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からかわれてなんぼ

「母さんただいま!」


「あら早かったわねーおかえりジン」


 そう言うとレイはジンを抱きしめた。


「か、母さん皆見てるよ、。ちょっと恥ずかしいから止めて」


「えっ!!・・・ジンは母さんをキライになったのね・・・かなしいわー」


「そんな事ないよ!僕は母さんの事は好きだよ」


「ホントにー?」


「ホントだよ!」


「でもねー母さんにはお父さんが居るから付き合えないわよー?」


「母さん・・・口説いて無いから!!」


「そーなの?残念ねー」


 母さんは相変わらずだった。

 退屈しないから良いんだけど、今日は流石に疲れる・・・燕楼から歩きっぱなしだったんだから。

 村出身の3人が温かい目で見守ってる、うんうんって頷いてる。


「これを見ると帰って来たって気になれるな」


「久しぶりに見るたけど。やっぱり仲が良いんだね~」


「うん、相変わらずの良さだよ」


「あら!!尚華ちゃん!!久しぶりねー、元気だったー?」


「お久しぶりです。勿論元気でしたよ」


「そー・・・これからもジンと仲良くしてあげてねー」


 レイは尚華の頭を撫でながら、色々な意味を込めてそう言った。

 それは尚華にちゃんと伝わったようだった。


「はい・・・」


「うんー。それとー初めて見る子も居るのねー。貴方のお名前はー?」


「初めまして!ウェンと言います。」


「ウェン君ね・・・蒼麗ちゃん、尚華ちゃん、この子は女泣かせになりそうだから気を付けてねー」


「「「えっ?」」」


 1歩距離をとり横目でウェンを見ながら呟く2人。


「・・・やっぱりそうなのね」

「・・・うん、なんか納得」


 女性陣には心当たりが有るみたいだ。


「俺は、そんな・・・2人共そんな目で見ないでくれぇええええっ!」


 絶叫したウェンを見て吹き出してしまった。

 こんな姿は中々見れないから。


「ジンー、自分は関係ないって顔してるけどあなたもよー」


「うぇっ!?」


「と言うか・・・もう泣かせてるかもねー」


 泣かせてなんていない。

 ・・・と思う。

 これからも泣かせない。

 ・・・と思う。

 ・・・

 ・・

 ・

 思いたい!思わせて!お願いします。じゃ。

 って退場したかった。


「ほら、だっていつも口説くじゃないー、母さんは泣く泣く断るしかないのよー・・・シクシク」


 って!

 そう言う事か!


「いや、だから、口説いてないって!」


 レイは絶好調だった。

 僕以外の皆は爆笑してるし。

 疲れてるのも忘れたみたいだな。

 でも・・・

 ダシは僕以外で取って欲しいな。


「うぉーい!若人共よー!もっと年寄りを労らんかー!」


 村に到着して置き去りにしたウェザが追い付いてきた。

 結構な時間を歩いたし疲れてるだろうから、村に1軒だけある宿の場所を教えて実家に向かったのだ。

 労るつもりで宿に置いて来たのだから文句言われるのは違うと思う。


「あらウェザ。久し振りねー」


「やはり此方にいらっしゃいましたか。レイオミ・・ラ・・」


 畏まり丁寧な口調のウェザが言葉を中断した。

 レイが唇に人差し指を縦に添えて『言うな』と合図を出していた。

 ついでに冷たい空気も左手から出していた。

 レイは左手に指輪を2つしている。

 1つは結婚指輪。

 もう1つは今は亡き祖父からプレゼントされた指輪。

 その指輪は特注品で発動の魔晶で出来ていた。

 魔術は、その人の持つ属性の力を集め放出するのが基本で、放出が出来ないとないと魔術を行使は不可能なのだ

 レイはその名の通り冷属性に長けている、常に発動魔晶に触れているので無意識下でも冷気の放出が出来てしまうのだった。


「母さん?もう涼しい季節だから冷気は要らないよ?」


 気まずい訳ではないが、茶化してみた。

 皆が少し逃げ腰だったのは確かだし、何らかの効果が有ればいいなと思い言ってみたのだ。


「そう言えば涼しくなったわねー。もぅウェザが昔話をしようとするからだからねー」


 昔話って感じじゃなかったけども・・・

 皆一様に同じ思いらしく、首を傾げていた。


「ジンは昔の私が知りたいのかしらー?」


――あっ、やっぱり僕をダシにする?


「女の昔を知りたがるなんてー・・・どんな魂胆が有るのかしら?」


「魂胆!?」


「そうよー女の過去は秘密なのよー、知りたがるなんて魂胆が有るのよー」


「な、ないよ!」


「ホントにー?もしかして、母さんの秘密を盾にして手込めにする気ー?」


「手込め?しないよ!」


「そうなのー?ジンったら連れないわねー、ううん、釣れないが正しいのかしらねー」


「僕を釣ってどうするの!もし、釣れたらどうするの?」


「それはもちろんー、私にはお父さんが居るから、ふるわよー?」


「ふるなら釣るなー!!」


「ふらないなら釣っても良いのかしらー?」


「えっ?」


「そう言う事よねー?」


「・・・息子を釣るなっ!!」


 またもや皆は笑っていた。

 漫談をやっているつもりは無いのだけど、傍目には面白いみたいだ。

――オモチャにされてるだけだと思うんだけどな・・・

 日常って言えば日常の出来事ではあるのだけど。

 今日はいつもより凄い。

 鬱憤でも晴らしているみたいに長々とからかわれている。

――父さんと喧嘩でもしたのかな?

 いつも仲が良いから、たまにする喧嘩は相当なストレスになっているみたいなのだ。

 もしかすると。

 からかうのがレイなりの八つ当たりなのかも知れない。

 ジンもからかわれるのを嫌だと思った事がなかった、それどころか楽しいと思っていた。


「長々とここで立ち話してると私がお持て成しする気が無いみたいでイヤだからー裏にあるテーブルに座ってねー。蒼麗ちゃんと尚華ちゃんは荷物を先に置いて来ちゃうー?」


「父さまに捕まると来れなくなりそうなんだけどな・・・どうしよう」


「うん、なりそうだよね」


「夜徳さんなら夫婦揃ってお祭りで食べる物を狩りに行ってるわよー。尚華ちゃんとこは待ってるわねー」


「んじゃ私は置いて来ます」


「待ってるのかー。私は帰る事にします」



 2人はそれぞれの家に向かって行った。


「それじゃー・・・ウェザ?話が有るなら後でねー。それがイヤなら話自体なしよー」


 急ぐわけではないのかウェザに異論は無いらしい。

 家の裏に有るテーブルの席に座りお茶と茶菓子を持って戻ると丁度蒼麗がやってきた。

 そして、ウェンが女を泣かせて痛い目を見た方がいいとか、蒼麗の弓技を祭りの出し物としてやってみたら?とか、雑談をして日暮れ近くまで過ごした。


 ウェザは宿に泊まらないで野宿をすると言う。

 ウェンに野宿の体験をさせたいそうなのだ。

 村の中で野宿ってする人が居ないし、野宿するために来る人も居ないので、場所は自分達で見付けてもらうしかない。

 しかしウェザは既に適切な場所を見付けていた。

 突然の降雨にも対応でき風除けになるものが付近に有る場所が有ったと言う。

 そこは、ここ僕の実家と村の中心の中間位にある数本の胡桃が植わっている所が適切らしい。

 そこにテントを張り数日過ごす予定みたいだ。

 これ以上暗くなるとテントの設置が大変になると言うので、この場を退散した。

 剛義も痛み止めをレイに貰い飲んでいて痛みがぶり返す前に帰ると言いウェザ達と一緒に帰って行った。

 蒼麗は両親が狩りから戻ったら迎えに来るらしくレイと2人で楽しそうに話している。


「夜徳さん達は遅いわねー、帰ってから夕飯の支度するんでしょー?」


「多分・・・何にも用意してないみたいだったし」


「それじゃ大変よね、今日は家で食べちゃわない?勿論、夜徳さん達もよー」


「良いんですか?母さまも楽できるって喜ぶかも」


「家は構わないよ。ねぇジン」


 いつの間にか寝てしまっていた。

 燕楼からの移動の疲れもあるだろうけど、久しぶりに母親にからかわれて安堵してしまったのも大きいかもしれない。


「あらあら、寝ちゃってるわー」


「あははは、ジン君の寝顔、久しぶりに見たけど可愛い~」


「蒼麗ちゃん?男はね胃袋を掴んだら勝ちよー!」


「ふぇ?・・・え?」


「私が分からないとでも思ったのー?」


「え?・・・え?」


「んふふ。この子の好きな料理、教えてあげるわー」


「はい!!」


 胃袋掌握作戦を実行するための訓練を開始するために女性2人は台所へ向かった。

 もうじき日が沈む。

 それに伴い気温がどんどん低下してくる。

 しかしジンは一向に目覚める気配はない。

 

 日が沈み辺りが闇に包まれようとする頃、ルドルは森から帰って来た。

 帰って来るなり裏庭のテーブルセットで熟睡するジンを見つけて少し戸惑った。


「ジン、起きろ・・・ジン」


「ん・・・ん~、父さん・・・おはよう」


「ん、おはよう。だがな夜が始まったばかりだぞ」


 西を見ろと顎で示めした。

 西の空は薄っすら明るかった、もう数分で完全に夜にバトンタッチしようとしていた。


「・・・寝ちゃったのか・・・」


「昼は外で寝ても大丈夫だが、夜に外で寝るにはふさわしくない季節になってるから気を付けろ」


「はーい。・・・あっ、父さんただいま、そんで おかえり」


「ん。おかえり。ただいま」


「それにしても随分遅かったんだね」


「まぁな。お前が森に行く前に見つけ易いのは採っておきたかったからな」


「え?なにそれ?父さん息子に優しくないよ!」


「はっはっは、レイも今朝同じ事を言って拗ねていたよ」


 だからか、いつも以上に絡んできたのは。

 少しは憂さを晴らせたのかな?

 台所の辺りが賑やかだから晴らせたみたいかな。

――姉ちゃんまだ居るんだ。


「蒼麗ちゃんが居るみたいだな。夜徳はまだ森か」


 余程の大物を仕留めたのか、何も狩れてないのか。

 夜徳がこんなに遅くまで森に居るのは珍しい。

 蒼麗は今夜家で食べて行くのかな?

 父さんと連れ立って家に入ると、蒼麗はご飯作りに集中していた。

 何でも軽食以外の物を作るのは初めてだと言う。


「2人共ちょっと外のテーブルに明かりをセットしてきてくれるー」


「ん?良いけど外で食べるの?」


「夜徳さん達、戻ってからご飯の準備するのは大変でしょー、今夜は招待しようと思ってねー」


「なりほど、それは良いかも知れんな」


 収穫も終わり夜ともなると長袖を着ていないと肌寒く感じる季節になっていたので、明かりに集る虫を気にしなくて良くなっていたので柱を立てて明かりを2ヵ所設置していった。

 明かりを設置し終わった所で夜徳さんがやってきた。


「よう、夜なのに精が出るな」


「おう、戻ったのか。今夜は家で食ってけ。今から飯の準備は大変だろう?」


「せっかくの誘いだが、悪いだろう?」


「そんな事はきにするなって、蒼麗ちゃんが1人で作った料理を俺達だけで食べて良いのか?」


「なんだと?それは食わない訳にはいかんだろう。分かった家のを呼んで来る」


 再び夜徳夫妻が揃ってやって来た時には料理もほぼ並べ終わっていた。

 料理を並べている時から気が付いていたのだが、どれも僕の好きな料理ばかりだ。

 基本的に家で出てくる料理はニンジンをたっぷり使っていなければどれも好きなのだが、今日のは特別豪華に見てた。いつもより盛り方が多いからなのかな?

 皆席に着き父さんの音頭で食べ始めた。


「父さま。母さま、そのお芋のサラダ、私が作ったの食べてみて」


「これか?どれ」


 僕も相伴して食べてみた。

――ん!美味しい。ニンジンも臭くなくて美味しい。

 ニンジンの独特の臭いが苦手なのだ・・・あの臭い気になりだすと鼻に付いて食事どころじゃなくなるのだ。

 夜徳さんも『ほう』と感嘆の声を出している。


「姉ちゃん、これ美味しいよ!」


「ほ、本当?」


「うん!ニンジンも臭くないし味もしっかり付いてるし、ニンジンも臭くないし野菜も茹で過ぎたりしてないし、ニンジンも臭くないし」


「あはははは、ジン君どんだけニンジン嫌いなの?」


「え?・・・ははははは」


 そお後は武術大会の話をしたり、狩りの獲物の話をしたりして楽しい食事の時間を過ごした。

 夜徳は武術大会で蒼麗が披露した弓技の事を聞いて目を丸くしていたけど、大会用の矢がまだ沢山余ってるので明日の祭りで余興として披露するから楽しみにしててって台詞を聞いて今から待遠しいみたいだ。

 狩りの獲物はイノシシが2頭と2足蜥蜴が1匹狩れたそうだ。

 2足蜥蜴は風竜王のお膝元だからか風属性だったらしく狩るのに時間が掛かってしまって帰るのが遅くなったらしい、今さっき聞いた蒼麗の弓技を用いれば風属性と言えども狩るのが楽になるかもしれないと言っている。

 今の蒼麗なら狩れない生き物はいない気がするのだが・・・


 食事も終わり時間も遅くなって蒼麗がウツラウツラし始めたので、お開きにする事になった。

 夜徳さん達は礼を言い蒼麗を背負って帰って行った。

 僕等も食器を洗い寝る事にした。



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