ギルドと協会
ここは燕楼の中央広場の真ん中にある小さな公園。
広場に数多ある露店で買ったサンドイッチを昼食として食べている最中だ。
今日は、これから頻繁に利用する店舗の場所の下見と街の見学にやって来た。
1人でも良かったのだが、いつもの2人、剛義と蒼麗も一緒に来た。
後、初日に食堂で会った蒼麗の友達の犬人・コノネと魔術科講師のウェザ先生も付いてきた。
サンドイッチを食べながら街行く人を見ていて気が付いたのだけど。
俯き加減で肩を落として歩いてる人や物乞いの類がいない。
皆、何処かしらに目的が有って歩いてる感じがする。
その事をウェザ先生に聞いてみると、燕楼には貧民街が無いと言われた。
こんだけ大きな街なら貧民街が出来ていても不思議では無いのに、出来る予兆すらないみたいだ。
ウェザ先生が言うには。
燕楼には食うに困った人が時折やって来るが、日雇いの職は人手が足りていないので職にあぶれる事は無い。
住居も日雇い向けの狭い個室のアパートも沢山ある。
そのアパートが嫌なら定職を見つけて働くか付近の村で働くかすれば良い。
兎にも角にも働き口は沢山ある。
僕もこれからは自活をしなければならないが日雇い労働は年齢でアウトだから他の方法で稼がないといけない。
自活しなければならない理由は両親の方針だ。
「どうしてもって時は援助するが、お前も見習いとは言え薬草師の端くれだ自力で稼いで自活してみろ。薬草の選別の仕方は教えてあるしやって出来ないはずがない」
との事だ。
12歳の身空で世の中に出ると思って無かった・・・
薬草の選別は出来るし、収納の魔蓄結晶も貰ったから引き取り価格によっては自活は出来るんだろうけど・・・ちーと自活には早いと思うんだよな。
いざとなったら助け舟を出してくれるって言ってたからやってはみるけど・・・不安だ。
「こいつは美味いサンドイッチじゃのう。ふむ、これからチョコチョコ誰かを買いに来させようかのう」
「あっ!先生!あたし買いに来てもいいよ、先生のおごりであたしの分も買っても良いならだけどね?」
「それなら俺も買いに来てもいい」
「私もー」
コノネのちゃっかりして提案に剛義と蒼麗も乗っかる。
さすがの先生も苦笑いである。
「お主等かなり都合の良い提案をしてくれるわい、考えるだけは考えておこうかの。して、ジン。採集した薬草の買い取り場所を知りたいんじゃったな?」
「はい。主に薬草の引き取りで大丈夫ですけど。他の物も見つけるかも知れないので何処に持ってけば良いのか知りたいんです」
「ふむ、なら各ギルドや協会に持ち込むのが1番じゃな」
「各ギルドや協会にですか・・・どっかで纏めて引き取ってくれたりする所はないんですか?」
「ん?仲介屋なら色々な物を引き取ってくれるが・・・ぼられるぞい。仲介料と称して3割近く安くなるはずじゃ」
「3割も!?それは流石に・・・」
「ならば手間を惜しまずギルドと協会に直接行く事じゃな」
「せんせーい!私前から気になってたんだけど、ギルドと協会って何が違うの?同じ感じがするんだけど?」
「全然違うものじゃぞ?」
ウェザ先生曰く。
ギルドってものは営利目的の専門団体で仕事の依頼費用はギルドで決めている。
営利目的団体なので費用は少々高めに設定されている。
協会は営利目的ではなく仕事の仲介が主な仕事で、基本的に登録者の登録料や自治体の援助で成り立っている。
協会は基本的に依頼に応じて適性が有りそうな人を紹介するのが仕事だから依頼料については関与しない。
依頼料は紹介された人と依頼者の間で決められる。
「えっと・・・つまり、ギルドは大きな商店で、協会は専門の仲介屋って事ですか?」
「そんなとこじゃのう」
「ん~・・・それなら仲介屋って要らなくな~い?」
「仲介屋が仲介するのは人材じゃ。ギルドや協会の仲介するのは仕事じゃ。全くの別物を仲介しとるんじゃ」
「えぇ~・・・ん~・・・」
どこか釈然としないのか悩んでしまってる蒼麗とコノネ。
つまりはこう言う事なんだろう。
仲介屋が仲介しているのは働く人。
ギルドや協会が仲介しているのは仕事、つまりは働く場所。
そんな感じで2人に説明してみた。
「ん~と、そんじゃぁさ、父さんに『四手熊』の毛皮の調達依頼とか皮革裁縫協会から来ていたのは協会からの仲介って事?」
「うん。夜徳さんは『四手熊』を1人で狩れるけど、お姉ちゃんは1人で狩れる?」
「無理!まだ1人じゃ無理!」
「ならさ、何人なら狩れる?夜徳さんは抜きでね」
「4人・・・位かな?」
「お姉ちゃん抜かすと3人、頼める当てはある?」
「ジン君でしょ剛義君でしょコノネちゃんは狩りとかは向いてないから・・・1人足りないかな」
「うん、残り1人を見付けるのに仲介屋に頼むって事をするんだ」
「あっ!なるほどー!私が『四手熊』の狩りって言う働く場所を用意して、人が足りないから仲介屋で働く人を探して貰う訳だ。うん!仲介屋は必要だね」
――わかってもらえたのは良いけど・・・僕は『四手熊』の狩りなんて行きたくないけど
「蒼麗とコノネが理解したのなら、儂はジンを案内して来るが、お主等はどうするんじゃ?」
「あたし鍛冶木工協会に硬銀を買いに行きまーす」
「鍛冶木工協会か、俺も付いて行っても良いか?」
「うん!いいよー。あのさ・・・蒼麗ちゃんを赤くする方法を教えてよ」
「よし!分かった!と言いたい所だが、俺にはやり方が分からんからジンに聞いてくれ」
――うぇ?僕に振るなよ。
任せたぞ、って顔をしている剛義。
キラキラした瞳で見て来るコノネ。
そして・・・
微笑んで僕を見ている蒼麗だけど・・・その微笑に威圧感を感じるのは気のせい・・・じゃないな。
蒼麗に向かって首を横に振ってみた。
すると威圧感が瞬時に消えた、そしてコノネの方に顔を向けると。
「コノネちゃん?まだ諦めてなかったのね。・・・お仕置きが必要かしら?」
「げ!剛義君!早いとこ行こうか!」
「お、おう。で、どっちだ?」
「こっちこっち」
南東地区の方に足早に消えていく2人。
蒼麗のお仕置き・・・男には拳骨だけど女の子にはどんなふうにやるんだろ?
何にしてもお仕置きは恐怖みたいだな。
それにしても・・・
さっきのが殺気ってのなのか?
かなり怖かったです。
「蒼麗はどうすんじゃ?」
「私はジン君と一緒に行きますよ」
「そうか、それでは薬草師ギルドから行くかのう」
そう言うと北東地区に向かって歩き出した。
薬草師ギルドは北東地区の中心辺りに在り自由都市にしては規模が大きいそうだ。
北東地区には他にも、海運ギルド、傭兵ギルドがある。
ついでに。
北西地区には皮革裁縫協会、魔蓄結晶ギルドがある。
南東地区には鍛冶木工協会がある。
南西地区には魔術師協会、治療術師ギルドがある。
因みに冒険者ギルドって物は無い。
獣や魔獣の素材を集めるのは猟師の仕事だし。
薬草などを集めるのは薬草師の仕事だし。
護衛任務は傭兵の仕事だし。
素材などを纏めて買い取るのは仲介屋が行っている。
ならば仲介屋が冒険者ギルドを立ち上げれば良いのでは?と思ったりもするが。
仲介屋の本文は人材紹介業、職安みたいな物だし他の専門の協会なりギルドがある中で何でも屋要素の大きい冒険者ギルドの立ち上げは無理だろう。
他所の所に行くと、探索ギルドなる物があるけど、それは付近に『落ちた都市』や『天地の塔』や『海中都市』や『廃都』などがある、討伐しても一向に減らない魔獣や死霊がいるために全容の解明もまだされていない。
上記の場所は危険地帯のため、その付近に住居を構えようとする市民は居ない。
だから、町が出来上がっても一攫千金を狙うトレジャーハンターや、それ等を買い取る商人位しか住んでいない。
なので専門ギルドがそこに出来る訳もないので探索ギルドが買い取りや人員紹介などを行っている。
探索ギルドは異例中の異例って言ってもいいだろう。
3人で薬草師ギルドに向かう中。
僕から蒼麗に苦言を1つ。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なぁに?」
「お姉ちゃんが嫌がりそうな事はしないからさ、笑顔で威圧するのは止めない?美人が笑顔で威圧すると怖さ倍増してる気がするんだよね」
「えっ?・・・あっ、うん。そんなに怖かった?」
「ホントに怒った時よりは怖くないけど、見た時にビクッてしたよ」
「あー・・・あはははは、ゴメンね。しないように頑張ってみるね。あっ!でも剛義君は別ね、あの子は1言多い時あるから!」
「うん、そう言う所あるね、剛義は」
「でしょう!安く買ってあげようかと思っちゃうよ?」
「お姉ちゃん・・・それ剛義いイジメになっちゃうから」
「いいの!剛義君だから!」
「なんか・・・剛義が可哀そうだな~」
「あははははは」
などなど剛義をダシに他愛もない会話になっていった。
ジン君はなんでサラッと美人とか可愛いとか言っちゃうのかな?
レイさんとルドルおじ様の教えって言ったってそこまで素直に実行しなくても・・・ねぇ。
言われる方は少し困っちゃうんだよね。
・・・ジン君って背が伸びてきて段々格好良くなって来てるのよね。
私も一応女の子だしドキッとしちゃうんだよ?
ほら、まだ心臓がドキドキしてるもん。
私の心臓、この先もつのかなー?




