ウェザの素行
やっと面倒な設定の説明がほぼ終わって物語っぽくなりそうです。
剛義達が鍛冶木工協会から寄宿舎に戻ると、すでにジン達は帰って来ていた。
「剛義おかえりー」
「おぅ、ただいま。ジン達は早かったんだな」
「うん、場所が知りたかっただけだからね。でね、北東地区の広場でね、大道芸をやってたんだよ!今度は剛義達も見に行こうよ!」
「ほぅ大道芸か」
「うん!お祭りみたいに賑やかだったよ」
「あそこは人気の場所だから毎日芸人が替わるのよねー」
「ホントに?じゃあ今日とは違うのが見れるかも知れないんだ!やっぱり皆で見に行こうよ!」
「ジンが積極的なのって珍しいな。分かった!今度行こう」
「あたしもさんせーい、行こう行こう」
「そうね、皆でいこうね」
覇気のない蒼麗の返事に何かがピンと来たコノネは、ニヤリと悪戯心満載で蒼麗に耳打ちをした。
「ホントはさー2人っきりで行きたいんでしょー?ジン君と」
「そ、そそそんな事ないもん!」
「ホントにぃ?犬人の嗅覚をナメちゃダメよ?ちゃぁーんと蒼麗ちゃんからラヴ臭がしたんだから」
「何よそれ!私そんな臭いだしてないよ!」
「あれー?違うのー?なら、あたしがジン君を貰っちゃおうかなー?」
「だめ!!コノネちゃんでもジン君に手を出したら決闘を申し込むんだから!」
「ぷっ!それでもラヴ臭を出してないのかなー?」
「で出てないも・・・ゴニョゴニョ」
「で、ジン君のどこがいいのー?」
「ふぇ?・・・ジン君だけだもん私を女の子扱いしてくれたのは、それにいっつも優しいし・・・優しいだけじゃなくてね、ダメな事はダメってはっきり言うし」
「ふ~ん。なんか・・・蒼麗ちゃんっぽい感じがするねー」
「なにそれ?私っぽいって?」
「ははははイメージよイメージ。それよりもー・・・ふふふ・・・ふはははは!これで蒼麗ちゃんの弱味を握ったー!ばらされたくなければ、あたしには逆らわない事ねー」
「なっ!?・・・」
「なーんてね♪ビックリしたー?」
「ビックリも何も本気にしそうだったわよ!」
「あははははは。裏の顔が有るって何か面白いじゃない」
裏の顔って・・・
ハマり過ぎてわよ!
そっちが素顔だと思っちゃったよ。
まったく・・・コノネちゃんもレイさんと同じで掴み所が無いよね。
あっ!!
・・・
・・
・
ジン君ってレイさんの事が大好きよね?
同じ感じのコノネちゃんを好きになるなんて事はある?
・・要注意ね!
「お姉ちゃーん。僕たち裏に行って日課の稽古してくるねー」
「あっ!う~ん、わかったー」
どうやら私がコノネちゃんにイジメられてる間に決めたらしい。
そう言えば2人の稽古って随分見てないな。
前より上達してるのかな?
「コノネちゃん。私、2人の稽古を見てこようと思うんだけどコノネちゃんはどうする?」
「ん~・・・剛義君がねジン君は強いって言ってたんだよねー。あたしも見てみようかな」
「ジン君が強い?素の状態で?剛義君が?ホントに?」
「言ってたよー蒼麗ちゃんより強くなってジン君に追いつくって」
「剛義君が?・・・そうなんだ、私より強くねぇ。なれるのかしら?」
「あはははは。蒼麗ちゃんこわ~い。ところでさーウェザ先生はー?」
「何かね、今日は正門から入ると厄介が待ってるから他から入るって言ってたよ」
「厄介?・・・先生の厄介はメンドクサイって奴じゃないのかなー?」
「あーありえるね」
2人が稽古の場所と選んだ所まで来ると今から始める様子だった。
あれ?
何で上着を着てやってるんだろう?
動きが鈍くなるだけじゃないのかな?
たまに分からない事をするのは相変わらずなのね。
ほら、やっぱり動きが鈍いじゃない。
「ねえ?何で上着来てやってるの?」
「ほら、いきなり襲われた時に上着を脱ぐのを待ってくれる訳ないじゃない?だから着てやってみたの」
「なるほどねー。でもさ襲われる心配するより、ちゃんとやれ!って銀おじさまなら言いそうじゃない?」
「うっ・・・かもしんない、脱ごうか」
「・・・だな」
2人は上着を脱いで改めて稽古を始める。
「蒼麗ちゃん?今のも凄く早かったけど、あれじゃダメなの?」
「銀おじさまはね基本は基本でいつも通りやらないと怒るのよ」
「ふ~ん、そーなんだ」
身軽になった2人が型稽古を始める。
以前よりずっと早くなってる、型稽古とは言え凄い速度だった。
しかも2人は剣の鞘に収めたまま稽古を行っている。
普通なら打ち合えば砕け散ってしまうのだろうが、2人鞘は鋼造りなので破損したりはしない。
――って・・・あれ?
鋼造りって事は抜いた時より倍近い重さって事になる。
鞘から抜けば今より早い速度で出来ると言う事になる。
2人共、蒼麗が思っていたよりずっと上達していた。
「ほぇ~これすっごいねぇー。しかもジン君さっきとは別人みたいな顔付きになってるね。こりゃ蒼麗ちゃんが惚れるのも分かるなー」
「でしょう・・・ってそれもういいから!」
「あははは、やっぱり弱味なんだねー」
「うぐ・・・」
型稽古が終わり組打ち稽古に移行した。
ジン君は言っていた。
半年位前から剛義の剣筋が変わって来たと。
力が発動しない程度に集中しないと怪我をすると。
確かに力押し一辺倒だった以前の剛義とは違い力を込めていない見せ打ちをして油断を誘い本打ちをするなどのフェイントが所々で見られる様になっていた。
剛義の成長は目覚ましいものであった。
だけどもジンは更に上を行っていた。
成長目覚ましい剛義の剣は全くジンには届かなかった。
全て受け止められるか逸らされていた。
前に見た時の様に余裕を持って防御はしていなかったが、剣術素人の蒼麗が見てもジンに攻撃が届く気配は感じられなかった。
――もしかして、剛義君が防御をあんまりしないから裏をかけないとか?
攻撃ばかり上手くなってもジンには到底追いつけない。
ましてや弓を使う蒼麗に敵うはずがない。
そこで蒼麗は一計を投じた。
「ジン君、剛義君、攻守逆でやってみて」
「俺は構わんがジンがな・・・」
「お姉ちゃん、攻撃は苦手だよ?」
「ジン君!さっき襲われたらとか言ってたよね?攻撃しないで襲撃者を倒せるの?他に誰かいた時に1人で助けれるの?」
「それは・・・」
「答えが出ないなら苦手を克服する!!さぁやってみて、型稽古をやってるんだから最低限の攻撃方法は分かってるでしょ」
かなり渋々に攻守逆転の組打ち稽古をジンは始めた。
自分から攻撃をしないせいか初手に迷っている様だ。
「ジン君?私達がまた襲われて命の危機になったらあの力に頼るの?あれを使った後がどうなるかはジン君が一番知ってるよね?」
その一言でジンはようやく動いた。
型稽古の手順ではあるが、伊達に剛義と組打ちを行っていなかった。
緩急を付けたり、途中で止めて軌道を変えたり、色々と行って見せた。
だが、まだまだ鋭さが無い。
だからあまり防御をしてこなかった剛義に防がれてしまう。
「カッカッカ、中々のスパルタよのう。蒼麗」
「えっ?あ、先生か」
「あの追い詰め方は年季が入っておったのう」
「はははは、お姉ちゃん力発揮って事で」
「ところでのう・・・あの力とは何じゃ?」
「え?・・・ん~・・・それは先生が直接ジン君に聞いて下さい。私から言って良い事じゃないんです」
「ふむ・・・そうか、分かったのじゃ。しかし・・・あの2人、なんちゅう稽古をしとるんじゃ?最初から見ておったが伝え聞く八極流の稽古とはまるで別物じゃな」
「そうなんですか?」
「せんせーい、こんな早いの初めて見たんだけど、これって普通なのー?」
「いや・・・異常な速さじゃ、しかもあの鞘は鋼造りなのか?鞘から抜けばもっと早くなるはずじゃ。それとのう、これは【轟斬】独自の稽古法じゃろうな」
「やっぱ早いんだー、武術科の稽古を見ててもこんなに早くないもんなー」
「蒸し返すようじゃが、ジンは力について素直に話してくれるかのう?」
「どうかな?あまり人に知られたく無いって言ってたし」
「ふむ・・・それは野盗絡みの時の力なんかのう?」
「え?・・・何で知ってるんですか?」
「ん?野盗に聞いたのじゃ。異様な威圧感を感じたとな」
「あぁ、なるほど。・・・そうですね、お父さんやルドルおじさまも固まった位ですからね」
「四手熊を一人で仕留める者がか?それとルドル?・・・ルドル?棒術を使って野盗を仕留めた者か?」
「はい。ジン君のお父さんですよ」
「そうか・・・ルドル」
棒術・・・薬草師・・・ルドル・・・
心当たりが1人おるのう・・・
これは是が非でも一度北の村へ行かねばならぬのう。
「決着かのう」
攻守逆転の組打ちはジンの勝ちに終わった。
剛義も中々に防いでいたのだが、ジンの攻撃に隙を見出す事が出来ず防戦一方となってしまい根負けした形になった。
「ジン君、剛義君、毎日の稽古に攻守逆転を1回は必ずする事!分かった?」
「「は~い」」
「カッカッカ、凄まじいお姉ちゃんっぷりじゃのう。・・・む!!いかん!!」
そう言うとウェザは小さな立体方陣を形成して魔術を発動させた。
魔術を発動させると瞬時にその姿を消してしまった。
「儂はここに居ないって事にしといてくれ」
声だけが聞こえた。
どの属性の魔術科すら分からないが凄いと素直に思ってしまう。
ジンと剛義は魔術を初めて目の当たりにしたのだから尚更だった。
目を丸くして固まっている。
そこへ・・・
「なぁ君達、ウェザ先生を見なかったか?」
「え?ウェザ先生?見ませんでしたけど・・・何か有ったんですか?」
「何もないけどね、あの爺さんテストの採点をボイコットしやがったんだよ。お蔭でノルマが増えて困ってるんだ!」
「あぁー・・・ウェザ先生ならやりそーだねー」
「全く毎回毎回・・・ブツブツ」
ブツブツ言いながら去って行く先生が見えなくなると。
ウェザ先生が術を解き姿を現した。
「ふぅ・・・行ったか・・・やれやれじゃのう」
「せんせーい・・・さぼりは良くないとおもうよー?」
「ん?・・・デスクワークは嫌いなんじゃよ。給料減っても良いからやりたくないんじゃ!」
「先生・・・子供じゃないんだからさ」
「いいんじゃ!儂はこう言う時だけ子供になるんじゃ!」
魔術の腕前は二つ名が付く位に優秀だけど。
こんな人が先生で良いのだろうか?
皆が一様に思った。
後は魔術の方陣の説明くらいです。
でもそれは簡素に書こうと思ってます。




