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初めての燕楼


 明日、1月20日は新年度の始まりだ。

 この天変地異後の【新世界】では農業と商業と工業どれに重きを置いているかで新年度が違う。

 天元てんげん南部の燕楼えんろう辺りでは農業に重きを置いているので農業の忙しくなる前の時期が新年度となっている。

 旧世界の日本の様に4月だと耕作が始まる時期、欧米の様に9月だと収穫の時期に入る、収穫後は作物の売買や年末年始の祝い事などで忙しい。

 なので1月に新年度が始まるのだ。

 

 今日は1月19日

 時刻は夕方の5時。

 辺りはすっかり暗くなっている。

 僕は学校の寄宿舎で割り当てられた部屋でボーっとしていた。

 村を早朝6時に出発して燕楼に到着したのは午後3時だった。

 途中1時間の昼食兼休憩をとったが徒歩で9時間掛かった。

 そんなに歩いたのは初めてなので、かなり疲れた。

 だが、燕楼の城壁が見えて来て近づくにつれて疲れより驚きが勝って来て疲れてるのをすっかり忘れてしまった。

 圧倒されたのだ。

 規模としては中程度の城街だと聞いていたのだが、高さ15m程の城壁東西に2km南北に1.5kmある城壁を間近に見た時、ポカンと口を開けて右を見て左を見て正面を見て・・・何度繰り返しただろう?

 凄い!の一言だった。

 旧世界の高層ビル群などの圧倒される感じとはまるで違うのだ。

 高層ビル群は高さにによる圧迫感が主だ、高過ぎると理解の範疇を超えてしまい距離感が掴めなくなり現実味が無い。

 それに対して距離感の掴める高さの壁が左右に長々と有ると存在感は高層ビルの比ではなかった。

 僕等を送りに来るついでに薬品を売りに来た父さんに声を掛けられるまで見入ってしまっていた。

 他の同行者は剛義と蒼麗。

 剛義は僕と同様に城壁に目を奪われていた。

 蒼麗は、そんな僕等を見てクスクス笑っていた。


「私も初めて見た時は二人みたいになってたよ。凄いよね、こんなの村に居たら絶対に見れないもんね」


「お前達、この程度で驚いてるのか?確かに燕楼は南部の自由都市でも指折りの規模の城壁を持ってるが、北部にある国の首都の城壁はこんなもんじゃないぞ」


 父さんが言うには、高さも厚みも長さも倍近く大きくなった上、水堀が設置されていたり、直接市街を守る城壁の更に外側に防御壁が設置してある都市なんかも有るそうだ。

 

「世の中って広いんだな・・・」


「あぁ・・・広いな」


「そうだな、卒業したら世界を見て回って見分を拡げるのもいいんじゃないか?俺は反対はしないし銀も反対はしないと思うぞ」


「ん?おじさま?私は?」


「蒼麗ちゃんか・・・う~ん・・・夜徳は分からない所が有るんだよな、好きにさせるとは言ってるが、その好きにってのが自分の手の届く範囲内でと言ってる気がするんだ」


「・・・・」


 何か心当たりが有るみたいだ。

 確かに女性の旅人ってあんまり居ないよな。

 街道を行く旅でも野盗だ山賊だが普通に闊歩かっぽしてる世の中だし、男でも女でも危険を承知した上に武術の腕に相当自信がなければ一人旅は出来ないだろうから。

 金に物を言わせて駅馬車で移動するのも有りだろうけど、結構値段が高いそうなのだ。

 天元南部には国家が少なく大半が自由都市だ、各都市の所属範囲外は無法地帯になっていて先に述べた通り野盗・山賊が出没する、その対策として駅馬車には護衛が付く、乗車賃に護衛代も含まれるから北部に比べると3~4割高いそうなのだ。

 なら国家を作ってしまえば良いじゃないか。

 と、思うのだけど・・・南部はルナード(風竜王)さんの行動範囲内なので作ろうとする者が今まで居ないそうなのだ。

 

 城門には衛兵が立番が居たが基本的には出入りは自由だ。

 燕楼は農業重視とはいえ収益の大半を交易で成してるので、物流を良くしてより多くの収益を上げる目的なのだ。

 出入り自由の城門をくぐり市街に入るって見ると、あまり人は居なかった。

 午後3時と言う時間のせいもあり、この時間に城門をくぐるのは来訪者が多く市街から出る人が少ないので人が居ないのだという。

 早朝から昼にかけてはごった返していて賑やかだ。

 ちなみに開門は午前6時、閉門は午後6時、1日12時間開いている。

 城門付近は疎らだった通行人も街の中心に向かうに連れどんどん増えていき中心近くまで行くと、かなりの人数で混雑していた。

 夕食の食材を買い求める人、今日の仕事を終えた人などが行き交う時間だから1日の中でも1番人通りの多い時間なのだ。

 僕は人込みは見慣れた光景なので驚きは無かったが、剛義は流石に驚いていた。

 村の人口の数倍の人が目の前を行き交うのだから驚くのも当たり前だよな。

 中心を通り過ぎ市街南西区画まで来るとまた閑散としてきた。

 南西区画は行政の建物や富裕層が多く住む区画だからだ。


(そうそう忘れてた。燕楼は東西南北に幅15m程の大通りが市街中心を起点に通っていて北東・北西・南東・南西と区画分けされている。)


 学校も南西区画にある。

 父さんは学校まで僕等を送り届けると薬草師ギルドに向かった。

 そして僕と剛義は入校と寄宿舎利用の手続きを行って現在に至る。

 そう、部屋でボーっとしているのだ。

 6時から夕御飯の時間と聞いているので荷解きをして衣類なんかを片付けてしまわないとな。

 同部屋で一緒に呆けていた剛義にも声を掛けてサッサと片付けて食堂に向かった。

 食堂の入り口で蒼麗が待っていてくれた。

 

「おそいよー、結構待ったわよ」


「ごめん、ボーっとしちゃってた」


「あー・・うん、色々初めてだったしね仕方ないか、んじゃ行こう」


 蒼麗に導かれて食堂に入る。

 食堂は6人掛けのテーブルが・・・1,2,3・・・と、1,2,3・・・42有って252席あった。

 

「二人ともこっちよ、ここで木札を取って、あっちで御飯と交換するの」


 何とビックリ、メニューを選べるそうだ。

 具材は同じなのだけど調理法が違うとの事だ、今日は青魚の素揚げか煮物のどちらかだ。

 僕と蒼麗は煮物を、剛義は素揚げを選んで交換してもらって空いてる席に着いた。


 では早速。


「「「いただきまーす」」」


 これは!

 凄く美味しい!

 醤油での味付けの染み具合は少し濃いかな?と思う位だが、パンや白米と食べると丁度良くなる。

 脂の乗り具合も少し落ち過ぎな感じがしたのだが、脂が乗り過ぎていると身から歯応えが無くなってしまうので、それを防ぐためにえて落としてあるようだ。

 僕は歯応えの有る方が好きなので、これは最高の仕上がりだ!


「ねぇ、どう?美味しい?」


「美味い!すげー美味い!」


「うん!これは美味しい!」


「でしょー私も凄く好きなの」


「何で油で揚げただけの物なのに、こんなに美味いんだ?」


「前に聞いたんだけどね、魚の中の水の量が大事なんだって」


「水の量だけでこんなに美味くなるのか?・・・すげーな」


「ここの御飯を作ってるのは猫人ねこひとさん達なんだけどね、猫人さん達は好きな事はとことん追求するんだって。だからその素揚げもね『まだまだ通過点ニャもっと美味くなるはずニャ』って言ってたニャ・・・ってあれ?・・・ニャってのは移っちゃうのニャー・・・あぅ」


「あははは、移っちゃうんだ。でも、ニャって言ってるお姉ちゃんは可愛いと思うよ。なぁ剛義」


「そうだな、イメージになかったから意外だったけど結構似合ってるかも知れないな」


「!!!!!!!!」


 珍しく剛義も同意した。

 言われた蒼麗は、少し顔を赤くして俯いていた。

 やばい!地雷だったか?爆発寸前?

 おたおたと焦り始めた僕に一言。


「ジン君」


「はいっ!」


 すっごい緊張。


「可愛いとか・・・言っちゃダメ、恥ずかしくなっちゃうでしょ?」


「えっ!?」


 思いっきり想定外な事を言われたので戸惑ってしまった。

 蒼麗の口から『恥ずかしい』なんて台詞が出て来るとは夢にも見た事がなかった。

 そうか、恥ずかしくて赤くなってたのか・・・


「お姉ちゃん、ごめん。母さんに『女の子は誉められると嬉しいのよ~』って教えて貰って、父さんには『相手を貶めたり馬鹿にする様な事じゃなければ言って良いと思うぞ』って教えて貰ったから、つい・・・」


「あーっ!蒼麗ちゃんが赤くなってる!初めて見たー。ね、ね、どうやったの?」


 蒼麗の友達かな?

 懐っこい感じの犬人いぬひとさんだ、蒼麗を赤くする方法を執拗に聞いて来るけど、教えたら今度こそ間違いなく雷が落ちるよな・・・しかも特大の。

 方法をはぐらかしていると、何か閃いたようだ。


「そうだ!皆にも蒼麗ちゃんが赤くなってるって教えてこよう!」


「え!?ちょっと待ちなさい!!」


 二人共凄い勢いで走って行った。

 追い掛ける蒼麗はいつもの蒼麗に戻っていた。

 呆気に取られて見送った僕等は。

 『恥ずかしい』の一言を聞いてからずっと固まっていた剛義に。


「へ、部屋に戻ろうか」


「・・・だな」


 蒼麗の分の食器も返却場に持って行きジェスチャーで蒼麗に挨拶すると食堂を後にした。

 部屋に戻ると。

 腹も膨れたせいか眠気がドッと押し寄せて来た。

 入学初日から遅刻も不味いから、かなり早い時間だけど寝る事にした。

 

おかしいです。

書こうと思っていた分の半分で結構な長さになってしまいました。

文章って難しいです

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