西方・王国建国(2人の馴初め)
ラグリナスとファシリアスの出会いは15歳の時に留学したメヤ公国の全寮制の学校でだった。
出会った当初の仲は良くも悪くもなかった。
両国の国王同士が反目し合っていると言うのもあり。
互いに意識し合わない様にしていだのだ。
しかし、そんな事をして居れたのも最初の内だけだった。
意識をしない様にすればするほど相手の一挙手一投足が目についてしまっていた。
意識しないという形で意識を向けてしまっていたのだ。
それ以外にも理由はあったのだが・・・
この頃の2人に言っても力一杯否定するだろう。
相手がどこの誰だか判明する前に見掛けた時に、その容姿に目を奪われ釘付けになり魅入ってしまっていた。
簡単に言ってしまえば。
一目惚れだった。
理由はどうあれ。
見ていたせいで誰よりも相手の事を知る様になった。
良い所も悪い所も。
それでも無視し合っているのに恋仲と噂が立っていた。
2人共容姿が良く敵の出来難い性格をしていたのである。
どちらも侯爵家という高い身分の子息と子女であったが、身分を傘にした態度をとったりせず気さくに誰彼と無く付き合いを持っていた。
容姿も良く性格も良いとなれば、年頃の集団である。
誰が良い、彼が良い、と言う話が出てくるのは必定である。
2人の周りも例に洩れず話題に上った。
しかも2人は男女それぞれの人気No.1だったので、誰と話していても必ず話題に上った。
そうなるとどうしても話を振られる。
答えを曖昧にする訳にもいかないので一応答えるのだが・・・・
それが悪口ばかりなってしまう。
悪口ばかりなのだが、事細かで良く見ていないと気が付かない事なども多くて勘ぐられて噂が立ってしまっていた。
その2人が本当に恋仲になったのは。
4年間の留学が終わる間近の頃だった。
『ようやく、あいつの顔を見なくて済むようになるのか』
と考えたあと直ぐに寂しさが込み上げて来た。
その理由は2人共も気が付いていた。
そこで行動に移したのはラグナリスだった。
ファシリアスが1人で居る時を狙って。
『ファシリアス!・・・これはシナト王国のルクナガルト侯爵家の人間としてではなく、私個人としての意見だ。聞いて欲しい』
すっごい言い訳がましい言い方であった。
『私は君が好きだ。多分初めて見掛けた時からずっと好きだった。この思いを告げておきたかったんだ。それだけだ、時間を取らせて済まない』
自分の言いたかった事を告げて立ち去ろうとした所をで。
『あ・・・あの・・・私も貴方の事を好きです。多分・・・同じように初めて見掛けた時から』
4年の時を掛けやっと実った想いでした。
想いを実らせはしたけれども、帰国間近でしたし婚前の行為をする事はない。
初婚が未通女でないと言う事は婿方の家を馬鹿にする事になる。
そして嫁を拷問してでも相手を調べ出す事が容認されていた。
そんな風習がある中で行為に及ぶほど馬鹿ではない。
自分達が結ばれる可能性は無くはないけども・・・
限りなく零に近い。
2人は何の名案も浮かばず帰国した。
ルクナルドは帰国してから軍務に就いた。
政務は若輩の自分では判断しかねる事が多いと判断し、まずは座学から学ぶ事にしたのだ。
座学ならば軍務の合間にも出来ると判断したのだった。
軍務に就き最初に命令されたのがトルムラートに繋がる国境警備だった。
そうファシリアスの居るガムラミット侯爵領に繋がる街道だ。
ルクナルドは閃いた。
無理なのは承知しているが、街道の中間点に当たる通称・中州廃城で会う事は出来ないかと。
ダメ元で手紙を書いて傭兵ギルドに特別依頼として託してみた。
その頃ファシリアスは・・・
同じく軍務に就いていた。
ファシリアスはガムラミット侯爵家の一粒種で侯爵位を継ぐ事が決まっていた。
万が一に有事となった場合。
『兵役にも就いた事のないお嬢様に何が分かる』
と、馬鹿にされ命令に従わない者を出さない様にするためだった。
そして配属されたのが侯爵直属の部隊だった。
ファシリアスは大いに不満だった。
これでは軍務に就いたと言うだけで何等意味を成していないからだ。
そんな時に城門でトラブルが起こっているのに遭遇した。
『どうしました?何かありましたか?」
『いえ、この子が手紙を姫様に渡してくれと、そして渡した証拠も欲しいといっておりまして困ってたのです』
少女に視線を移すと。
『あたしね、お駄賃をもらっちゃったからちゃんとお仕事しないといけないの』
『そっか、それで誰からのお手紙なのかな?』
『んとね、お姫様の友達だって言ってたよ。せいきのてつづき?ってのをすると間に合わないから別るーと?ってので送って来たんだって』
『そうなの?お手紙を見せてもらっても良いかな?』
『うん』
手紙を見ると、その字はルクナルドの物だった。
ファシリアスは直ぐにでも開いて読みたかったがグッと堪えた。
『お嬢ちゃん?どうしても姫様に届けなきゃダメなの?』
『うん・・・それがお仕事だもの』
『そっか、それならそのお仕事はちゃんと出来たって事になるよ』
『えっ?』
『私がその姫様なの』
『ホントにー?』
『こら、失礼だぞ。その方はホントに姫様だ』
『あっ・・・ごめんなさい』
『ふふ、良いのよ。そこの休憩室を借りても良いですか?」
『はい!どうぞ』
『お嬢ちゃん?行こうか。でも・・・証拠はどうしようかしらね?』
『ん~と・・・封筒に姫様の名前を書くんで良いんじゃないかな?字ってちょっとずつ書く人が違うと違うでしょ?』
『あぁ、そうね。それで良いわね』
手紙を取り出し封筒に署名をして少女に渡す。
『姫様ありがとう。あたしお仕事できた♪』
『そうね。お利口さんだね』
そう言うと走って街中に消えて行った。
少女が見えなくなると休憩室に戻り手紙を読んでみた。
ファシリアスは、その内容に目が覚める想いだった。
ラグナリスの提案は考えうる中で最良のものに思えたからだ。
ファシリアスは決断した。
父の予定など気にせずに配属の変更を願い出に行ったのである。
勿論、配属先は国境警備にだ。
一粒種の目に入れても痛くない娘を国境警備に回す事など許す訳もない父だったが。
ファシリアスの何時に無い気迫に押し負かされてしまい了承してしまった。
こうして2人は堂々と会う手段を手に入れた。
気迫に負けた父は国境警備に行きたがる理由を調べる為に調査を開始した。
一方のラグナリスの父も、国境警備に行くのが楽しみしている様子の息子を不審に思い調査を開始した。
1ヶ月後になって調査結果が上がって来た。
その報告書を読んで苦虫を嚙み潰して微笑んでいる様な顔になった。
『子供に好きな人が出来たのは喜ばしいが、その相手が寄りにも寄って隣の侯爵家の人間とは・・・・』
って事だった。
更に驚きだったのは、2人に釣られて警備兵同士も仲が良くなったと言う事だ。
傍目には同じ軍に所属する者同士の様に見えるとあった。
反目し合いトラブルを続出するよりはましだから問題はないのだけど。
この短期間で報告書にある程に良くなった事が驚きだったのだ。
報告書には書いていないが、恐らく巡回兵などを介して領内に2人の関係の噂が広まっているのではないか?
と、両侯爵は考えた。
出来る事なら2人の事を結び付けてやりたいが現状ではそれが非常に難しい・・・
両侯爵の思案に暮れる日々の始まりであった。
ラグナリスとファシリアスはどちらかに婚姻の話が持ち上がるまでは、こうして会える時は会うと互いに決めていた。
しかし、8年経っても婚姻の話は勿論、転属の話すら持ち上がって来ない。
かなり不思議な話だった。
警備兵は警備兵はちょくちょく入れ替わっているのに自分達は現状維持が続くなんて訳が分からなかった。
両侯爵は転属させて出奔・亡命などされたらたまらないので転属をさせれなかったのだ。
そんな事をされたら戦争の火種になりかねなかった。
しかし。そんな心配を余所に此度の戦争が起こった。
当然両侯爵にも出兵要請が出る。
出兵をする前に両侯爵は家督を子供に移譲した。
これは戦場で2人出会ってしまった時に情で動きが鈍る、動きが取れない等を無くすために侯爵としての重責を負わせる為だった。
幸いな事に2人は小競り合いでは出来わす事無く今日まで転戦してきた。
しかし・・・
この戦場での布陣だと開戦すれば最初にぶつかるのはお互いの部隊だった。
右翼先鋒と左翼背先鋒だったのだ。
ファシリアスは何とかならないのかと蒼白気味な顔で考えていた。
そこにヴァルシュエルが1つの案を持ち接触してきたのである。
ファシリアスはヴァルシュエルの提案を熟考の末に勝算ありと踏んで乗ることにした。
そして部隊を副官に任せて、ヴァルシュエルの導きによラグナリスと極秘で面会し事の説明を行いラグナリスにも了解をとった。
その後はヴァルシュエルの魔術により霧を発生させコーウェインとの面会となった。




