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両親の告白

 剛義と蒼麗は結局昼近くまで家に居た。

 蒼麗から学校の話を聞いたり、街の話を聞いたり。

 剛義が無茶な計画を考えて蒼麗に怒られたりしたり。

 楽しい時間だった。

 ここに尚華が居たらいつも通りだったのにな・・・

 いつかまた四人で話せる日が来て欲しいな。


 二人を玄関で見送った後で部屋で午後から何をしようか考えてると、昼ご飯の時間になった。

 今日は、お父さんも一緒にお昼ご飯だ。

 お父さんは、今日も天気があやふやなので作業部屋で薬の調合や精製をしていた。

 3日前の件でシビレ薬を半分程使ってしまったので補充をすると言っていた。

 シビレ薬は、そのまんまだと毒薬系の粉末の薬だが水に溶かして濃度を調節すると、痛み止めや麻酔になるらしい。

 他にも薄めて使わないと毒系の薬って多いと言っていた、毒にも薬にもなるって言葉はホントなんだな。

 

 需要の多い薬剤は両手で足りる程しかない。

 物によっては同じ材料を使うのだが分量はもちろん混合する際の状態も違う。

 乾燥させてから混ぜる物、水分の有るうちから混ぜる物、磨り潰し搾って水分だけ使う物、搾ったカスを使う物、と多岐に渡る。

 そういった物を間違える事無く調合・精製できるお父さんが凄いと思う。


『仕事だから当たり前だ』


 って言ってるけど、当たり前に出来るなら誰にでも出来る事だと思う、誰にでも出来るなら薬草師なんて職業はなかったはずだもの。

 それが職として確立してるのだから当たり前なんかじゃないと思う。

 そんなふうに凄いって思っている子供な訳だから例にもれず真似をしてみたくなるのです。

 えぇ、もちろんしましたとも!それこそ何度も、そして怒られましたよ。お父さんの道具を使って真似してましたら。材料もその辺の草じゃなく本物の薬草使いましたとも!あんなに怖いお父さんは後にも先にもあれが初めてでしたね。

 でもね、怒られても真似したかったんです。

 お父さんみたくなりたいって心底思ってたんです。

 遊ぶ約束が無い時は毎日その辺りの雑草取って来て天日干ししたり、石で磨り潰したりしてたんです。

 飽きもせず毎日毎日何時間もやっていたら、見るに見かねたお父さんが道具のお古をくれたんです。

 そして、時間に余裕ある時に教えてやるからって。

 凄く凄く嬉しかった、憧れの人に教えてもらえるんだから、これ以上の事はない。

 でも。


『順序と段階があるから、それは守って教えるからな』


 って事でした、だからまだ薬草の見分け方と磨り潰ししかやってない。

 それだけだけど、少しづつお父さんに近づいてると思うと毎日が楽しい。

 いつか必ず同じ様になるのが僕の目標だ。

 そんな目標のお父さんが昼食後に話があると言って来た。

 何だろう?


「ジン、話っていうのはだな」


 昼食が終わって早速始まった。


「あのね~ジン。実はねジンはねお母さんの・・・」


 まさか!?

 弟なのとか言わないよな?

 あの妄想が現実にならないよな? 

 返事と表情に困るから止めてよ?


「お母さんの産んだ子じゃないの~」


 良かったー・・・養子の件でした。

 すっごいホッとした。


「あら~?驚かないのね~?ドキドキしたような表情してたのに何か残念。・・・何にドキドキしていたの~?」


「え?・・・お母さんの弟なの、とか言われたらどうしようかなって・・・」


「あら!そっちのが面白かったかもね~」


 思いついていたら言っていたって事か。


「レイ。話が逸れてるぞ。ジン、水竜王の言葉から察しがついていたんだろ?」


「うん・・・それに、あいつも乳飲み子からやり直せっていってたし」


「・・・そのあいつってのは誰なんだ?言えない人なのか?」


「口止めはされてないから平気。あいつってのは天変地異を起こした張本人だよ」


 そう、何一つ口止めはされてない。

 『とう』の事も、僕の事も、力の事も、秘密の三属性についても、何一つ。

 言っても問題無いからなのか、ただ単に適当な奴だからなのか、その辺りが皆目見当もつかないんだけど。


「それは・・・神って事か?」


「あいつは神って呼ばれると怒るから、止めてあげて。ずーっと昔に『統べる者』って呼ばれた事があったって言ってたから、そっち呼んであげて」


「『統べる者』か・・・意味合いは同じだな」


 何かを考えているが直ぐに僕の方に向き直った。


「話と言うのはな実子じゃないって事以外に、お前を引き取った時の事を話さねばならないからだ」


「?」


「お前は他所の家庭から引き取った訳じゃないんだ・・・」


 話はこうだった。

 ある時、お父さんがとある屋敷に寺に所属する薬草師として投薬に出向いた先で見かけたお母さんに一目惚れした。

 だけど、寺の薬草師と良家の娘じゃ望みも何も有ったもんじゃないので諦めていた。

 諦めて何日かして突然お母さんがやって来てプロポーズしてきた。

 お母さんの実家がお父さんとの結婚を認める訳がないのを、お母さんは知っていたので、駆け落ちをする事にした。

 追手が掛かるまで時間が有ったけど捜索の手掛かりを消すために夜明け前に森の中に逃げ込んで、そこで撒こうとした。

 そしたら、森で霧に囲まれ迷ってしまった。

 右往左往しながら途方に暮れていた時に霧の中から二人の男女の子供がやって来た。

 ちょうど僕位の年齢だったらしい。

 その子等に。

『残念だけど君達に子供は出来ないよ。どっちに身体的に難が有るかは言わないけど。・・・出来ないよ。』

 当然両親は信じなかった。

『信じなくても良いいよ、その上で君達に頼みがある。この子の両親になってくれないだろうか?見返りは君達を遥か遠方に運ぼう』

 二人は迷った、怪しい二人の子供の言う事なんて一蹴しても良いのだけど、その怪しさが逆に真実を言ってるような気がしてならなかった。

『二つ告げなければならない事がある。一つ、この子は特別な子だ遺棄する様な事はしないで欲しい。遺棄をしたならば君等には死を与えに行くからな。一つ、・・・この森っておかしくないかい?いきなり樹木の密集している所から森が始まってる、都市に近いからまばらな所は伐採したって思うかも知れないけどね、理由は他に有るんだよ。それはね、この森は犯罪者何かを逃げ込ませる為に残された森なんだ。追手が来ているかどうかまでは分からないけど君等は来ちゃいけない所に入り込んだんだ』

 二人は更に迷った。

 その子等の言ってる通り都市の周りに森と言ったらここしかない、居なくなったと分かれば真っ先に捜索されそうな場所だってのは頷ける。

 迷った末に二人は決断した。

 その子等の申し出を受ける事にした、・・・道が無かったのだ。

 断れば森を彷徨った挙句に高確率で連れ戻されるからだ。

『受けてくれるか、ありがとう。僕等も肩の荷が下りるってものだ。それでは君等を遠方まで送ろう』

 半信半疑だった、自分達に子供が出来ないって事、遠方まで行ける事、どちらもにわかには信じれなかった。

『そうそう、本当に遺棄しないでくれよ?君等で五組目なんだよ。命を奪うのは容易たやすいけど嘘を吐かれるのは嫌でね・・・。それじゃそっちの方向に真直ぐ進むんだ、そうすれば中央南部の沿岸に出る様に繋いだから』

 そっちとは来た方だった、でも二人は赤ん坊を受け取り言われた通りに歩み始めた。

 霧が晴れて来ると周りの樹木が様変わりしていた。

 歩みを進め森を出ると風に乗って何かの匂いがした、二人は海を見た事が無かったのでそれが潮の匂いなのが分からなかった。

 すっかり夜は明けていた、そこが何処なのか知るために近くの丘の頂上まで行くと直ぐ近くに村があった。

 それがこの村だった。


 と、こんなだったそうだ。


「だから、俺達はお前の両親が健在なのか全く分からない。探すにしても手掛かりも分からない。そうゆう事なんだ」


「僕の産みの親は天変地異の時に死んでるよ、確認した訳じゃないけど・・・生き残っていてもとっくに死んでる。それにね、産みの親の事は思い出せないんだ。・・・思い出したくないのかもしれない。だからね、僕の両親は薬草師のルドルと、その妻レイだけなんだよ?・・・これからもお父さんお母さんって呼んでもいいんだよね?」


 理由は分からないけど、いつも微笑みを絶やさないお母さんは終始苦虫を噛んでいる様な表情をしていた。

 そのお母さんがいつもの微笑みに戻って。


「もちろんよ~ジンは私達の子供よ~」


「その通りだ、お前は俺達の息子だ。しかし・・・300年前に死んでるのか」


「それはビックリよね~年上の息子なんて~」


「お母さん?僕、引き取った時は赤ん坊だったよね?前の記憶は少し戻ったけど、今は10歳だから年上じゃないよ?」


「そうね~赤ん坊だったわね~年上の息子ってのも面白そうなんだけどね~」


 今度は僕が苦虫を噛み締めてる様な顔になってるはず。

 ホントに掴み所が無いと言うか・・・分からない人だ。


 話はそこまでだった。

 考える所は正直あんまり無い。

 両親の身の上話は僕が関与する所じゃないし、僕の事も両親をお父さんお母さんと呼んで良いならそれで良いから。

 一つあるとすれば、両親の出会った二人の子供って何だったのかな?位である。

 

 午後からは、お父さんの仕事の手伝いをして一日を終えた。


 次の日

 蒼麗が学校付属の寄宿舎に戻って行った、尚華と尚華の母親と共に。

 尚華は一向に良くなる気配が無く、一時的に市街にある母方の実家のに預けてみる事になった。

 事件の有った場所から離れれば違うのではないか?

 と、聞かされたが、僕が近くに居ると治りが遅いんじゃないか?って判断したんじゃないかと思う。

 恐怖の対象が50m程離れた近所に居るんだから妥当な判断だと思う。

 良くなってくれると良いな・・・


 事件から2年の月日が流れた。

 尚華は良くはなったけども今年から学校に入学と言う事で村には戻って来なかった。

 祖父母の家から通うらしい。

 僕と剛義も今年から学校に入学だ。入学に伴い寄宿舎生活が始まる。

 学校は一つしかないから尚華と再会するだろうけど・・・

 僕から話しかけるのはしないでおこう。

 また元に戻ってしまう様な可能性は避けないとだめだから。

 懸念はそれ位で、後は期待感が大きい。

 僕はまだ街に行った事が無い、見る物全てが未知の世界なんだから。

 


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