隊などで戦闘を行っている分には2人と同じ様な2人1組で戦闘を行う者はいないだろう。

 だがそれ以外では2人1組どころか3人1組で戦闘を行う者もいたりする。


 天元には武術の流派が多数存在する。

 天地流などは攻撃と防御を完全に分けて修練をする流派で攻防を共に皆伝まで習得する者は極少数しかいない。

 両方を習得できない者の大半は役割分担をするように2人1組・攻撃と防御をお互いに担って戦闘を行っている。


 もしラキメアとクロトの2人が天地流の2人1組に出会った場合、分断され1対1の戦闘になる可能性が高い。

 そうなった場合に潜在的な能力の高さなどが有ったとしても修練を積んで下地がある者には敵うはずがなかった。


 天地流の2人組に出会わなくても連携をとって襲って来る魔獣などもいるのだ。

 だから個で強くなる事はかなり重要な事だった。


「つかな、お前等は同じ位の強さだろ、しかもタイプまで同じときた、自分なりのスタイルってもんを確立したって良くねぇか?」


「自分・・・なり」「スタイルですか」


「今のお前等は対戦して決着がつくのか?着かねぇだろ」


「・・・着かない」「着きません」


「それは相手が何をして来るか分かるからだろ?それを続けても強くはなるだろうげどよぉ・・・10年とか20年は掛かるんじゃねぇのか?」


「・・・遅過ぎ・・・ばっちゃ・・・死ぬ」


「ん?」


「僕らには、ばっちゃんに勝つって目標があるんです」


「あぁー・・・なら尚更同じじゃダメだな、ばあさん腕なら1人を相手にしてるのと同じだろうな」


「・・・スタイル」


「そうだ、ラキメア・・・ラキは何が得意だ?動きの速さか?力自慢か?剣捌きか?人狼なら爪ってのもあるよな?」


「・・・なんだろ?」


「まぁ急がなくてもいいさ、自分の好きなパターンとか、ああなりたいって目標の真似でも良いさ、そう言うのを追求してみろや」


 実は今現在を当たり前で変化を必要と思っていない者にしたら、ウィンザーの言っている事は非常に難しい事を要求されているに等しかった。

 ラキメアもクロトも今のままを洗練していけば目標を達成できると考えていた。

 実際に祖母のラキュアと模擬戦を行っても前よりは長続きする様になって来ていた。


 今もウィンザーに言われはしたがラキメアは必要性を全く感じていなかった。

 しかし。


「そう言えば・・・ばっちゃんが模擬戦で技とか魔術を使った事ってないよね」


「・・・無い」


「それって全然本気じゃないって事だよね?」


「・・・うん」


「ウィンザーさんの言った通り別個で違うふうに強くなるのが、ばっちゃんを少しでも本気にさせれるのかな?」


「・・・分からない・・・でも・・・やってみる価値・・・ある」


「そうだね、それじゃあ、どう強くなるかだよね」


 ラキメアもクロトの1言でハッとして個々に修練をつむ事に意味を見出した。

 それでも可能性が有ると言うだけで完全に信じている訳ではなかった。

 方向性を共有しないで成長して連携が上手く行かなくなったりはしないか?

 そっちの方が心配だったのだ。


 それでも個々に修練をする事に賛成したのは祖母ラキュアに本気を出させたい一心だったからだ。

 ラキュアにはラキュアオリジナルの技や魔術などもあり、それ等を直に見てみたかった。

 そして、それ等を受け継ぎたいと密かに思っていた。


「ん~?何だあの人だかりは?俺達の出迎えじゃねぇよな」


「間違いなく違いますねーウィンザー様はーそんなに人気者じゃないはずですー」


「アム!お前ハッキリ言うなぁ・・・ちっと傷付いたぞ!どう落とし前つけてくれるんだ?あぁ」


「あっはっははは、知りませんー!先行ってますねー」


「クッソ!逃げやがった!ラキ、クロ、行くぞ」


 人だかりは中州廃城・アルオシェルのトルムナート側で出来ていた。

 その人だかりは幾許いくばくかの緊張と殺気を孕んでいた。

 ウィンザー一行が何事かと人だかりを無理矢理分け入って中心まで行くと、そこには1人の男が堂々と立っていた。


「なぁあんた、あれは誰だ?」


 隣にいた名前も知らない兵士にウィンザーは訪ねてみた。


「ん~?あれはトルムラート海軍の指揮官のバグラリア侯爵の配下の者らしいぞ」


「ふ~ん・・・で、その侯爵の配下が何でここにいるんだ?」


「何でも書状を持って来たから、うちの侯爵様に合わせろと言っているらしいぞ」


「なんだ、そんな事か、合わせてやりゃぁいいじゃねぇか」


「俺もそう思うんだがな、今日の門番の担当が最初に突っぱねちまったらしくてよ、そんんでこじれてるみたいなんだ」


「はぁ~ん、詰まらねぇ意地ってやつか、くだらねぇ」


 そうこう話をしていたら、場の空気が一気に悪くなってきた。

 門番が腰に差していた剣に手を掛けたのだ。

 しかも物騒な事を口走っていた。


「貴様を斬って捨てて次の戦の勝利祈願の贄としてやるっ!」


 門番の周りに居る人達もドン引きであった。

 たかが面会をするしないで刃傷沙汰とはどうなんだ?

 それが率直な感想だったのだが、それを口にする者は誰1人としていなかった。

 すっかり頭に血が登っている門番にダメ出しをした結果、とばっちりを喰うのは御免だったのだ。


「あぁ!もぅ!何で俺がそんな事をしなきゃいけねぇんだかな!」


 嫌々ながらも仲介に入る事にした。

 その表情はホントに嫌そうだ。

 苛立ちも隠そうとしていない。


「おい!門番!今から俺が書く手紙を、そいつの主に届けて来い」


「ハァ?何言ってんだテメェは?頭おかしいのか?」


「行くのか行かねえのか聞いてんだ答えろ!まぁお前みたいなヘタレが行けるわけねぇよなぁ」


「何だとっ!誰がヘタレだっ!」


――こうも簡単に乗って来るとはな。


「ほぅ、じゃあ行くんだな。1人で敵の真っ只中に手紙を届けに」


「・・・・・」


「おいっ!行くのか行かねぇのかどっちだ?」


「・・・・・」


「行かねぇんだな、だったらお前にこいつの処遇を決める権利はねぇ!」


 なぜ決定権が無いのかを理解していないようだ。

 あからさまに睨み付けて来ている。


「なんだ?全部言わなきゃ分からねぇのか?・・・こいつはお前に出来ねぇ事をやってるからだ。単身敵地に、お前みたいのが居るのを承知で来れる奴だ、権利が欲しいなら同じ事をしてみせろや!」


 野次馬の連中は理解したようだ、門番は・・・理解はしたようだが納得はしていないようだ。

 門番の役目・・・不審者を詰問し中に入れないと言うのを曲解しているのかも知れない。

 使者は目的をハッキリと言った、それは中に入れたからと言って問題になる事では無かった。

 勿論、敵方の人物だから見張りを付けるのは当然なのだが、頑固に入る事を拒む必要性はない。


「こいつは俺が侯爵の所まで連れて行く。文句の有る奴は居るか?」


 やはり門番は文句が有りそうだったが他の人達が声を上げないのを見て声を出せないでいた。


「アム、ラキ、クロ、行くぞ。あぁ、アム、輜重隊に肉は渡さないで良いぞ、客が出来たからな」


「ホントですかーやったー、客って事は今日は大盤振る舞いって事ですねー」


「だな、そうだ、ラキ、クロ、ばあさんも呼んで来いやぁ、侯爵とか竜人の族長とかも俺から誘ってみるからよぉ」


「・・・分かった」「誘ってみます」


 そう言った後についさっきウィンザーの客にされてしまった使者の方を向き。


「あんた、勿論食ってくよな?肉」


「えっ?・・・え~と・・・状況が飲み込めて無いのですが?」


「細かい事は気にすんなぁ、お前の役目は果たせる、ついでに俺の客って事で肉を食ってけって事なだけだ」


 そうは言われたのだが・・・敵地で使者を歓待するなどと言う事を見聞きした事がない使者は狼狽えていた。

 そして狼狽えたままウィンザーの先導で侯爵の元へ連れて行かれたのだった。

出て来るキャラが多くなると文字だけの差別化って難しいですね。


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