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西方・王国建国(肉の解体)

タイトル変更してから初投稿になります。

 出会いから2年。


――あの頃からしたら、ましになったとは言えばなったんだけどよぉ。


 一向に成長しない部分もアムネジアにはあったのだった。

 食べ物が関わってくると考え方が一気に幼稚になって自己中になってしまっていたのである。

 この罠に掛かった猪にしてもそうだった。

 向かって来るのは食って良い。

 誰も見て居なければ勝手に盗んで良い。

 誰が聞いても擁護しない台詞だ。


――後はこれさえ何とか出来りゃ問題無いはずなんだがなぁ。


 ウィンザーも色々と考え何とかしようと努力はしているのだが、未だに効果が上がった事が無かった。

 最近はネタ切れで困っていたのである。

 当のアムネジアは物欲しそうに罠に掛かっている猪を凝視していた。

 こうなってしまうと首根っこをひっ掴んで引きずらないと何が有っても動かない。

 しかも質の悪いことに新たな獲物が見つかるまでメソメソして鬱陶しいのだった。


「はぁ・・・アム、罠を設置した奴が来るのを待つか?」


「はいー!待ちますー!」


「交渉すんなら自分でやれよ。俺は知らん!」


「私がですかー?」


「当たり前だっ!俺は人の捕った物をくれって言うほど恥知らずじゃねぇ」


 エルフの町では、誰が狩ったとしても獲物は住人で分けるのが普通だった。

 町を出て2年程経つのに、獲物に対するエルフの常識が改められる事が無かった。

 それも仕方ないのかもしれないのだが。

 この2年人里を離れた森や山を探索してばかりいたのだから。

 それでもウィンザーは。

『自分が食いたい物は自分で狩ってこい』

 と、常々言ってはいたのである。

 かなり遠回しな言い方ではあるが、アムネジアも少しは理解しても良さそうなものなのだが全く理解していなかった、いや、理解しようともしていなかった。


「罠を設置した奴に『くれ』って言ったら後ろから殴るからな」


「えっ!?何でですか!!」


「自分が同じ事を言われたらどう思うか考えろ!」


 アムネジアが何も言い返して来ないので座って木に寄り掛かった。

 言い返しては来ないが、体育座りをして猪とにらめっこをしながらブツブツ言ってるアムネジアは少々鬱陶しいが、食べ物が絡むといつもの事なので無視を決め込んだ。

 少し昼寝でもと思ったが、暴れる猪は五月蠅過ぎる。

 絞めて血抜きと皮剥ぎでもしてる方が時間を有効に使えるんだろうけど、それをやってしまったらアムネジアの言葉を肯定してしまうのでやる訳にはいかない。


――ここでばらせば匂いに誘われて何かが来るかもな。


 猪は無理でも寄って来た奴等なら狩って食わせる事が出来ると考えてしまった。

 何だかんだ言ってウィンザーはアムネジアに甘かった。


 暫く木々の切れ間から見える流れる雲を見ながら過ごしていると、何かが近付いて来る気配がした。

 恐らく罠を設置した人物だろうが、万が一に備え武器を取り出しておく事にした。

 

 そこに現れたのは。


「ぬぉおお!!なんじゃこりゃああ!!でけぇええっ!!」


 コミカルな動きをするヒゲモジャのオッサンだった。

 規格外のサイズにビビって後ろに飛び退いて尻餅を着いていた。


「オッサン、大丈夫か?」


「お、おぅ・・・お前等は誰だ?」


「俺は見物人だ、そいつをどうすんのか見たくてな。そっちの奴は別の用があるらしいぞ」


「あ、あの。こんなおっきい猪さんを食べた事無いから、お肉を分けて欲しいんです」


 ゴゲィン!


 宣告通り後ろから拳骨を喰らったアムネジアは両手で頭を押さえてうずくまった。

 いきなりの事でヒゲモジャオッサンは呆気にとられていた。


「い・・・痛いですー酷いですーウィンザー様が、か弱い私を殴ったら死んじゃいます!」


「まだ生きてんだろ?大丈夫だ、それとだ。身体はか弱くても神経は図太いから大丈夫だ!」


「くれとは言って無いですー」


「分けろも意味は同じだろぅが!」


 何をブツブツ言っていたかと思えば『くれ』に代わる単語を探していたようだ。

 アムネジアらしいとは思うものの、どんだけなんだと呆れもしていた。


――考えた事だけは誉めてやろう。


 つけ上がるのが目に見えているので決して口にはしないが、何も浮かばなかった最初の頃に比べたらお粗末な答ではあるけどもマシだった。


「オッサン、そんでこいつはどうすんだ?ここでバラすのか?連れて帰るのか?」


「おいおい、オッサンはやめねぇか?俺にはジャオロって名前があんだ」


「オッサン、じゃねぇ。ジャオロ、スマン。自己紹介がまだだったな、俺はウィンザーだ、こっちの頭をさすってるのがアムネジアだ」


「ほおぅ・・・エルフってのは初めて見たぜ。ホントに耳が長いんだな」


「ここいらには黄エルフは来ねぇのか?あいつ等は内陸部にも来るはずなんだかな」


「俺が見た事がねえだけだな、来てるってのは良く聞くからな。で、コイツはどうするかな・・・連れて帰るにはデカ過ぎる、バラすにもここじゃ危険だな」


「やっぱりかぁ、でもここでバラすなら手伝うぜ。連れて帰るのは手伝いたくねぇ」


「マジか?ここでバラすのか?かなり危険だぞ?」


 ここいら一帯には魔獣なら2脚トカゲ・大口蛙ビッグマウス擬態蛇ミミカリースネークがいて、獣は豹・熊・山獅子などがいるらしい。

 単体ならば食い意地モードに入っているアムネジアなら狩れるはずと踏んだ。


「アム、血の匂いに誘われて来た奴は食って良いぞ」


「ホントですかー?私頑張っちゃいますー!」


「おいおい、あの嬢ちゃん1人で大丈夫なのか?」


 知らない人からしたら当然の疑問だろう。

 アムネジアはエルフの平均身長の180cmには程遠い160cmしか身長がない上に華奢で武器を扱える様には、とてもじゃないが見えない。

 ジャオロもエルフが魔術主体の戦闘をするのは知っては居るのだが、アムネジアを見て忘れてしまったみたいだ。


「大丈夫だろ?あいつは食い物が絡むと異様に強くなるからな」


 と言われても半信半疑で心配の方が勝ちそうなジャオロはアムネジアから視線を外せなかった。


「ジャオロ・・・ジャオロのオッサン!」


「お、おう、なんだ」


「毛皮はどうする?売り捌くなら頭は落としちゃまずいだろ?」


「売りはしないから落としちまっていいぞ」


「内臓は食うのか?」


「いや処分する」


「よっしゃ、分かった血抜きと皮剥ぎは俺がやっから内臓を埋める穴を掘っといてくれや」


 ウィンザーは闇属性の魔術・静寂サイレントを自分に掛け足音を消して猪の側面から近付いて首を一閃斬り落とした。

 落とした後は後ろ足をロープで括り土属性の魔術で強度重視の土壁アースウォールを作り出し猪をぶら下げた。

 ぶら下げた後は腹を切り開いて内臓を取り出し皮を剝ぎ始めた。

 その際、心臓だけは別に置いておいた。


「にいちゃん、何でそれは別にしとくんだ?」


 エルフの思想には心臓・脳には思念・感情が宿っており丁重に葬らないとアンデット化すると言うのが有る、来るもの拒まず喰らうアムネジアもこの思想には準じているのでウィンザーなりの配慮であった。


「ほおーそう言う事か、なら俺もそれに従うか」


 皮を剥ぎ終わった所で、直径2m程の水球ウォーターボールを魔術で作り出し皮を突っ込みジャオロに掻き混ぜさせて水洗いをした。

 一方、血抜き中の本体は全体を冷属性の魔術・冷気チルを纏わせて肉を冷やしている。


 この間、アムネジアも奮闘していた。

 血の臭いに誘われて3匹の2脚トカゲが現れていた。

 3匹程なら閃光フラッシュを焚いて石刃ストーンエッジで首を刎ねるだけだから奮闘は言い過ぎだったかもしれない。

 その3匹もウィンザーがついでに血抜きと皮剥ぎを行い猪と同じ処理を施していた。

 一連の作業の手際の良さもそうだが、使っている魔術の種類の多さにジャオロは驚いていた。


「なあ、にいちゃん。使える魔術が随分と多いんだな」


「まぁな、方陣は作れないから魔晶頼みだけどな」


 猪1匹と2脚トカゲ3匹の大まかな血抜きが終わると猪を五体バラバラにて吊るした、デカすぎてバラさないと血抜きが中途半端になりそうなのだ。

 その後は皮を洗っていた水で抜いた血を流し臭いを拡散させた。

 後は獲物の下に穴を掘ってそこに血を溜めるので間に合うだろう。


 血抜きにはもう暫く時間が掛かるので心臓と脳を弔う事にした。

 弔うと言っても埋葬をして盛り土をして墓石代わりに石を置く程度なのだが。


「にいちゃん達はこれからどこに行くんだ?」


 収納魔晶から取り出して焼いた肉を食いながらジャオロが聞いた。


「この辺りで戦争起こってんだろぅ?俺は強くなるための修行中だからなぁ、傭兵として参加しようと思ってんだ」


「どの陣営に就く気だ?」


 俄かに眼光が鋭くなったジャオロだった。


「一番不利な所だな、不利な所の方が戦闘回数が多くなるなるだろぅ?ジャオロのオッサンは何処が不利だと思う?」


「そりゃ、ガムラミットとルクナガルトの同盟軍だろうな」


「んじゃそこにする」


「即決しちまっていいのか?」


「ん?だってジャオロはそこの人だろ?自分の居場所が弱いなんて言うのは相当だろ?」


「がっはっは、その通りだ。しかし何故分かった?俺が同盟軍に所属していると」


「見える所に斬撃の傷跡が有って普通に動ける奴が退役してるとは思えねぇし、ここいらは侯爵領なんだろ?敵領で堂々と狩りをする奴も居ねぇだろうしな」


「なるほどな、ならば一緒に来い俺の紹介って事なら詮索もされねえだろうからな」


 ジャオロは同盟軍で大隊長を務める人物だった。

 ちょっと前まではしがない中隊長だったのだが、軍の再編成した際に昇進していた。

 昇進した事自体は嬉しいのだが、兵卒に混じって訓練・作業をしていると中隊長達に怒られてしまい、訓練・作業を見ている事しか出来ないのが大いに不満だと言う。


 その不満が昨日爆発して

『狩りに行って来る』

 と一言告げて外出しようとした、そしたら危険だ護衛だゴチャゴチャと中隊長達が言っているのに怒りが再度爆発した。

『やかましわっ!護衛なんぞいらんわっ!』

 と言い放って単独で罠を張りに来た。

 狩りをした理由も単純で。

 何でも良いから掛かっていれば兵卒達に美味い肉を振る舞える、それがやる気なり元気に繋がれば良いと思っての行動だった。


「まさかこんな化け物サイズが掛かってるとは夢にも思わなかったからな、にいちゃん達が居てよかったわ。1人じゃ途方に暮れてたぞ。がっはっはっは」


「名前は分からないですけどー魔獣でしたしねー」


 肉を確保して肉を食って上機嫌のアムネジア。

 兵卒に振る舞うなら、これから自分も兵卒になるし猪肉が食べれると内心喜んでいるのは秘密です。

 ・・・その秘密もウィンザーにはバレていましたが。


「ほぼ血も抜けたし行くか?」


 そう切り出した後、猪肉をジャオロの収納魔晶に2脚トカゲ肉をアムネジアの収納魔晶にしまい中洲廃城に向けて歩き出した。


24話に出て来た中隊長に名前を付けました。


モジャオッサンをもじって付けた割にはまぁまぁな名前になったんじゃないかな?

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