表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/54

西方・王国建国(軽く暗躍)

最長の長さになったかもしれません。


 体長2mのカニ・・・

 甲羅がドーム型のせいもあって高さもある、軽トラと対峙しているみたいな感じと言うのが当てはまりそうだ。

 その軽トラに大量のバットを刺して、6本の脚と2本の腕爪を側面にくっつけたのをイメージするとチェスナットクラブになるかも知れない。

 脚の棘は胴の半分位の長さ、腕爪は更に半分位の長さだが人体に刺されば十分致命傷になる長さだ。

 ドーム型の厄介なのは前後左右に動けるところだ、甲羅が脚を立てるのに邪魔にならないから出来る芸当だ。


「なぁ、オッサン、ありゃカニだよな?何で前に歩いてるんだ?」


「クラブって名前だけど、ヤドカリの仲間だからな。ほれ、脚が6本だろ」


「ふぅん、まぁいっちょやってみっかぁ」


 ウィンザーは前へ出て使い慣れたバスタードソードで対峙した、チェスナットクラブとの間合いは約3mと言ったところか。

 対峙して先に動いたのはチェスナットクラブの方だ。

 その動きは巨躯からは想像出来ない位に早く、反応が遅れてしまいギリギリで回避できた、しかし棘がかすり何条かの切り傷は出来ていた。


「何だ!?意外と早いな」


「そりゃそうだろう。甲羅の中身は全て筋肉だと思って良いんだぞ」


 回避しつつ腕爪に攻撃をしているウィンザーに返答する余裕は無かった。

 カニの攻撃の特徴は一撃必殺の爪による挟み込み。

 捕らえられてしまえば逃げ出すのはほぼ不可能だろう。


「ウィンザー君、君の戦い方は正面からだけか?そんな戦い方は獣か魔獣に任せておけば良い。もっと揺さぶる戦い方をしないとな」


「ごちゃごちゃ言ってねぇでオッサンも手伝え!」


 チェスナットクラブの動きがフェイントなとが無い単調な攻撃なので少し余裕が出来たのか、応援要請をした。


「それは俺にでなく、アムネジアに言ってくれ。俺は君等の旅に同行しないのだからな」


「むっ!・・・アム公何とかしろ!」


 それまで静観、と言うよりも余所事の如く傍観していたアムネジアは突然振られた話に慌てた。


「アムネジア、頑張るんじゃなかったのか?」


「あの、でも・・・」


「でもじゃない!自分のやれる事をやれ!彼と並んで戦えるなら前に出ろ!無理なら後衛として敵の無力化を図れ!」


 養父は初めてアムネジアに対して言葉を荒げた。

 これから一緒に旅をする仲間に対する態度として最低だったからだ。


「む、無力化・・・無力化・・・」


 養父は情けなくなった、戦闘法は教えてはいなかったけども何も思い浮かばないってのは考えてないのと同様だ。


「お前の使える魔術の属性は何だ?」


「光と土・・・と・・・」


――適性を言わないか・・・アムネジアは自分自身が一番忌み子なのをいやしく思ってるんじゃないのか?


閃光フラッシュ使えるか!?」


 聞いて加えた攻撃が腕爪の棘の隙間に剣がスッポリはまった。

 はまった次の瞬間チェスナットクラブは腕爪を捻った。


バキンッ!!


 大きな音を立ててバスタードソードは根元から3割程を残して折れてしまった。


「なっ!?クッソ!」


 折れた剣で2回攻撃を加えてリーチの無さと重さによる攻撃が出来ないと判断して、さっき受け取った剣と交換をする事にした。


「こいつの前から1m間隔で土壁アースウォール5枚だっ!」


「えっ?は、はい!」


――指示されれば出来るのか

 自分で思い付かない事に対しては、やなり情けなく思ってはいる。


「薄いっ!狭いっ!厚さは倍以上!幅も倍だっ!ちゃんと考えろ!」


 ダメ出しを食らって魔術の上掛けを指示通り行って厚みと幅を増加させたところでウィンザーが戻って来た。


「オッサン!この剣を早速使わせてもらうぜ!」


「今は君の物だ好きにしな」


「アム公!俺がアイツと対峙したら俺の頭上で閃光フラッシュを焚け!」


 と、言うや新たな剣を携えてチェスナットクラブと再度対峙した。

 しかし、アムネジアは閃光フラッシュを焚かない。


「何してんだ!対峙したら焚けっつたろ!」


「は、はい!すみません」


 怒鳴られて催促されてようやく魔術を行使した。

 カニに閃光フラッシュが利くかどうかは賭けであったが、バッチリ効いた。

 一時的に視力を奪われたチェスナットクラブは闇雲に腕爪を奮っている。

 しかし、ウィンザーはチェスナットクラブの正面には居なかった。

 閃光フラッシュが効いたと分かると直ぐにチェスナットクラブの左後方に移動していた。

 移動の際に3本の左脚の棘を切り落として関節部分が見える様にしていったのは中々の技量だ。


「よっし!アム公!視力が回復しそうだったら、もう1発閃光フラッシュだ!今度は俺も喰らっちまうから一言言ってからやれ」


 アムネジアの返事を待たずに斬りかかる。

 下からの斬り上げで1本。

 斬り上げた剣をそのまま振り下ろして2本目。

 そのままの勢いで再度斬り上げようとした時だった。

 チェスナットクラブは腕爪を裏拳ヨロシク後ろに振って来たのだった。

 ウィンザーは咄嗟に左腕を突き出して胴体に当たるのを防いだが左腕は穴だらけでひしゃげてしまっていた、この腕では後1本の足を落とせない。

――やべぇ!

 と思った時。

 石刃ストーンエッジが飛んで来て残りの脚を斬り落とした。

 この戦闘で初めてアムネジアが自発的に魔術を行使したのであった。


 左の脚を全部斬られたチェスナットクラブは腕爪で身体を支え向きを変えようとしていたが、固定された腕爪は狙いを定め易く2発目の石刃ストーンエッジによって斬り落とされた。

 腕爪も斬られ思う様に動けなくなったチェスナットクラブは残りの脚も次々とアムネジアの魔術によって斬り落とされて行動不能となった。


「アム公!いや・・・アム、やりゃあ出来んじゃねぇか」


「そんな事より、その左腕・・・」


「あぁ・・・これはちっと困ったな。オッサン?町に治療術師は居るか?」


「居るが・・・君は余所者だから吹っ掛けられるぞ?」


「いくら位だ?」


「相場の5倍以上だな」


 ウィンザーの怪我の治療をするなら相場は大体2晶(銀貨60枚)その5倍以上と言うとかなり法外な値段だった。

 街に住む定職に在る人の平均月収が約9晶。

 日雇いの平均月収が5晶。

 これ等と比べると値段の高さが分かると思う。


「まぁ、俺の手持ちの薬で治るから安心しろ」


「なに?そんな薬があるのか?・・・エルフの秘薬ってやつか?」


「そんな大層な物じゃないが、そんなとこだ」


 収納魔晶から取り出したのは2つの瓶だった。

 中にはカプセル剤に似た物が入っている。


「こっちの白いのが治療薬、こっちの色が変化するのが再生薬だ」


「治療に再生?回復薬とはちがうのか?」


「回復薬は正確には治癒薬だ、勝手に治る力を促進させる物だ。治療はそれを人為的に行う事、再生は人でも出来ない事を行う事だ」


 回復薬ではウィンザーの出血が止まるのは数時間かかるだろう、下手をすれば出血死する程の怪我だ。

 しかし治療薬ならば数分で止血出来る優れ物だったが治療薬では開いた穴やひしゃげた腕を治す事は出来ない。

 そこで人智を超えた薬の再生薬で元に戻すのだと言う。


 半信半疑ではあったが素直に薬を飲んでみると、効果は覿面だった。

 治療に3分、再生に5分でスッカリ元に戻ったのだった。


「オッサン!これすげぇな!欲しい位だぞ!」


「一応部外秘の薬なんでな、分けてやる事は出来ないんだ」


 そこを何とか。

 と頼み込んでいると・・・辺りの雰囲気が変わった。


「なんだ!?」


「よ~、盛り上がってる所を悪いんだが、その薬・・・どっから手に入れたか教えてくれないか?」


 そこには膝丈ズボンにアロハシャツを着た男がこっちに向かって歩いて来ていた。


「あ、貴方はもしや・・・『統べる者』ではありませんか?」


「ん?・・・そう呼ぶ奴も居るな。まぁ・・・それはどうでもいい、その薬について教えてくれや」


「はい、この薬は神人かむとに取引の対価として教わったと聞いております」


神人かむとだと!・・・あ・い・つ・ら!ろくな事しねーな!で、それっていつの事だ?」


 今を遡る事2500年程前、第1次プロモーションが強制終了された時、食うに困り生きるに困っていた神人かむとがエルフに救援を求めた対価として伝えられたと言う、その時に部外秘にしないと天罰が下る可能性があるから気を付ける様にと注意されていた。


「そんな前か・・・それの製法はエルフ全氏族に伝わってるのか?」


「そう聞いております」


「その薬があると思惑とちっと違くなっちまうんだけどなー・・・ふう~・・・まぁ仕方ねー。許可を出す」


 『統べる者』は方針の転換を行った。

 2つの薬を広めても御咎めなし。

 更に研究開発も許可した。


「その薬は最下級の品だ上に2つ?3つ?どっちだったかな?忘れたけど上が有る精々研究して開発してみせろよなー」


「はっ!では早速氏族の纏め役達に連絡します」


「それは俺がやっとくからいい、所でだ・・・お前、3位だな?何で転生してるんだ?」


 『統べる者』はウィンザーの方を向いてそう言った。


「あ?3位?なんだそりゃ?」


「記憶はねーのか・・・なら良いか。で、だ。お前はこの世界で何をしたいんだ?」


 あまりにも唐突な質問だった。

 いきなり聞かれても困ってしまう内容だったが。


「俺は人種ひとしゅ最強を目指してる!」


「ふ~ん。残念だがお前じゃなれねーよ。今はまだお前のが強いけどなー成長したらお前じゃ太刀打ち出来ねー奴が1人居るんだよ」


 『統べる者』は平然と言い放った。

 当然だがウィンザーはそれが誰なのか詰め寄って聞き出そうとした。


「天元に居るジンって奴だよ」


「そうか・・・分かった」


「今から行く気か?止めやしねーけどよ、今はお前のが圧倒的に強いぞ?あぁ!そうか!自分より強くなる新芽は早いとこ潰しておこうって事か。大した事ない最強だな。はっはっはー」


「なんだと!!」


「なんだ?違うのか?違うなら何しに行くんだ?」


「・・・・」


「答えらんねーのか?なら、1つ聞こうか。そ成長したそいつに勝ってなる最強と、新芽のうちに潰してなる最強。どっちが強いと思う?」


「・・・成長したのを倒すほうだ」


「良くお分かりでー。後8年もすりゃ身体の成長は済むそん時に挑んでみるんだな。まぁ8年後も、お前が勝つだろうけどなー。あいつは強くなる事に興味が無いからなー」


「それじゃやる意味がねぇじゃねぇか!」


「かもなー1回負かして悔しい思いをさせてみたらどーだ?お前に勝とうと頑張るかもしれねーぞ」


 ウィンザーはその後は黙り込んで考え事を始めてしまった。

 普段の粗暴さも消して、戦闘時の楽しそうな雰囲気も消して、唯々考えている。

 それを少し不安気味にアムネジアは見ていた。


「さてー次はお前だな・・・ふ~ん、隠し事はいつかバレるからな、それは覚悟しとけよ」


「えっ?」


「ところでよー白氏族ってのは見抜眼を持ってたはずだろ?」


「それは遥か以前の話です。ここ2000年で産まれた白氏族に見抜眼を持つ者は極少数に御座います」


 見抜眼とは、見た相手の種族や属性値を見るだけで分かる目の事を言う。

 エルフは非力な種族であるから敵対者と対抗するのは魔術がメインとなるために、種族や属性値が分かると言うのが対処するのに有効であったのだ。

 その見抜眼も外敵が来なくなって以来持って産まれる者は皆無に近い状態になっていた。


「ってこたーそこの町にも持ち主はいねーって事か?」


「居りません」


「それでかー納得だな。・・・そだな・・・ちっこいのちょっと来い。お前に見抜眼を付けてやる」


「は?・・・え?」


 疑問符だらけの返答をしつつもアムネジアは『統べる者』の元に行った。

 見抜眼の事など聞いた事も無かったので恐々してはいたけれど、興味が勝ったと言ったところだろうか。

 そして見抜眼を付与されると驚愕した。


「え?な、何?」


「片方にだけ見抜眼にしといた、精々そいつのサポートしてやるんだな。そろそろ俺は帰るわ、じゃーなー」


 言うや瞬時に消え去った。

 ウィンザーとアムネジアは理解が追いついて行かなかった。

 いきなり現れて、言いたい事を言うだけ言って、いきなり消えた『統べる者』っていったい何者だろう?

 養父の接し方からすると偉い人の様だけども。


「父さん、あの人はいったい・・・って、うわっ」


 見抜眼で見たせいか養父の種族と属性値が丸わかりなのにビックリしてしまった。

――目に映るって言うより頭の中に文字が浮かぶ感じだ。

 そのままウィンザーも見てみると・・・


「ウ、ウィンザーさん?」


「んぁ?なんだ?」


「ウィンザーさんって神人かむとだったんですね・・・それと属性値・・・全部あるみたいなんですが・・・」


「そぅなのか?そんなんどぅでもいいわ」


「なに!?それはどうでも良くないぞ!」


 先にも述べた通り神人かむとはエルフに治療薬・再生薬をもたらした種族であるし。

 全属性を持っている者などはエルフの長い歴史の中でも確認されたのは数人のみだった。

 その両方を備えた者が居ると言うのは奇跡的だったのだ。


「あぁ、俺の家系はそう言うの全然だぞ?カートライトって言えば分かるか?」


「カートライト?・・・西方動乱で名を馳せた一族か?」


「そうだ、一言で言っちまえば戦闘馬鹿の家系だ、だから薬の事なんぞ伝わってねぇよ」


「そうか・・・でもな全属性ってのは、ある意味異常だ。全てを駆使出来る様になれば最強ってのも現実味を帯びるぞ」

 

「ふぅん。どうすりゃいい?」


 一番良いのは方陣を作り上げて魔術を使える様になる事なのだが、剣が主体のウィンザーなら魔晶を利用して魔術を行使するのでもかなり有効だろう。

 補充などの費用を考えると合理的ではないが奥の手として使うのであれば頻繁に使う事も無いだろうし十分なのかもしれない。


「どんな魔術とするのかは自分で考えてくれ、お前が戻って来るまでに全属性に対応した何かを用意しといてやるから楽しみにしとけよ。人生終わりに近付いて面白い事が待ってると思わなかったぞ!」


 そう言うと養父は足早に帰って行った。

 残されたウィンザーとアムネジアは暫く呆然と見送っていたが、カニの動く音で我に返った。


「・・・あれ、食ってみるか?」


「そうですねー、カニってどうやって食べるんでしょうか?」


「ん~・・・取り合えず焼くか」


 脚を1本焼いて食べると・・・美味かった。

 チェスナットの名は伊達では無く甘みの強い味ではあったが、カニの風味もしっかりあり2人で直径40cm長さ1m強はある脚を1本食べきってしまった。

 でも流石にそれ以上は食べれなかったので1本は乾燥させても食べれるのかを試すために残して、他は町の人達に振舞ったのであった。


 1つ結論。

 カニは乾燥させると風味が落ちる、どうやらチェスナットクラブは水分の蒸発と共に風味も飛んでしまうらしい。

 2人は、勿体ない事をしたと落胆していた。

 そして、あれから何かと忙しい養父に『統べる者』についても何も聞けず、モヤモヤとしていた。

 そんなモヤモヤを解消するかの様に釣り没頭して必要以上の備蓄をして北へ旅立っていった。



 

説明省いたのがあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ