天才ってのは・・・
次の日。
3日間続く祭りの初日となった。
祭りと言っても人口の少ない村だし、村としての収入もほぼ無いので、飲み食いして村人の余興を見て騒ぐだけの大宴会と言っても間違いはなかった。
初春から収穫期までの労を労う為の祭りだし皆が楽しければそれで良いのだ。
蒼麗は初日に弓技を余興として披露した。
皆、呆気にとられていた。
なにせ途切れる事無く前後左右から的に向かって矢が飛んで行くのだ、見た事も聞いた事も無い事を目の当たりにしてるのだから当然の事かも知れない。
それは蒼麗の父にして弓の師匠でもある夜徳も同様であった。
「・・・こんなに早く追い抜かれるとはな」
苦笑いではあったけど、嬉しそうであったと言う。
「なあ、銀。お前あれを躱して蒼麗ちゃんに1撃入れれるか?」
「無傷では無理だな、あの拡散する矢はかなり厄介だ。それにな、接近できても1撃加える事は出来ないかもな」
「何でだ?接近すれば出来るだろう?」
「夏に言ってたんだがな、『弓って接近されたら弱いから対策を練習してるんです』と言ってソードブレイカーを作って欲しいと注文していったぞ」
「ふむソードブレイカーか・・・その対策が完成してると?」
「分からんが、形にはなってるんじゃないか?弓技を披露してるんだしな」
ルドルと銀も、その先の有るかもどうか分からない事を含めて称賛していた。
大人達の称賛を余所に蒼麗は。
「あれは狩りで使えないからダメなんだよね。ほら、拡散矢とか螺旋矢なんかは毛皮をダメにしちゃうでしょ?曲矢は決まった距離じゃないと使えないし。影矢は獣には通用しないでしょ?」
自分の弓技は曲芸だからまだまだ研鑽が必要だと言う。
人を射る事を念頭に置いていないので妥当な意見なのかもしれない。
祭り初日の夜、レイはウェザと話をしに野営を行っている所まで出向いた。
ジンは話の内容が気にはなったが。
「聞きに行っても良いと思うが、レイはお前が知る必要は無いと判断したから教えないんだと思うぞ。知っておいた方が良いと判断すれば教えると思うがな」
と、ルドルに言われレイの判断を信じた。
実際、レイの判断が間違っていた事はジンの知る限り無かったのだ。
それに、聞きに行ったら。
『やっぱり過去を盾に手込めにするのね』
とか言われそうだし止めておいた。
出掛けてから小一時間経過してレイは帰って来た。
帰って来て開口一番。
「ジンは母さんが嫌いになったのね・・・シクシク」
と来たもんだ。
「母さんの過去に興味がないなんて、嫌いになったからでしょー」
行っても行かなくても揶揄われる運命であった。
それはいつも通りの光景であったし、レイに特に変わった所が無かったのでルドルは問題なくウェザとの話が済んだと推測した。
そして時が過ぎ新年度を迎えた。
この年度から必須5科目は授業の教え方を大幅に変更する事になっている。
半年間の精査構築の末に実施してみた所・・・
覚えの早い生徒は1年以内に、遅い生徒でも2年程で試験に合格すると言う結果になった。
この成果によって本校舎の教室に使用しない教室が出来てしまった。
そこで学校側は、ほぼ座学の商科を本校舎に移し、商科の専科棟に新たに調理科を設立した。
調理科は学食堂も運営を兼ねる事を前提に設立された。
運営は商科の生徒の実地訓練に。
野菜類などの食材は農科で作った物を。
肉・魚は基本的に買って来ていたが、たまに武術科の弓を専攻する生徒の狩って来た物を使用していた。
弓専攻なのだが、蒼麗が弓術で武術大会を圧倒して優勝して設立された。
当の蒼麗は武術科には所属してないのだが、教えに来てくれと勧誘されているようだ、それをとても迷惑に思っているのか、武術科の講師を見かけると素早く隠れている。
その蒼麗は調理科が設立されると、誰よりも早く入科した。
レイに言われた『胃袋を掴んだら勝ち』ってのを実践するつもりらしい。
そう言えば・・・
蒼麗なのだけど、元々綺麗好きでマメに掃除や洗濯はする、勉強についてもジンについて回っていたからキチンと理解して他の人に教えれるまでになっている、武術・・・と言うより蒼麗の場合は狩りになるのか、狩りの腕も既に1本立出来るだけの腕前だし、この上調理まで上達すると・・・完璧じゃないか?
見目も綺麗なお姉さんとして下級生から絶大な人気があって、家事全般も出来て肉類の自給自足も出来る、更には5科の勉強まで教えれるレベルで習得済みと来た。
調理を習得したら隙が全く無い様な気がするのだが・・・
そもそも蒼麗は単純な性格で、小難しい事は中々覚えれなかったのだが。
理解し易く覚え易かったら簡単に自分のものにしていった。
・・・きっと本人は否定するだろうけど、天才って蒼麗みたいなのを言うんじゃないだろうか?
簡単にって条件付きではあるけれど、習得する期間が半端無く短いのだ。
調理の習得にどれだけの時間が掛かるか、それが結論になるのかもしれないな。
そうだった。
学校内で蒼麗以外にも有名人が居た。
嫌味3人衆の1人ランゴである。
蒼麗とは違い絶大な悪評を持って有名になった。
ランゴは、武術科・商科・農科・魔術科に所属しているのだが・・・
武術科では、自分より確実に弱い者をいたぶる様な真似ばかりをして誰も相手をしてくれない状態と作った。
商科では、鍛冶科・木工科・農科で作られた物を街の商店に引き取って貰う際に暴利を得る価格しかつけない悪徳振りを発揮して、これまた皆に無視され取引の場にランゴは行けない状態を作った。
農科では、担当の持ち場の世話をせず、畑を荒れ放題・枯れ放題にして以来、ランゴが何かの担当を割り当てられる事は無くなった。
魔術科では、諦めが早く他人の邪魔ばかりする様になっていて他生徒から邪魔するなら出て行けとまで言われる嫌われっぷりを発揮していた。
そんなだから嫌味3人衆だったのに連れだった2人からも見放されボッチ状態になってしまっていた。
皆が一様に口を揃えて言う台詞が。
「あいつは何がしたいんだ?」
である。
ここまで嫌われるのも、ある種の天才なのかも知れない・・・なりたくは天才だけどね。
ランゴが何をしたいのか誰にも分からないまま。
3年の月日が流れジン達は4年生に、蒼麗は6年生になったその年に、西方で起こっていた戦乱にも決着の時が訪れようとしていた。
次話から西方の戦乱の話になります。
最近タイトルと内容の違いが気になってきました。




