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なんでこうなった?

 ――なんでこうなったんだろう?どこで間違えたのかな?


 ここは寄宿舎の2階の大集会場。

 今、ここには100人前後の人が集まっている。

 何かの集会をしている訳ではなくて。

 皆、勉強をしている。

 言うなれば大勉強会といったところである。

 講師達も見学に来ていた。

 そして、この大勢に勉強を教えているのはジンだった。

 いつもの通りやる気が有るのか無いのか分からないノホホンとした表情ではあったけども、内心は戸惑いが先行していた。

――ホント、なんでこうなったんだろう?


 事の始まりはこうだった。


 言語Ⅰの授業内容に『えッ?』って思ってしまったのが始まりだった。

 言語Ⅰはカタカナ・ひらがなの読み書きなんんだけども。

 その教え方がイロハだったのである。

 50音表を見慣れたジンにしたらイロハは覚えるのに困難な方法だった、法則性が見いだせないのだ。

 新世界でも【ゐ】【ゑ】はほぼ使って無いのにイロハだと入っている。

 それを覚えさせる意味も分からなかった。

 もしかして蒼麗が不安に思っているのも、ジンと同じ理由なんじゃないかと思い何が不安なのかを聞いてみた。


「んーとね、読むのとか書くのは出来るの、でもねイロハニホヘト・・・って全部覚えきれてないの。後ね【ゐ】【ゑ】が【い】【え】とどう違うのか分かんないの」


 やっぱりであった。

 個人的にはイロハを覚える必要は無いと思っている。

 50音表の方がずっと覚え易いはず。

 

「あのさ、イロハを覚えなくても良いと思う。僕の知ってるもっと覚えやすいのでよければ教えるけど、どうする?」


「もっと覚え易いの?イロハ覚えなくていいの?それ・・・教えて貰おっかな」


「うん、それじゃぁさ、えーと?・・・夕食後で良いかな?食堂で教えるって事で」


「午後は専科に行かないといけないしね、それで良いよ」


 と、言うのが始まりだった。

 その日の夕食後に50音表と【ゐ】【ゑ】は本とかで見た事無いんだから覚えなくても良い事を教えてみた。

 イロハみたいな長文を丸暗記するのではなく、縦1列5文字づつ覚えて行く50音表は覚えるのが簡単だったらしく、あっという間に理解した。


「ジン君、これ覚え易いね!」


「でしょ、1コマに斜めに線を引いてカタカナとひらがなを書くと両方覚えれるからラクチンなんだよね」


「うん!これ凄いよ!・・・もしかしてさ、他の科目も覚え方は学校とジン君じゃ違うのかな?」


「どうだろう?授業出てないし分かんないよ」


「じゃぁ、お願い!違うかどうか確かめて貰っても良い?」


「うん、良いけど」


 と、安請け合いしたのが決定的な間違いだったのかもしれない。

 他の科目を受けて回った結果。

 基本的には同じなんだけど根本で違う感じだった。

 それを蒼麗に伝えると。


「じゃぁ・・・ジン君の方法を教えて♡」


 甘えられちゃったよ。

 頼みを断れず教え始めたのは良いんだけど・・・

 次の日になると、コノネと尚華が教わる側に加わっていた。

 1人も3人も変わらないか、って思って教えた。

 そしたら。

 その次の日には3人の友達まで加わって6人になっていた。

 その後は日毎に増えて行って、とうとう100人前後にまでなってしまった。

 結局は自業自得だったのだ。


 人数が増え食堂サイドから苦情が出て集会場を使用するようになると。


「ジン!お主はやっぱり天才じゃったか!!」


 と、いつもの台詞でウェザ先生がやって来たり。

 試験の合格者が増えて興味を覚えた5科の講師が見学に来るようになったり。

 何でか分からないけど、にこやかに威圧する蒼麗が近くから離れなくなったり。

 目立ちまくりな日々になってしまった。

 ――僕の細やかな平穏は何処へ行ったんだろう・・・



 細やかな平穏が地平の彼方に行方を隠して今に至る。

 蒼麗に教え始めてから約3ヵ月が経っていた。

 3ヵ月の間に100人前後から人が増えなかったのは不幸中の幸いだった。

 その間、テストに合格したり勉強の仕方を覚えた人達は来なくなったのだ。

 ・・・蒼麗以外は。

 蒼麗は毎回やって来るものだから教え方まで覚えたので、とても助かっている。

 元々面倒見の良い性格をしているので、教え方も丁寧で分かり易い感じだった。

 そう、優しい美人の家庭教師って感じだな。

 なんだろう?

 美人の家庭教師って響き・・・ドキッとするな。

 教わってる人がちょっと羨ましく思えてしまった。


「ジン君、ちょっといいかい?」


 5科の先生だ。

 なんだろう?

 やっぱりまずかったかな?

 授業のやり方以外の方法で教えるのは。


「なんですか?」


「今日の職員会議で君の許可があれば君の勉強法を学校で採用する事になったんだけど。どうだろう?構わないかな」

「え?・・・えっ!?僕のやり方を?・・・良いんですか?」


「あぁ、正直な所な、こんな覚え易い方法が有ったのか、と目から鱗なんだよな」


「そうなんですか?学校側に僕のやり方で問題無いって言いうなら構わないですけど・・・」


 先生が目から鱗なら。

 僕は瓢箪から駒である。

 あ、でも、この状態から解放されるのかもしれないな。

 そしたら少しは平穏が戻ってくるかな?


 集会場の使用時間が来て部屋に戻る途中でポスターを貼っている人を見かけた。

 そのポスターは校内武術大会の参加者募集ポスターだった。

 剛義あたりは勇んで出場しそうなイベントだ。

 予選は来月、田植え休暇の後に始まって本戦は収穫休暇の前に行うと書いてある。

 予選は各学年で出場希望者総当たりで争われて学年代表を選びだす。

 本戦は学年代表のトーナメントとなる。・・・か

 予選がすっごい厳しいな。

 もし自分を含めて50人の希望者が居たら49戦しないとダメって・・・

 予選期間が長いのも納得だな。

 しかし・・・49戦・・・考えただけで疲れて来そうだよ。

 剛義辺りなら。

 

『腕試しには丁度いい!』


 とか言うのかな?

 その辺りは付いていけないんだよな。

 ――あっ! 今ポスターを貼ってたって事は剛義はまだ知らないんじゃないかな? 教えてやらないとな。

 そう思って足早に部屋に戻ると。


「ジン終わったのか?」


「うん、さっき終わったよ。ところでさ・・・」


「武術大会の申し込みジンの分もやっといたからな」


 ――はぁ!?



書いていて思いました。

ジン君って覇気がないですね。


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