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口は災いの元

ジン君サイドにチェンジです

「この俺がお前ごときに負ける訳がないんだ!」


 ジンは武術大会予選の場に立っていた。

 対峙しているのは。

 授業初日に絡んで来た嫌味3人組の1人でランゴと言う。

 ランゴの父は燕楼の財務部の重鎮であった。

 3人兄弟の末っ子だった。

 兄2人もこの学校に通っていた、長男はすでに卒業し燕楼の衛兵隊に入隊し2年が経っていた、その2年で頭角を現し将来を嘱望されていた。

 次男はまだ在学中ではあるが商学と農学で頭1つ抜けた存在であって、これまた将来は重鎮になるだろうと皆に予想されていた。

 そして末っ子のランゴだが・・・

 何とも言えない。

 必須5科の試験は算学Ⅱと地産学を落としているらしく授業で見かけた。

 専科は。

 商学で尚華が見掛けたと言っていた。

 農学でも見かけたとコノネが言っていたし。

 武術でも見学に行った剛義が見たと言っていた。

 魔術も最初の座学で居るのを見たし。

 手広くやり過ぎだと思う、どれも中途半端にしか身に付かなはずだ。

 そんな中途半端なランゴの剣筋は呆れるほど単調で剣で受けたり逸らしたりする必要が無かった。

 身体捌きだけで避けれたのだった。

 避け続けていたら、さっきの台詞が出て来たのである。

 何て言い返してやろうかな?


「ランゴ、君さ何になりたいわけ?僕は手広くやり過ぎて中途半端な奴に負ける様な修練はやってないよ」


「五月蠅い!!だまれ!!」


 僕はこいつが嫌いだ。

 何の実績も無いくせに親の威光を傘にしてエリート面する様な奴は嫌いだ。

 こいつの2人の兄は努力して周りに認められるだけのものを手に入れてるけど。

 こいつはまだ何も手に入れてない。

 そんな奴に礼儀なんてものは必要ない。

 しかし・・・図星を言い当てられた人って同じ事を言うな。

 言い返す言葉がないんだから仕方ないのかな?


 全力の空振りを10分程繰り返したランゴは、とうとうへばり込んだ。

 自分が1番だと思い込んでる奴には良い薬になったんじゃないかな?

 これで何か1本に絞って学ぶ様になったり・・・しないな。

 凄い恨みがましい目で睨んでるよ。

 こいつは、誰が何を言っても聞き入れないタイプなのかな?

 それは兎も角、これで42勝。

 後は剛義との試合を残すのみだ。

 これまたやり難い相手が最後に巡ってきたものだ。


 次の日。

 剛義との試合が始まった。

 剛義と僕はお互いに無敗。

 この試合に勝った方が学年代表になる。

 やるからには手を抜いたりはしない。

 だけれども、剛義も最近は防御が上手くなってきた。

 僕も攻撃の方が出来るようになって少しは成長していると思うのだけど。

 剛義の成長速度には付いて行っていないと思う。

 この試合は防御に徹して隙を狙っていくのが最良じゃないかと踏んだ。

 そしたら剛義も同じ作戦を取ったらしく打ち込んで来ない。

 ・・・どうしたものか?


 長時間にらめっこを試合でするわけにもいかないので、打ち返してくれと言わんばかりの隙だらけな1撃を加えてみた。

 剛義は避けるだけだった。

 2度3度と繰り返しても避けるだけで打ち返して来ない。

 バレバレの誘いの打ち込みを警戒しているんだろう。

 ん?

 ・・・

 ・・

 ・

 なら素振り様に途中で止めて避けた方に軌道を変えてみたらどうだろうか?

 さっそくやってみると、流石に避けきれないと判断したのか剣で受け止めた。

 受け止められるのを前提で打ち込めば次の1撃も早く出来る。

 やってみた。

 軌道を変え受け止められてから振り下ろしの1撃を繰り出すと後ろに引かれて躱された。

 う~ん・・・

 まいったな、お手上げだ。

 後ろに引くなら、袈裟で振っても躱されるのが落ちだし。

 そっから突きを繰り出しても更に下がられたら隙だらけになって1撃を貰ってしまう。

 袈裟に振ってからの切り上げも同じだ。

 躱されたら隙だらけになってしまう。

 剛義が打ち込んで来ない限り勝機がなさそうだ。


「なぁ剛義。自分から打ち込む気は有るのかい?」


「いや、無い」


「そっか・・・なら僕には手詰まりだ、どうする?」


「好きにしてくれ」


「先生、今の僕にはあれで手詰まりです。勝機がないので棄権します」


「えっ? 良いのかい?この試合に負けたら学年代表にはなれないよ?」


「・・・試してみたかった事が通用しなかったので、このどう攻めてもカウンター貰うイメージしかわかないんです」


 こうして学年代表は剛義になったんだけど。

 それにしても・・・

 ここ何日か様子が変だったのだけど。

 今日は一段と変だ。

 口数が少ないし、時々何かを考え込んでるし。

 どうしたんだ?


 その答は夜になってわかった。

 今日は試合をした事だし日課の稽古はしなくても良いかな。

 って剛義に言った所、試合と稽古は別だろう。

 と言うので稽古をしたのだけど。

 型稽古が終わった所で。


「ジン、一度本気でやってくれないか?」


「?・・・僕はいつも本気でやってるよ?」


「それは分かってる。その上の本気だ」


 力を使った状態で打ち合ってみたいと言う事らしい。

 それを聞いて顰めっ面になっているのが自分でも分かる。


「一度でいいんだ、今、自分がどれ位なのかを知りたい。同年代との試合じゃ全く分からなかったんだ」


 確かに同学年と比べると僕等は突出していた。


「だから頼む!一度だけあの力を使ったお前とやってみたいんだ」


 顰めっ面で押し黙ったまま何も言わない。

 力は使いたくない。

 心底使いたくない。

 いくら剛義の頼みと言えども、それだけは聞けない。


「どうしたんだ?デカい声で。仲の良い2人が喧嘩かー?でもな、そのぶら下げてる剣は物騒だから置いてやれよ」


 そこにはウェンが立っていた。


「喧嘩じゃないな。俺が頼み事をしてたんだ」


「それがあの力ってやつか?」


「何でそれを?」


「あんなぁ、あんだけデカい声で話してりゃ聞こえるっての。で・・・あの力ってどんなのだ?」


「・・・俺が話して良い事じゃないから、ジンに直接聞いてくれ」


――えっ!?こっちに投げるのか?

 言い出しっぺに処理してもらいたいのが本音だ。

 だけど、ペラペラ喋らないでくれる事には感謝できる。

 何年も前の約束を守ってくれている事が嬉しかった。


「・・・まだ秘密って事じゃダメかな?」


「・・・まだって事はいつか教えてくれるのか?」


「分かんない。本当は誰にも知られたくなかったし」


「そうか・・・なら仕方ねぇな」


 恐らくウェンは諦めていない。

 強引に聞き出すつもりは無さそうだけど、しれっと聞き出そうとして来るかも知れない。


「あっ!そうだ!剛義が知ってるって事は蒼麗ちゃんも知ってんのかな?・・・よっし!聞いてみっか」


「「えっ!?」」


 同時に声が出た。


「お姉ちゃんも知ってるけど話してくれないと思うよ」


「止めとくのが良いぞ、姉ちゃんはジンの事になると怒りっぽくなる時があるからな」


「ニコニコしてる蒼麗ちゃんしか見た事無いけどな」


「猫を被ってるだけだ、その下には虎が・・・いや、虎より恐い何かが居る」


――それ、お仕置き対象な発言だぞ?


「うんうん。聞くのは良いとしてもしつこくはダメだよ?」


「あんな綺麗な人が怒るのか?信じらんねーんだけど」


「お姉ちゃんの根本は猟師、狩る側の人だよ。苛烈じゃ無いけど攻撃的な所も有るからね」


「うむ!姉ちゃんを怒らせる位なら、虎と四手熊の喧嘩の仲裁をする方がましだ!」


「・・・剛義さっきからお仕置き対称な発言が多いよ・・・僕を巻き込まないでくれよ」


「大丈夫だろ?姉ちゃん居ないし」


 その時だった。

 剛義の後ろの暗闇からスッと人影が現れたのは。

 そして剛義の耳元で囁いた。


「誰が居ないのかしら?」


「・・・うぇえええええっ!!!ね、ね、ね、姉ちゃん?いつからそこに!?」


「私の笑顔の下には虎以上の何が居るのかしら?」


「え?・・・いや、その・・・えっと、その・・・えっと・・・」


 いつも以上ににこやかな顔をしているけど、月明かりの陰影も相まって笑顔が笑顔で無く見える。

 それでなくても半端ない威圧感を放っているのに・・・

――剛義・・・成仏しろよ

 ホントに冗談でなく、怖い!

 見られている事に耐えるだけで命を削っていそうだった。

 ウェンも引き攣った顔をしているし、似たような印象を持っているのかな?

 なんにせよ、怖さを最大限に分かってくれたみたいだ。

 

 蒼麗が剛義に詰め寄っている間に脱出を試みた。

 少しづつ少しづつ後退をして姿を眩ます作戦だ。


「ジン君!!お座り!!」


「はいっ!!」


 ダメか、バレバレだったみたいだ。


「ウェン君?君はどうなのかしら?」


「え?・・・あ!!そうだ!!明日早いんだった、そろそろ帰らないと。じゃ、またなー」


 向きを変え足早に消えて行った。

――なんだと?ウェンはお咎め無しか!?

 驚愕の面持ちで居ると・・・

 お説教タイムの始まりだった。

 延々と1時間、正座のまま・・・足が消失するとこんな感じなのかな?


西方と緊張感が全然違います。

いずれこっちも緊張感だらけなるんですけどね

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