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三話 一席 〜イッセキ〜 「演説などの一回の話」

どうもこんにちは、凩です。

今回も締切ギリギリ……。ホント危ないです。

前回はあんまり人物が変わらなかったので、今回は放出してみました。

(??)

ふわぁぁぁ~っふ。

目元を擦りながら睡魔と戦う。夜なんかより、よっぽど朝の方が睡魔は手強い。それでもどうにかねじ伏せると、ベッドから四つん這いで這い出る。


「お姉ちゃん? まだ寝てるの〜?」


妹の声と、扉を開ける音。そして……小さな悲鳴と扉をバタンと閉められた。長めの髪が顔にかかり、床で這いつくばってモゾモゾしている私。うん、確かに気味が悪い。


「あれ、小夏(こなつ)は? 」

「……貞子だった」

「は?」


下から聞こえた声は無視する。髪に櫛をいれ、着替えながら、ふと後輩君たちを思う。昨日は一年生だけだったろうけど、大丈夫だったかな?


「大丈夫に決まってるっしょ」


鏡の中の自分に自分で唄うように答える。私の後輩だもん、大体壁新聞部はそんな軽く出来ないしね。


(千歳ら)

1-Dという標識を少し目の端に入れつつ、教室の扉に手を掛けます。まだどなたもいらっしゃいません。8時25分までに登校すればいいのですから、まだ8時にもなっていない教室に誰もいないのはごく普通のことです。


では私は何故こんなに早くいるのかというと、それは壁新聞部の活動のためです。今日は火曜日なので、壁新聞の貼り替えは昨日の朝に済まされています。私の目的は……


(??)

私から見て真正面にある扉が開く。こんな朝早くに誰だろう。朝練でもないのにこの時間にいるなんて、あまりいない。


いや、あまりいないどころか変人だよな、と思いつつ、私は少し笑みを浮かべる。だって仕事でもないのに朝早くに図書館にいるのはお互い様だから。


「あ、おはようございます、満崎(みつざき

)さん」

「ん。おはよう、沙穂」


なるほど、沙穂か。うん、変人という意味で私の予想はあっていたらしい。


「こんな朝早くに珍しいね。朝は別に壁新聞部貸し切りじゃないんだけどな……」

「他の方がいらっしゃるんですか?」

「知らなかったの? 壁新聞部の数人の先輩やあと、あの変な子」


壁新聞部の人はよく来る。資料集めとかがあるからだと思う。本当のことは知らないけど、多分そう。


変な子というのは同学年、つまり一年生の男子で、何か、とにかく変。同学年というか、同級生なんだよね。飄々としてるけど、どこまで本気なのかさっぱり分からない。


「今日もいらっしゃいますか?」

「んー、どうだったかな。今日は来てないと思うけど。それで、今日はどうしたの?」

「いえ、その……」


沙穂とは家ぐるみでの付き合いがあるから、私達も小さい頃からの付き合いだ。だから、なんとなくは沙穂のことぐらいわかる。どうやら、何かあったらしい。


「家の事?」


ピクリと沙穂の肩が動く。図星か。沙穂には聞こえないように私は小さく溜息をつく。


「何かあったの?」

「昨日ですね、藤宮さんに聞かれまして、それで少し……」


藤宮……あの薄気味悪い変人男子。さっきの「変な子」のこと。余計なことをしてくれたみたい。


というか、今ので説明終わり?! 沙穂の悪い癖として、頭の中ではちゃんと考えてるのに、言葉に出すと過程を飛ばすことが多々ある。大方何か家の事で質問されたとかそんなことだと思うけど。


「私はさ、沙穂は間違っていないと思う。けど、お父さんの言ってることも分かるよ。この街は古いし、沙穂の家は事情もあるし」

「はい……」

「だけど私は沙穂の味方するから」


沙穂は驚いた顔をして、それから勢いよく頭を下げた。直角をこえてるんじゃないか……? 「ありがとうございました」と言いながら図書室を出ていく沙穂の後ろ姿を見つめ、私はまた小さく溜息をついた。


(千歳)

「だけど私は沙穂の味方するから」


満崎さんはそう言って少し微笑みます。私の気持ちはそれだけでとても軽くなったように感じられました。


満崎さんは知織(しらおき)神社の神主である満崎家の四人兄弟姉妹の長女です。満崎(みつざき) 薫子(かおるこ)といい、私の親友ともいえる方です。


知織神社の神主家と、そこに奉納してきた地域の農家のまとめ役である千歳家は必然的に密接な関係があります。私と満崎さんが初めてあったのも家同士の席においてです。


満崎さんはとてもしっかりした方で、私はよく助けてもらっています。満崎さんは図書委員で、仕事がない日も図書館に入り浸りだと前に本人から伺っていました。今日いるかどうかはっきりとした自信はなかったのですが、相談して良かったです。


感謝の気持ちを込めて深くお辞儀します。よし、今日もこれでがんばれます!


(??)

あと10分。それで今日の授業が終わる。

あーーー、早く終ってくれ〜! そんな念を先生に送るけど、先生は気付かない。きっちり時間通りに終わった。さすが田野。俺は開放感を噛み締め、隣の席の友達に話しかける。


「田野、今日も怖かったな」

「な、授業中あてられないかビクビクしてたわ」

「ビクビクしてたって割にはお前、首揺れてたぞ?」

「あ、バレてた? 田野気づいてたかなぁ」

「気づいてただろ。バレバレだったし、相手はあの田野だぜ」


話しながらリュックに荷物を詰め込む。俺のリュックは教科書とか文房具を入れるのを第一としていない。そう言ったらそんなリュック学校に持って来るな、と言われそうだけど、本当なんだから仕方ない。


担任の話をジリジリしながら聞き、日直の報告をイライラしながら耐え、やっとその時がきた。


「起立、気をつけ、礼」

『さようなら』


その瞬間、俺は教室を飛び出した。向かう先は体育館とグラウンドに挟まれている部室棟。50メートル走6秒台の脚を活かしてたどり着くとその一室に向かう。プレートに書かれた部活名は、バドミントン部。


予め昼休みに職員室から取っておいた鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。


「大分汚くなってきたな」


最後に掃除したのは2ヶ月前だったっけ。特に汚く使う奴はいないけど、いつの間にか汚れてるのだ。俺は手早くウェアに着替えて、リュックを背負う。


このリュックが第一としているのは、バドミントン。ほら、よくテニスなんかでも使われているラケットを入れる用のをリュックがあるだろ? あれだ。何本かのラケットと、水筒やタオルなんかが入っている。


靴も履き替えると、何度か床を底で軽く蹴りつけて、滑りを確認すると部室を出た。


思った通り、体育館には誰もいない。ほとんど毎回、俺が一番だからネットを張るのは俺の仕事になっている。


「あれ、何でネット張ってあるんだろ? 」


もう既にネットが張られていた。まぁ、いいや。深く考える必要なんてない、ない。俺は倉庫からシャトルを取り出し、壁当てを始めた。


(菅原)


「はい、確かに」

「後は頼んだ」


俺は大原(おおはら)にこれから校正してもらう原稿をわたした。校了は校正が終わったことをいうらしい。小憎たらしい笑顔を思い浮かべつつ、悠真の言葉を思い出す。


「そういえば大原、お前、八方(やがた)知らないか」

「八方君? うーん、多分バドミントン部の方だと思うよ」

「八方は今回記事持ちないのか」

「ちょっと待ってねー」


ガサゴソと大原は机の引き出しを大原は漁り始める。大原 萌々(おおはら ももな)。壁新聞部の同学年メンバーの一人。基本的に校正をやってくれている、事務方だ。


一年生は悠真、名原、千歳のチームと、俺と大原、それにバドミントン馬鹿の八方のチームに別れている。


「んー、八方君は担当ないみたいだよ」

「そうか、ならいいんだ」


よかった。今日は火曜日だから、俺達のチームが今回提出だ。絶対あいつはやっていない。


(大原)

さてとっと。菅原君から受け取った未校正原稿を眺める。菅原君は堅実に書くからミスが少ない。校正係としては有難いなぁ。


「あれ? 菅原君、どこか行くの?」

「あぁ、ちょっと八方に今回は担当だってこと言ってくる」


そう言って菅原君は教室から出ていった。私も作業始めようっと。そうして10分ほど赤ペン片手に奮闘していると、藤宮君と奏が入ってきた。


「お、僕の勝ちみたいだね」

「あぁー、もう悔しい!」


二人共私の顔をみて、教室を見渡すと、それぞれそんな声をあげた。


「二人共どうしたの?」

「あ、ごめん、もも。悠ちゃんと何人部室にいるかって当てる勝負してて」

「僕は「一人で、先輩はいない」に賭けて、奏は「三人で、先輩はいる」に賭けたんだ」


藤宮君が奏のあとを引き継ぐ。本当、仲いいなぁ、この二人。お節介だと分かっているけど、何で藤宮君が奏の告白を受けないのかさっぱりわからない。


三人で世間話をしていると、暫くして菅原君も帰ってきた。やっぱり八方君はバドミントン部にいたらしい。


「八方君、バドミントンに対して凄い情熱あるよね」

「情熱っていうか、あれはもうバドミントンバカとしかいえないわよ」

「大体何で八方は壁新聞部入ったんだ? 」


菅原君が呆れ顔でそう言い、確かに、と私は考え込む。八方君は壁新聞部にも所属していて、そのくせバドミントンには何にも変え難いほどの情熱を注いでいる。みれば、奏も「そうね……」と呟いていた。


だけど、そんな誰もしらないであろうことを知っている人が、ここにはいる。


「あれ、知らないのかい? 彼がバドミントンを始めたきっかけは、この高山高校壁新聞部の記事なんだよ」


(名原)

「それ、ホントなの悠ちゃん」

「うん。本人から聞いた話だからね、間違いないよ」


さすが悠ちゃん。「気になったらすぐ確かめる」、悠ちゃんのモットーの一つは伊達じゃない。


「いまいちわからんのだが……。どういうことなんだ?」

「私も少し気になるな」

「悠ちゃん、どういうことなの?」


悠ちゃんは心底嬉しげにニコニコした。悠ちゃんは基本的に喋りたがりだ。話を求められるなんて、嬉しいに違いない。


「じゃあ、少しお聞き願おうかな」


「八方君の、壁新聞部に関する一席を」


「そもそも、彼のお姉さんが高山高校卒業生で、バドミントン部に所属していたのは知ってるかい? 」

「あ、なんか一度聞いたことあるかも」

「6歳差、だったかな。八方君のお姉さんは全国でも通用するレベルだったんだ。ご両親もバドミントンに精通していたらしくてね、勿論八方君も、ということになったんだけど、そんなお姉さんと比べられるのが嫌で、やめたらしい。」

「そんなことが……」

「うん。それから少しして、お姉さんが高校二年、八方君が小学五年のときだ。八方君はここ、高山高校に来たんだ。秋の、一年間で最大ともいえる京雅祭(きょうびさい)を見に来るためにね」


そこで、フッと悠ちゃんは息をついた。全く、芝居がかってるなぁ、でも、それが悠ちゃんらしくて、本当に嫌いじゃない。


「そこで、彼は一つの紙を見たんだ。忘れさられた様な校舎の隅の、掲示板の中に。ただの紙ともいえるけれど、そこには情熱と思いが詰まっていた。さらに……」

「で、どうなったんだ」


どんどん調子に乗る悠ちゃんを菅原が遮った。ナイス。


「むぅ、仕方ないなぁ。八方君は壁新聞に取り上げられているお姉さんを見たんだ。それが凄くかっこよかったんだってさ」

「なるほどな、それで壁新聞部にも入ったのか」

「初めて知ったよー。そういう理由があったんだね」

「そういうことだったのね。でもそこから、あそこまでバドミントンに打ち込んだなんて、やっぱりバドミントンバカだわ」

「へぇー、そういうことだったのか、私も知らなかったよ〜。さすが悠真くんダネ」


思い思いの感想を述べる。ただのバドミントンバカだと思ってたけど……事情あるバドミントンバカだったのね。


ん……? 何か違和感が……。


『谷本先輩!?』

まずは、読んで下さったことへの感謝を。本当にありがとうございます。青春 〜アオハル〜まやっと三話となり、一年生は全員出ました。

次回作からは話を進めていきたいかなー、なんて僕は思ってます。


では、初登場の人物紹介を!


満崎(みつざき) 薫子(かおるこ)

身長162cm、体重45kg。カチューシャどめ。

藤宮情報「図書館の新しいヌシって呼ばれてて、知識量も半端じゃないって聞くよ。旧家の一つ、満崎家の長女だよね」


作者的には藤宮みたいに上っ面だけじゃなくて、深いところまで知識を持ってる図書委員です。


大原 萌々菜(おおはら ももな)

身長167cm、体重52kg。それなりにナイスボディ。家は小さな牧場を営んでいる。趣味は乗馬。愛馬の名前はきなこ。美術部を兼部している。


八方(やがた) 優吾(ゆうご)

身長168cm、体重65kg。かなり体つきはいい。バドミントン部にも所属していて、県ベスト4ぐらい。運動神経はよく、他の競技も秀でている。


谷本(たにもと) 小夏(こなつ)

詳細は次回で!


次回投稿は僕の一身上の理由から、少し遅めの来週、火曜日ぐらいになるかなぁ、と。すみません。

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