イヤな奴
ウェザ先生はあのあと結局捕まって採点をやったらしい。
次の日の午前中に校内の植え込みで売れる物を物色して回っている時に会ったんだけど。
ゲッソリと言うかゲンナリと言うか・・・衰弱していた。
人相すら変わっていたいた気すらした。
デスクワークの何がそこまで嫌なんだろう?
昔、1年だけだけど引き籠ってMMORPGばっかりやってたけど別に嫌じゃなかったからな。
やっぱりゲームと仕事は違うんかな?
んま、昔も今もまだ子供な僕が知る必要はまだ無いと思っておこう。
先生に出会ったついでに畑や花壇以外に生えている薬草の類を勝手に採って良いのか聞いてみたところ。
雑草として刈られる物だから採ってもいいとの事だった。
取り敢えずは寄宿舎の周辺から採って行ったけど。
かなりの種類と量が有る事が分かった。
校内全部の薬草を採り尽せば結構な額になるんじゃないかと思う。
皮算用は禁物だけど郊外に出なくて済む分、結構ウマウマだ。
午後からはテストの結果の発表があるって事なので午前中のみ採取してたのだけど。
収納の魔晶が3割程埋まった。
良く見掛ける薬草だし銀貨1枚位になってくれれば御の字と思っておこうと思う。
そして午後。
本校舎の外に掲示板が設置されて教科毎に合格者の名前が張り出されていた。
5教科全部を探して回るのは骨なので本校舎入口で出身地と名前を言えば成績表を貰える。
成績表を配るなら何で合格者の名前を張り出すのかは謎ではあるけど。
そのテストの結果だけど。
全科目合格。
内容が内容だったから当然の結果ではあったのだけど・・・何科目か落としておくんだったと後悔してしまった。
だって合格者の名前を貼り出すなんて聞いてないよ!
目立つのはイヤなんです。
彼方此方でジン、ジンと名前を口にしてる人がいっぱい居る。
掲示板の一番左上に名前が書いてある、しかも全科目で。
ジンはその場から早いところ逃げ去りたかったが、剛義にここで待つと置き手紙をしてあったので去る訳には行かなかった。
「ジン!」
やっと待ち人が来たと思ったらウェザ先生だった。
「お主、やはり天才じゃったか!!」
「先生?藪から棒に何ですか?」
「何って、お主のテストの結果じゃ!全科目満点なんぞ天才以外にあるまいて!」
「えっ?満点だったんですか?それは知らなかったです」
「あ、いかん、そうじゃった、生徒に点数までは教えんのじゃった。・・・しかしのう、入学早々全科目合格というのも2人目の快挙じゃ!」
前例が有るみたいだ。
ならば少しは目立たなくて済むのかな?
「この結果で才能という意味で文武魔術がお主に勝る者は学校にはおらんと言う事に成りおったわい」
「先生?それは無いでしょう?魔術に付いて何も分からないです。方陣を見たのだって昨日が初めてですし」
「じゃから才能と言う意味でじゃ。才能だけならお主は儂以上じゃからのう、どう伸びるか楽しみにさせて貰おうかのう」
「それは構いませんが、僕は僕のペースでしか覚えれません」
「ふむ、確かに道理じゃのう」
その後すぐに。
ウェザ先生は明日からの用意があると言って魔術科棟へと行ってしまった。
改めて剛義を待とうと掲示板の方に顔を向けると後ろから声を掛けられた。
「ジ、ジン君!」
そこにいたのは尚華だった。
「しょ、尚華ちゃん?・・・大丈夫なの」
「うん。大丈夫だよ?」
緊張でもしているからなのか、どことなくぎこちない。
無理もない。
2年振りで、しかもお世辞にも良いとは言えない形で尚華は引っ越していったのだから。
でも緊張はしているけども、怖がっている感じは全くしない。
「あのね・・・これ読んで!」
手紙を渡してきた。
――まさかラブレター!?
では無いだろう。
書いてある内容は予想がつく。
「それじゃ・・・またね?」
そう言うと小走りで行ってしまった。
向かう先には蒼麗が立っていた。
しかし・・・女の子ってのは何で疑問形で喋る事が多いんだろう?
すっごい謎だよ。
「良かったな」
「おぉっ!剛義、どっから沸いたんだ?」
「ずっと居たわ!!人を虫みたいに言うなっ!」
「あはははは、ゴメンゴメン」
剛義の言う通りホント良かった。
以前のようになるまでには、まだ時間はかかるだろうけど。
拒否はされていなかった。
全科目合格なんてのが吹き飛ぶ位に嬉しかった。
次の日。
新入生にとっては初受講の日だった。
ジンも受講しに本校舎にやって来ていた。
テストに合格しているので受講の必要はないのだけども。
ぶっちゃけ暇だったのと、どんな感じで行っているのかが気になったので一通り受講してみる事にした。
本校舎の廊下は人でごった返していた。
彼方此方で屯している人達もいて廊下を真直ぐ歩けなかった。
――凄いな
などと感想を思っていると。
「ほらそこ、全科目合格者様のお通りだぞ道を開けろよ」
そこには何やら人を小馬鹿にしたイヤらしくニヤニヤした3人組が立っていた。
合格者様と言うのはジンの事で間違いない。
道を開けろと言うのがジンの意図している意思で、それを代弁しているかの如く言っている。
何なんだこいつ等は?
誰なんだこいつ等は?
せっかく面が割れてなくて目立って無かったのに広める様な事をしやがって。
何様のつもりだ?
こういう奴はすっごい苦手だ。
出来れば関わりたくは無いな。
でも今回はそうもいかないらしい・・・
すっかり注目を集めてしまっている。
「なぁ君?僕は君の事を知らないんだけど、自分の通り道確保に人をダシにするのは止めてくれないかな?」
安っぽい売り言葉を買ってしまった。
更に安値で売ってみたけど、買うのかな?
「いやいやダシになんてしてないよ。俺達みたいなのは隅っこ十分だからな」
買ったよ・・・
トラブル起こして何が楽しいんだろう?
こういう理解に苦しむ輩の対処法って知らないんだよな。
どうしてくれれば良いんだろう?
次の台詞を言おうとした時だった。
「君達、誰かの気を引くんなら、そのやり方じゃ生まれたての子猫ですら無関心を通すぜ。もっと上手い言い方をしないとダメってもんだ」
助け船が来た。
何かついてるぞ。
その助け舟の方を見ると、長髪を首の辺りで1本に纏めていて眼鏡を掛けた知的な印象を受ける男がいた。
「はぁ?お前何言ってんだ?気を引く気なんかねーよ」
「ほぉ、ならただの言い掛かりって事だな。最低な奴等だな」
「なんだと!?」
「だ・か・ら!!最低な奴等だと!それともさっきの台詞には別な理由でも有ったのか?」
助け船は中々に辛辣だ。
こうも攻撃的にハッキリ言えるのは少し羨ましい。
「っち!もういい、行こう」
ちんけな台詞を残して最低3人組は教室の中に入っていった。
成り行きを見守っていたギャラリーも散っていった。
助け船はジンの方に近寄って行く。
「ジン・・・・で良いんだよな?妙な奴等に絡まれて災難だったな」
「あ・・・うん、そうだね。助け船を出してくれて、ありがとう。村にはああいうの居なかったらどうすりゃ良いのか困ってたんだ」
助け船はニコッと笑った。
人好きのする笑顔だ。
「なに、良いって事よ。おっと自己紹介がまだだったな、俺はウェンだよろしくな。君の事は爺さんから聞いてるぜ」
「僕はジン、よろしく。爺さん?・・・あぁもしかしてウェザ先生の孫?」
「その通りだ。爺さんが言うにはよ、俺とお前は気が合うかもしれねぇって言ってから、取り合えず取り入ってみたんだわ」
歯に衣着せぬってこう言うのなのかな?
直球ばっかりだよ。
駆け引きとか要らないから楽で良いんだけどさ。
「そうなの?気が合うかは、まだ分かんないけどさ僕は君の様なタイプの人は嫌いじゃないな」
「そうだな、最低でも6年は付き合いを持つんだからお互いジックリ行こうぜ」
「だな。所で授業はいいの?そろそろ始業時間じゃない?」
「大丈夫だ。俺も4科目は合格してるから、今日無理でも明日受ければ良いからな。それよりも、ジンは授業を受ける必要はないだろ?何で来たんだ?」
「必要はないけど。せっかく学校に入ったんだから1度位は見ておきたかったんだ」
「なるほどね、きっと退屈だぜ。おっと、そろそろ行くわ。んじゃ魔術科でなー」
「うん、魔術科でー」
気持ちのいい上に歯切れのいい奴だった。
剛義とは違う意味で裏表が無い感じだ。
ウェザ先生は難が有るみたいな言い方をしていたけど。
そんな感じは全然しないな。
会ったばかりだし全容を知ってる訳じゃないから決めつけるのは出来ないけど。
少なくとも悪い奴じゃない。
「あれー?ジン君なんでここに?」
言語Ⅰの教室に入り一番後ろの空いてる席に行くと蒼麗がいた。
「お姉ちゃんこそ何でここに?言語Ⅰは合格してるっていってたじゃない」
「うんー、合格はしてるんだけどね。ちょっと不安だからたまに受けてるの」
「そうなんだ、僕はせっかく学校に入ったんだし1回位は、と思ってね」
「そゆ事か、ジン君も物好きだね」
「そうかな?」
講師が来て授業が始まって固まった。
このやり方だったら僕には覚えられない。
そんな教え方だった。




